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クラマトのトマトジュース

友達と私のお気に入りのビアバーに行った時のことである。

おひるごはんでも、夕ご飯でもなく、おやつにビール。
おっさん顔負けだ。
しかし頼むものはかわいらしくフルーツランビックを頼むものだからますますわけがわからない。

良く冷えた甘酸っぱいベルビュークリークはとてもおいしかった。

友人はメニューとにらめっこしていた。
彼女はお酒にとても詳しく、はじめてきたこの店をとても気に入った様子だった。そして動きを止めては、一口ビールを含むと、またメニューを真剣なまなざしで、それこそ小説でも読んでるかのようだった。
ふと顔を上げ、私の名前を呼ぶと

「レッド・アイがあるのに、トマトジュースがない」

といったのだ。

私はこの店でレッド・アイを頼んだことはなかったが、思いつくことはあった。

「トマトジュースがきっとクラマトなんだよ」

と返した。彼女はすかさず、
何が普通のトマトジュースと違うのか
について質問してきた。

「クラマトのトマトジュースは、ジュースよりスープに近く、ジュースとして飲むには少し向かないように思う。アサリだったか、ハマグリだったか、とにかくだしが入っていて塩気がつよいから。」

こんな話をしている間にベルビュークリークは空っぽになっていた。

手を挙げて店員さんに合図を送る。
「レッド・アイはクラマトですか?」
私はそのまま聞いてみることにした。
「昔は使用していましたが、今は違います」
お!違うのか・・・少し落胆した。実はこの時ひそかにクラマトのレッド・アイが飲めるのではないかと期待してしまっていたのだ。

「アサヒスーパードライを2つ、それとチキンバスケッド」

友人にはよく聞けたねとレッド・アイの話で笑われる。
たぶん店員さんも何も気にしてはいないと思うけどね。

ビールが先に来て、そのあとチキンバスケッドが届いた。
結局スーパードライを頼んでしまう。
だってすごい。何がすごいって、工場見学で飲むよりうまい。
初めて、コーンが入っている意味を本当の意味で理解できた気がする。
ビールは副産物にいくつかの穀物を入れることがある。
開発者や研究所のこだわりが垣間見えるのだ。

酒飲みによる、酒の話はとどまるところを知らなかった。

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