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チャレンジの神様が宿る島「隠岐の島海士町」 奥野一成 離島へ行く(後編)

受講者との質疑応答

構造的に強靭な企業

高校生A:先ほど「自分の時間に投資する」というお話をしていただいたと思うんですけど、奥野さんが他の人に、つまり企業に投資をされる際、どんなビジネスに投資するのかという基準があれば教えてください。

奥野:そうですね、それがさっき言った「構造的に強靱な人間」の前段となる「構造的に強靭な企業」という話だったんですけど、そもそもの話をまだしてなかったですね(笑)

まず一つ目の条件として「付加価値が高い事業」、簡単に言うと「それって必要なんですか?」っていうことなんです。人にとって必要でないものをビジネスとしてやってる会社に投資をしても、絶対長期的には儲からないですよね。

さっきのナイキの例で言うと、ナイキは必要なんです。靴を履かないでバスケットボールやる人なんかいないわけですよ。ヴェイパー・フライを履くからマラソンが速くなる、それが付加価値です。

二つ目、「圧倒的な競争優位性」なんですけど、さっきコカ・コーラの例でも出てきましたね。ちょっと強いとか、何となく強いとかじゃなくて、「そいつの顔も見たくないぐらい」強いか、「もうそいつと向こうを張って戦いたくない」というぐらい強いようなビジネスである必要があります。これを「参入障壁」と本の中では言ってますけど、参入するのを思いとどまらせるぐらい強いか?

ナイキの例で言うと、ナイキはエンドースメントっていう言葉をよく使いますが、例えば大坂なおみさんがナイキの帽子をかぶって、ナイキのシューズを履いて試合に出てますよね。あれって大坂なおみさんのために開発して、大坂なおみさんに「テニスの試合のときに必ず履いてください」という契約になっていて、それをやることで宣伝になるんですね。あれを見た一般のテニスプレーヤーは「ナイキのシューズを履いたら大坂なおみさんのようにフォアハンドが打てるかもしれない」と思うわけです。そんなことは絶対ないんですけどね(笑)。

ナイキという会社は、年間4-5千億円、エンドースメントに投資をしてるんですよ。年間4-5千億ですよ!4兆円の売上のうちの10%以上をそこに投資してるんですね。その規模でできる会社は、実はナイキとアディダスぐらいしかないんです。もう他の会社は絶対無理です。だからアスリートも、ナイキからエンドースメントを受けたいと思うわけだし、宣伝して商品が売れればナイキも儲かる、その分またエンドースメントに投資していくという「良好なサイクルが回っていく。これが「参入障壁」なんです。

三点目は「長期的な潮流」。さっき人口の話しをしましたけれども、今の人口77億人は2050年に確実に90億人になります。これは不可逆的な事象なんですね。そのときに途上国の人たちが、段々と先進国化していくっていうのも、これもう最初から決まっていることなんです。そうすると、人口の増加にあわせて、靴を履く人やスポーツシューズを履く人の数は絶対に伸びますよね。これが長期的潮流です。

この三つが全部重なったビジネスというのが長期投資に値するビジネス。これがナイキという会社の利益がずっと上がっていく秘密なんですね。もし誰でもできるような靴を作ってたら、こんなに儲からないです。どこかの時点で、例えば人口増加がどこかで止まるんだという話になれば、靴もそんなに増えていかないですね。こういう会社のオーナーになるというのが我々の投資のやり方です。

今日は投資の部分はそんなに話していないですけど投資はすごく勉強になりますよ。ちゃんと勉強する気概があれば、是非投資にも挑戦してみてください。

「人に価値を付ける」という価値観

受講者A:ご自身のキャリアの話の部分が、ものすごく興味深かったです。
まさに会社が潰れたりとか、人生を途中で何度も変えられていく中で、ご自身を一個の「投資対象」と考えたときに、自身の価値観をものすごく変えられたところと、一方で価値観を変えなかった部分であるとか、逆にある意味強固にしたところがあって、そんなことを適切なタイミングで意思決定されてきたと推察するわけです。
今日ここにいるメンバーも島でずっと暮らしてる高校生もいる一方で、島以外の全国から来た人たちが一旦高校を卒業した後でもう一回島留学で戻ってきたりとか、結構価値観が混在してるんですよね。それが面白かったりもするんですけど、奥野さんの価値観の変遷と、「やっぱりここはぶれないぞ」という意思決定の仕方とかを教えてもらえると助かります。

