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NFTはウサギがネコに食べられた日の朝に似ている

◇ あらためて、なぜウサギ?

※今回のnoteには、写真がありません。

どうして、ウサギの絵を描くのですか?
最近NFTでご覧いただく機会も増え、あらためてこういう質問をよくされます。

僕の作品全般を通したコンセプトに、生、死、病があり、ウサギをモチーフに選んだ理由はいくつかあります。

ウサギは、生命力のシンボルであり(プレイボーイ誌のロゴになるなど精力強大な動物)、もう一つのモチーフ月との名コンビであり、描くドットと関連するフィボナッチ数列のサンプル例であり、2つの長い耳は僕が体験したNYはWTCテロのツインタワーを想起させるものであり、美しくて強くてかわいらしくて儚い、複雑な生き物です。

獣を口にすることができない僧侶が二本足で立つウサギを鳥類だとこじつけて食べていた(そのため羽と数える)エピソードも、ウサギの特殊性や運命の非情さ、切なさを感じて痺れるものがあります。

何より息子の病が大きなきっかけなのですが。。
以前のnoteに記してありますので、よろしければご拝読ください。

 note: 死にません、生きている証です
https://note.com/nutsart/n/n5a4ad0d3bc05

死という点からいうと、ウサギには幼いころに忘れられないエピソードがあります。

◇ シミになったウサギ

群馬県の実家でウサギを飼っていたことがありました。
ひねりのない、ウサという名前だったと思います。
まだ僕が小学生の頃です。

妹がよく世話をしていて、なついていました。
ある日の朝、そのウサが突然いなくなりました。
家の中、庭、近くの道や畑を探してもいません。

あきらめかけて買い物に行く途中、車道脇に車に跳ねられて体が変形し、両目が飛び出した野良猫の死体を見つけました。
車道には、細長いシミがありました。

そのシミが、ウサでした。

野良猫が我が家の庭にあった小屋からウサを襲い、連れ出し殺して、くわえたまま車道を横切ろうとして、車にはねられたのです。
猫は弾き飛ばされ、ウサはタイヤの下敷きになり、潰されていました。

次の車にも、その次の車にもウサの死体は踏み続けられ、骨は粉々になって、血肉はアスファルトにめり込み、しみついていました。
車が通るたび空中には、ウサの体毛が舞っていました。

妹は両親になだめられ、涙をぽろっとこぼしてあきらめていました。
やんちゃだった妹が、潔く死を受け入れていたことがまた、僕の記憶にその出来事を強く焼き付けさせました。

◇ 死は記憶の中にだけあった

もう30年前の出来事ですが、あの日あの朝のこといまだに生々しく思い出されます。
しかしながら、この記憶にはひとつ大きな間違いがあったのです。
それに気づいたのは、ウサギの絵もたくさん描いて発表もした、3年前のことでした。

猫に襲われて車に跳ねられ死んだのは、ウサではなく、同じ頃飼っていたニワトリのコケだったのです。
ウサは病気で死んだのでした。

◇ ウサギのちょうど裏側にネコがいる

嗚呼なんという勘違い。
しかしまたこの記憶のズレがボクの作品のウサギに不思議な魅力と深みをもたらしてくれました。

どうしてウサギがネコに襲われたと思ったのか?
愛情を注いだ生き物の死臭と宙舞う体毛
ザマァみろ!と子どもの残酷さで蔑まれた野良猫の無惨な死体
その猫の生きてきた道程

あらゆる記憶と感覚がごちゃ混ぜになり、頭痛と吐き気に襲われました。

今まで、何百何千のウサギを描いてきました。
今回、NFTを発表販売する機会をいただき、新たな場で新たなモチーフを描く。
頭に浮かんだのは、ネコ。

ずっと描いてきたウサギの裏側にはネコがいました。
これから描くネコにはそう、出来るだけの愛情を注ごう。
キュートで、最高に愛らしいネコたち。
1匹ずつ、名前をつけて、解放しよう。
ドキドキする。
ワクワクする。
どんなNFTになるのだろう、ウサギもボクもニワトリだって、きっと楽しみにしている、そう思います。

※このコレクションはHEXAにて公開予定です。詳細はTwitter(@nutsart)にてご確認ください。

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