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三石村長部家伝承話1

長部家に起こった現象をまとめた民話

小指の爪

長部家16代目承一郎氏の長女はなもさんには左手小指の爪が無かった。
生まれたときから爪は無く皆不思議がっていたが、そういうもんだと納得した。はなもさんは水原家に嫁ぎ、80歳の時、長部家に戻ってきた。
81歳の時に老衰で亡くなられた。彼女が亡くなった日、勝手口に腕輪が落ちていた。よく見ると小豆大からビー玉くらいの爪がびっしり連なっていた。
はなもさんの爪なのかはわからなかった。

かまどの神様が浸水を防いだ話

2058年5月三石村はゲリラ豪雨に見舞われた。
多くの家は近くの尾長川の氾濫した川の水で床上浸水した。
長部家は少し高い位置にあったが、やはり川の水が迫ってきた。
勝手口から123代目セントジョンズ夫人が外の様子を見てみると
勝手口のすぐそばまで水は迫っていた。
驚いて後ずさると足元に荒神帚が立っていた。荒神帚はセントジョンズ夫人の横を通り、勝手口に立ち「お引き取り願おう」とはっきり話した。
水は引いた。セントジョンズ夫人が呆気に取られていると、荒神帚は振り向き「こういうこともあります」とはっきり話した。
彼女は当時121歳で少々認知機能に問題があったかもしれないが、勝手口ぎりぎりまで水が迫っていたのは事実である。

香り苔の話

長部家には8か所井戸がある。一番小さく水量の少ない井戸には香り苔が自生している。井戸の底にある白い石に自生している。
香り苔作りは長部家の子供たちが担当する。
まず、大人に頼んで白い石を取ってもらう。湯呑に水を張り、石を沈め窓辺に置いて日光に当てておく。2・3日すると赤子の髪の毛のようなほわほわした糸状の苔が生えてくる。石を取り出し乾燥させ、糸状の苔は小さな刷毛で取り除く。また湯呑に水を張り、石を沈める。1週間ほどでビロードのような濃い緑色の苔が石全体を包み込む。石を取り出し乾燥させビロード苔を刷毛ではがして小さな瓶に集める。一つの石で、ほわほわ・乾燥・ビロード・乾燥・収穫を5回くらい繰り返す。そして白い石は井戸にもどす。5回の収穫でおちょこ1杯くらいの乾燥香り苔ができる。大人はお酒に振りかけたり、子供はご飯にふりかけたりして楽しむ。体からきれいな水の香りがするようになるといわれている。今は井戸は枯れてしまい、香り苔は作れない。

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