奥野:そういう意味でいうと、実はその時々ではあんまりよく考えてないんですけど、簡単に言うと、やはり好きなことをやってきたんだろうなとは思います。一般的なサラリーマンとは全然違う人生を歩んでいるという点ではある意味「殻を破った」ということなのかもしれませんけど、上に行ったのか、下に行ったのかとかという話では全然ないですし、良かったのか、悪かったのかということとも違うような気がします。その間、価値観が変わったのかというと、実は全然変わってないですね。

僕は結局今やってる仕事もそうですし、実は銀行にいるときもそうだったんですが、とにかくすごい青年の主張みたいになったら申し訳ないんですが(笑)、ずっと「人の役に立ちたい」と思ってました。この人なんか、うさんくさいこと言ってる~とか思われるかもしれないですけど、ほんとに人の役に立ちたいなと思っていたんですね。

それでも、実際に銀行に入るまでほとんど何も考えてなかったです。要は偏差値が高い高校に入って、京都大学に入ったら、普通に楽しいだろうという程度しか考えてなかった。

ところで島前高校の皆さんは親元離れて一人で来てる方、結構多いですよね。いわゆる「一人になる」というのは、ものすごく重要な時間だと思います。僕がそれを初めて経験したのは、実は大学生の時なんです。

無理言って下宿させてもらったんですが、一人になったら、考えることが沢山出てくるんですね。夜寝てて、真っ暗な中で寝てると、「俺、何やってんのやろ」みたいなね。この時は本当によく考えました。このときに自分の価値観というのができた気がします。それが何かというと、やっぱり「人のためになりたい」ということなんですよ。

「人のためになりたい」って、ものすごく漠然とした言い方ですけども、「人に価値を付けたい」と言ってもいいですね。そのときにすごい勉強したのがコンサルティング会社的な考え方です。

その当時、マッキンゼーというコンサルティング会社で大前研一さんという方が社長をやっていらっしゃったんですけど、彼が出してる本をかなり読んでいました。そういう経営コンサルティングをやることで、その会社の参謀的な、例えば武田信玄における山本勘助のような、そういうものを目指したかったんです。武田信玄が戦ってる傍で戦略を考えて、それで勝つように仕向けるような、そういう職業です。

「それって、ものすごく価値あることだな」と当時考えたわけです。文系なので、物を作ったりとかは難しいんですけど、でも文系でも絶対に僕は価値が付けられるんだと思いながら就職活動しました。僕は始めコンサルになりたかったんで、それこそマッキンゼーも受けましたし、ボストンコンサルティングも受けましたし、結構いい線まで行ってたんです。

そのときに長銀の先輩がリクルーターとして出てきて、「おまえ、ばかなんじゃないの」と一喝されました。「コンサルになりたいんです」と言ったら、「おまえさ、金も出さずに口だけ出して、人がいう事を聞いてくれると思うの?」と。コンサルティングってつまりそういう仕事なんですよ。会社に行って「こんな戦略がいいですよ」と、ある意味口だけ出して、その会社がその戦略を採用するみたいな。

その先輩は「長銀に来い。うちに来れば、金も出しながらコンサルティングをするんだ。こっちのほうがいいだろう」と。もうこれで、コロッといきましたね(笑)。学生だから単純だったというのもあったんですけど、「金を出すから、人は言うことを聞くんだ」と言われれば、その通りかもしれないなと。僕ほんとにそれで行って、結局その銀行が潰れたというオチがありますが(笑)。

長銀に入って新人の立場で取引先の融資先の企業なんかに行くと、やっぱり「長銀さん、長銀さん」って言って、ものすごく大事にしてくれるんですよね。僕みたいなペーペーが行っても、財務部長が「奥野君、これどう思う?」とかって言ってくれるわけです。

「これは、面白いな。先輩が言ってた通りだな」と思ってたんですけど、そんな中で潰れましたから、今となっては考えるところはありますが、ただそういうことがやりたいと思って入って、そういうことがある程度できたというのが、実は今僕らがやってる株式投資にも必ず生きています。

実は投資をしながら、経営者と話をするんですね。経営者に話をして、「こういう戦略を採りなさい」っていうところまでは決して突っ込みはしませんが、「こんなことも考えられますよね」っていうような、経営者との会話っていうのは当然あって、それをやることでその会社が良くなったら、オーナーである投資家も当然ハッピーですよね。お互いWin-Winな状態になるわけですよ。

