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NVICアナリストのつぶやき第8回 「Mary Poppinsから気づく”Worth”と”Value”の違い」

NVICのアナリストが日常からのちょっとした気づきや思索を綴るコラム
「NVICアナリストのつぶやき」。

今回は、年間100ステージ以上を観劇するアナリスト、大福谷が名作ミュージカルの鑑賞中に得た「気づき」を綴っています。

”Worth”と”Value”、ともにお金に関するこれらの言葉がどのような違いを持つのか。彼の見解をご覧ください。

Mary Poppinsから気づく”Worth”と”Value”の違い

先日、ロンドンに旅行に行った際にMary Poppinsというミュージカルを観劇しました。

Mary Poppinsは1964年にウォルト・ディズニー・カンパニーによって製作された映画で、映画はアカデミー賞に13部門ノミネート、5部門を受賞しています。ジュリー・アンドリュース演じるメリー・ポピンズに見覚えのある方もいらっしゃるかもしれません。

映画を基にしたミュージカルは2004年にイギリスで初めて上演されたのち、ニューヨークのブロードウェイや日本でも上演されています。

観劇中、銀行に勤めるバンクス夫妻のやんちゃな子供たちの子守として現れたメリー・ポピンズが起こす様々な魔法と、それによって変化していく子供たちやバンクス夫妻の物語を、歌やダンスと共に楽しんでいる間、仕事のことは頭から完全に消えていたのですが、とあるシーンで「投資とは何か?」を深く考えさせられることとなりました。

ある日、子守のメリー・ポピンズは子供たちを父親が勤める銀行に連れていきます。その銀行では、父親であるジョージ・バンクスが2件の融資案件について、融資をするかどうか考えているところでした。

一つはハスラーという男が持ってきた、新興国への融資案件。

非常に収益性の高そうな案件ですが、具体的に何に融資をするかがはっきりとはわかりません。ジョージがハスラーに、「この案件で最終的に生みだされる製品は何ですか?」と聞くと、ハスラーからは「お金そのものだ」と返ってくる始末です。

もう一つはノースブルックという地方の工場経営者が持ってきた、工場の拡張のための融資案件。

ハスラーの案件に比べると利回りは良くなさそうです。しかし、ノースブルックは自分の工場、工場で働く人たち、そして自分たちが生み出す製品についての魅力と誇りを熱く説明します。

ジョージがノースブルックの話を聞きながら、内心ハスラーの案件に心が傾きかけていたところに子供たちが現れます。

自分の仕事場、まして商談中に子供が現れたことに慌てるジョージですが、ノースブルックは子供より優先すべき仕事はない、と席を外そうとします。

その時、“It’s never too early to learn the value of money.”(お金の価値を学ぶのに早すぎることはない)と、子供たちに6ペンスコインを渡すのです。(今の価値でいうと8円くらいですが、物語の当時の物価などを考えるともっと価値があったのでは・・・と思います)

子供がちょっと生意気に“I know it’s value. It’s six pence.”(知ってるよ。6ペンスでしょ)と言うと、ノースブルックは“That’s its worth. The Value is how you spend it”(それは金額だ。価値はそのお金をどう使ったか、ということだ)と返すのです。

このシーンを観た時に、はっと目が覚めた気がしました。投資とは、ノースブルックが言うWorthをValueに変えることであり、我々はWorthをValueに変えることが出来る企業にこそ、投資をすべきなのだと。

例えば、我々の投資先や投資候補先の企業の中には、保有現金・流動性資産が多い企業も含まれています。決算説明会などではアナリストから保有現金を株主還元に使うべきではないか、といった質問が飛ぶ様を目の当たりにすることもありますし、資産効率の悪さを指摘するレポートを見たこともあります。

保有現金や流動性資産をWorthだとすると、それを配分した結果として最終的に生み出される利益、もしくはその利益の結果としての企業価値がValueだと言えます。

そう考えた時、重要なのは今保有現金、すなわちWorthが多いかどうかではありません。WorthをきちんとValueに変えることのできる事業を持っているか、ということなのです。WorthをValueに変えるビジネスであれば、今多く見える保有現金や流動性資産はいずれ利益、そして企業価値の増加に寄与すると確信が持てます。

そして、WorthをValueに変えることが出来る企業かどうかを見極めるのが分析だとも思います。

それは決して財務諸表やプレゼンテーション資料に記載されている数値を追いかけることだけではなく(もちろん我々もそういった分析はしていますし、それを全く否定するつもりはありません)、結果としての数値の背景にある事業の付加価値や競争優位、組織としての強さといったものを、実際に現場に足を運んだり、企業の経営者などと対話をしたり、といった活動からより深く理解し、自分たちなりの確信を持つということなのだ、と思います。

WorthとValueの違いの話と、もう一つのエピソード(“投資を決めるときに、アイデアと人のどちらを優先するの?”と子供に聞かれたジョージが、良いアイデアより良い人の方がより貴重で価値があると気づく話です)を経て、ジョージは最終的にハスラーの案件を断り、ノースブルックの案件に融資をすることに決めます。(結果としてこの判断が大成功になるのですが・・・)

我々も投資家として、WorthをValueに変えることの出来る企業を見極められる眼を常に持っていたいものです。ぱっと見はそれほど魅力的でなくても、本当は価値があるノースブルックに投資が出来るような投資家でありたい、と思いながら劇場を後にしました。

(担当:大福谷)