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「教養としての投資」上梓にあたって

私は、強い危機感を持ってこの本を書き始めています。皆さんも感じていらっしゃることだと思いますが、日本は少しずつ、確実に貧しくなっています。それでも平成の時代は昭和の遺産を食いつぶすように生きながらえることができましたが、令和の時代にはますます厳しさが増していくことは間違いありません。これを食い止めるにはどんな方法があるのか。その一つは、一人ひとりが「投資家の思想」を持つことだと思います。これまで多くの日本人は「労働者の思想」しか持っていませんでした。しかしその思想では、もう未来がないのです。「投資家の思想」こそが日本の未来を切り開くと私は信じています。少なくとも、その思想を持てた人は、生き残ることができます。これから、少し厳しい話もしますが、「投資家の思想」を持つとはどういうことかを書いていきたいと思います。

~ビジネスエリートになるための教養としての投資「はじめに」より~

私たち、農林中金バリューインベストメンツは、2007年のチーム発足から足掛け13年、「売らなくていい会社しか買わない」長期厳選投資を標榜し、企業が営む事業を深く理解し、その本質的な価値を冷静に見極め、オーナーとして保有をする投資を実践してきました。

2017年からは、公募投資信託「おおぶね」シリーズの運用・助言を手掛け、個人投資家の皆様に投資先企業への「オーナーシップ」を感じていただきながら、長期で資産形成をしていただくべく、運用と情報発信に努めてきました。

また、「人材育成こそ最良の長期投資である」との理念の下、2014年から京都大学で寄附講義「企業価値創造と評価」を開設しているほか、昨年は母校である洛南高校はじめいくつかの高校でも授業を行い、未来を担う若人たちに「オーナーシップを持って生きること」の重要性を説いています。その模様の一部は、このnoteにも掲載しています。

機関投資家、個人投資家を問わず、日本に長期投資の考え方を根付かせるという、私たちの目標はまだ道半ばです。しかし、一連の活動を通じて、長期投資とは投資スタイルの一類型ではなく、まさに「生き方」そのものなのだとの仮説を持つに至りました。

今回上梓する「教養としての投資」は、13年の運用の中で磨き上げてきた私たちの投資哲学とともに、若者向けに語ってきた講演内容をまとめています。所謂「投資指南本」ではなく、若いビジネスパーソンやこれから社会に出ていく世代に、「生き方」としての「投資」を自身の頭で考えてもらえる内容になっていると自負しています。

この本が、多くの方の、ひいては我が国の未来を切り開く「武器」になることを願っています。

2020年5月27日
農林中金バリューインベストメンツ 常務取締役CIO 奥野 一成


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