それを今やらせてもらっているのは銀行ではない全然違う組織ですよね。そこに至るまでの間に銀行が潰れたんで、大学院へ行ったりとか、いろんなことやってますけど、一つ軸としてあるのは、「人に価値を付けたい」っていうことです。これだけは一貫してましたね。

皆さんもどこかで「自分はこう生きたいな」というのはあると思うんですよ。それは大事にしてもらいたいなと。よく言われるのは、「こういう職種に行きたい」とか、「ここの会社に行ったら、こんなことやりたい」とかっていう人はたくさんいると思います。

とにかく医者になりたい、△△になりたい、○○になりたいって言うんですけど、そうではなくて、横軸として、どういうふうに仕事をするのか、何をやるのかではなくて、縦軸としてどういう想いで仕事をするのか?ということをぶらさずに仕事を考えてもらいたいなと思ってます。

でもまだ高校生なんで仕事をする年齢じゃないので、ちょっと先の話かもしれないですけど、そこは価値観が重要かなあと。すいません、ちょっと話がまた変わっちゃいましたね(笑)

不可逆的な潮流

高校生B:これからは「変化する時代」と言われてると思うしそれはそう思うんですけど、先ほど「必ず人口が増える」という話がありましたが、そういう変化する時代だけど、必ず起こるということをもし見つけたら、結果的に「何に投資をするか」ということに多分つながってくるんだろうなと思ってまして。

奥野:すごいですね!その通りだと思います。

高校生B:必ず…っていうのは恐らく人口以外にもあると思うのですが、それをどのように見つけていくのかを知りたいです。

奥野:いい質問ですね!その通りです。
僕たちが長期潮流って言ってるのは、そういうことなんですよ。「不可逆的」というと若干にややこしい言葉ですけど、「もう逆戻りしませんよ」というものを見つけたいんですね。

どういうふうに見つけるのか?結局、丁寧に一つ一つ事例に当たっていくしかないんです。大学に行って誰かに聞いたら何かが分かるとか、何かの本を読んだら分かるとか、そんな世界では一切ないです。

そんなに簡単に分かる「長期潮流」は多分ないのですが、例えばどんな長期潮流あるかというと、「人口増大」。あとは人は健康に長生きしたいということ。これは不可逆的ですよね。人間は絶対「健康に長生きしたい」ですから。ちょっと話は変わりますが、国家の財政において今後借金がどんどん増えていくと思います。これも実は仮説ではあるのですが、「長期的な潮流」の一つです。

「人口増大」、「健康に長生きしたい」、「国家財政の悪化」の三つの潮流が合わさるときに何が起こるかというと「低侵襲医療」なんです。ちょっと難しい言葉ですけど、例えば内視鏡の治療であるとか、カテーテル治療と言われてる医療の方法で、今後確実に増えていくんです。

以前だと、例えば心臓の疾患がある場合に体を切り開いて手術をする必要がありました。手術をすると病院のベッドが必ず必要ですし、体へのダメージも大きいから長く入院しなければいけない。最低でも恐らく3週間ぐらいでしょうか。そうすると、その人の体もしんどい上に、そのお金を払っている国もしんどい。そうすると国の財政が悪化していくっていうのは、どんどん止まらなくなるわけですね。

じゃあどう解決するのか?実はカテーテル治療といって、細い管を体の中に通して、瘤のところまで到達したところで、その瘤のところにコイルをグッと入れて、瘤を埋めちゃうことができるんですね。この方法だと体へのダメージが少ないので、夕方にはもう退院できるのです。これが低侵襲医療なんですね。

「人は長生きしたい」という願望は変わらないし、「財政がどんどん悪化する」という流れも変わらない。でも財政が悪化し続けるということを、なんとか止めなければいけないわけですね。その解決策が、「低侵襲医療」という別の潮流を生み出す。

このような話というのは、やはりその会社に直接行って、話を聞いて、更に本当にそうなのかどうかというのを世界中回りながら聞いていかないと絶対分からないんですよ。これは「誰かが言ってたから、そうなっている」というような簡単な話ではなくて、自分の足と頭で確認しなければいけないということなんです。だから結構難しいですけど、頭を使って足を使って、それを発見することは可能だと思います。

高校生B:ありがとうございます。

奥野:複雑で面倒くさいですよね?でも、そういうもんですよ。「儲ける」ということは。「人よりも大きな価値を付ける」ということは、簡単に、しかも短期間できるということは絶対ないです。これだけは絶対に皆さんに伝えたい。必ず時間はかかるし、必ず自分の足と頭を使わなきゃいけない。なぜなら短期的に簡単に儲かることなんて絶対ないですから。それだけでも、今日は覚えて持ち帰って欲しいです。

付加価値はなくならない

高校生C:すごいレベルが低い質問かもしれませんが、株の投資について一点気になったことがあって。先ほど株に投資したら数年後には何倍とかになるとおっしゃってたじゃないですか。

奥野:そういうケースもありますね。

高校生C:仮にそうだとしたら、普通に考えてみんな欲しがりそうですよね。それで、そういう人が多くなったら…

奥野:そんなことは起こらないんじゃないかということ?

高校生C:いや、そうなった場合にみんなが儲けを得るためのお金が足りなくなったりすることはあるのでしょうか?

奥野:そっちの視点か!それは面白いですね。
でもですね、社会の問題というのはどんどん生まれてくるわけですよ。これを解決するのが利益なんで、社会に問題がある限り、実は利益がなくなることはないと思います。「社会の問題」をうまく取り込んで解決できる企業であれば、利益を出し続けることができるので、その企業の株価も上がり続ける。逆にうまく取りこめない企業は利益も出ないので、多分株価も上がらないと思います。

実はその部分の見極めをできるかどうかっていうのは、株式投資をするときには一番重要だと考えています。利益の源泉っていうのは社会の問題なので、社会に問題があるからそれを解決すると儲かるわけですよね。多分そういう観点で言うと、利益の源泉である「お客様の問題」というのは、社会が存在する限りなくなることは多恐らくない。だから心配する必要はないと思います。

高校生C:分かりました。ありがとうございます。

奥野:ただほんとにそういう会社を見極めることができるのかっていうことが、やはり一番重要な論点だと思っています。それがなかなか簡単じゃないっていうことも事実です。よって「誰しもが、株式に投資をすれば、みんな何十倍になる」とか、そんな甘い世界はないですね。だからそれに至るまでには勉強もしなきゃいけないし、先ほどの答えですけど、それを見極めるときにやっぱり自分の頭と自分の足を総動員して戦わないと駄目なんじゃないかなと思いますね。

キャリアの選び方

高校生D:参入障壁のある人になろうっていうときに…

奥野:あれ、関西人の方ですね?

高校生D:そうです。私、大阪出身なんです。

奥野:大阪なんですね、実は私は吹田生まれです。

高校生D:そうなんですね!ところで質問なんですが、先ほど最強なキャリアの例として挙げられてたのが、「医師免許を持ってる弁護士」だったかと思うんですけと、仮に自分が「すごい医師になりたい」みたいな気持ちがあったとして、もう一個の方のキャリアを選ぶときのポイントは何でしょうか?例えばすごい興味があって、これにはなりたいけどそれだけだとまだ弱い場合に、もっと強靱になるために他にスキルを得る際に、どういう考え方とか選んでいけばいいのでしょうか?

奥野:それは多分、「自分が好きかどうか」ということですかね。嫌いなものだと絶対続かないですし、まず自分が好きか嫌いかっていうことは一番重要だと思います。

その次に重要なのは、やはり「ビジネスセンス」は絶対に避けては通れないと思います。例えばビジネスセンスがない弁護士は、今後多分儲からない。医者の場合、色々規制で守られているケースが多いので、ビジネスセンスがなくてもそんなにダメになるケースは多分あんまりないのかもしれないんですけど、ただ圧倒的に重宝される医者になるには、単純な医者ではだめでしょうね。

そのときにビジネスセンスという観点で言うと、やっぱり数字が読めるという要素、例えば会計士の資格であるとか、例えばMBAの習得なんかでもいいと思います。アメリカでは医師の免許とMBAと言われるビジネスのマスターを保有している人をダブルマスターと呼びますが、実は結構存在します。MBAを持っていれば、ある程度ビジネスについて分かっている人とみなされます。よって「MBAを持っている医者」であればとりわけ日本であれば重宝される可能性が高いです。とりわけ「数字に強くなる」という観点はどの業界でも結構大事ですよね。たとえ医者であったとしても。

参入障壁を確かめる方法

受講者B:奥野さんが、これまでの経験の中で、誰かに言われて、ずっと頭から離れない心に残っている言葉はありますか?例えば誰かに言われて、確かに!とか、ものすごく腑に落ちたとか…どんなことでもいいんですけど。それまでの自分の考えにはなくて、誰かに言われて初めて気付いたこととかあったら教えて欲しいです。

奥野:なるほど。例えば、とあるアメリカの製薬会社で、すごいニッチなマーケットで勝負している企業なんですけど、シグマ アルドリッチっていう会社があります。以前面談したときにそこの社長さんが出てきてくれたことがありました。

僕は経営者と面談する時には常に「あなたのビジネスの参入障壁は何ですか」っていう質問をするんですね。その時にその経営者が何を言ったのかというと、「すごいニッチで小さなマーケットだけれども、自分と同じ事業をやってて上場した会社はこの50年ないんだよね」という話をしたんです。

「あっ、そうか、なるほど!」と思ったんですね。つまり50年上場した企業がいないということは一体どういうことかというと、新規参入が一切なかったということなんですね。これこそがまさに参入障壁の証明なんです。なるほど、そういう見方ができるなと目から鱗が落ちたわけです。

例えばインターネットゲームの会社とかSNSの会社とか、どんどん参入して、どんどん新しい会社が出てきますよね。つまりそれってその業界に参入障壁がないということなんです。これは考え方としてすごく論理的で面白いなと感じました。

こんな風に経営者と直接話をすると面白いことやインサイトが得られることを言ってくれます。それが、自分がやってることに絶対プラスになるものがどんどん出てくるので、経営者に会ってマイナスになることは一つもないのです。

この話って結構色々なところで使えますよね。例えば、「フェイスブックに参入障壁あると思いますか?」って聞かれたときに、「だってSNSなんて、今も雨後の筍のように出てきてますよね」という話ができるわけです。「そのような業界に参入障壁があると思うんですか?」と強気で言えるのも、そのシグマ アルドリッチの社長が話してくれたことが頭に残ってるからなんです。

ちなみにシグマアルドリッチはその後メルクという大手製薬会社に買収されました。そのマーケットに参入しようと思ったら、もうプレミアムを払ってシグマアルドリッチを買収するしかなかったんですね。参入障壁の高さが証明されたということだと思います。

島から、世界・未来への挑戦

主催者:時間も長くなってきましたので一旦ここで締めようかなと思います。今日、奥野さんはなんとはるばる3時間半の船に乗ってここまで来ていただきました。お忙しい中お時間をいただいて本当にありがとうございます。

奥野さんにお越しいただいたことを皮切りにサークル活動のようなイメージで、「島の投資部」なるものを作りたいと思っています。

これは別に「何かに投資をするサークル」を作りたいからではないです。実はここ海士町には色々な地域から高校生達が来てくれていて、ある種、多様性でもって「感度の高い」高校生たちが沢山いると思っています。色々な感度やセンサーを持った人たちが折角沢山この場にいるので、「その産業、ビジネスあるいは企業が世の中にとって本当に必要かどうかを自分の頭で考えてみる」ということはまさしく「島の未来を今後どうしていくか」ということに繋がっていくのだと思っています。

私は今40歳で20年経つと60歳になり、みんなは20歳前後で20年たつと40歳ぐらいになりますよね。これはまさに先ほど話題に出た「不可逆的」なわけでして、そうすると次の世代の皆さんが、「どういうことが世の中にとって必要なものなのか」を考え続けることや、「世の中でこういうことをやってる会社が私にとって不可欠だ」ということを探究し続けることがこれから重要だと思うんですよね。

例えば自分が今まさに何かを始めようとするときに、「この会社が面白いと思うけど、ここは足りていないな、こういうところを強くする必要があるな」という投資で考えたことがベースにあれば、自分がこれからやっていくことについても、色々アナロジーが効いてくるのではないかと。「世界の最先端でやってるところはこうだけども、私はこうしたい」とか、「ここをこんな風に超えていきたい」というように考えていければ、皆さんの人生において色々面白いことが起こるかもしれません。

もちろんサークルを島の中で作っただけでは意味がないですし、実践として投資を一部やっていかないと面白くないので、何らか仕組みは作っていきたいと思って入るんですけど、まずはその前段として、「私達が何を必要としていて、それをやっている人はどのような人なのか。その人たちは私にとって何が圧倒的に違うのか」、ということを探していく行為自体がキャリア教育として、ものすごく有効だなと思っていまして、今回奥野さんに登場いただきました。

今日を皮切りに色々なことにチャレンジしていきたいと思っています。奥野さん、今日はそんなきっかけをいただきまして、本当にありがとうございました。

奥野:ありがとうございました、皆さんのちょっとでもお役に立てることができたら嬉しいです!

(終わり)