見出し画像

ボクとウサギの空を飛ぶ夢

◇泣きながら笑う


イヴ・クラインというフランス人の芸術家をご存知でしょうか。
クラインブルーという独自の青色を開発し、それを多用して作品を制作、絵やオブジェ、ヌードモデルの身体に塗りキャンバスに人拓を取るなんて作品も有名です。
でもボクが彼の作品で一番好きなのは「飛翔」という作品です。

「飛翔」は、クライン本人が建物の2階から空を飛ぶ勢いで、外に向かって飛ぶ、というパフォーマンス作品です。
は?
だから、何?
なんでこれがアートなの?
ボクはこの有名な写真をはじめて見たとき、東京藝大油絵科を目指し浪人していたころ、笑いました。
バカです、これはバカです、よね?
でもふと気づいたら、笑いながら泣いていました。

飛翔、あるいは飛行のパフォーマンス
イブ・クライン 1960

◇夢は叶う、でも夢だけしか叶わない


何で、泣いたのだろう。
自分でもよく分かりませんでした。
その日、絵を描き終え帰宅し、一人暮らしの風呂なしアパートの一室で涙の意味を考えていました。

そうか。
答えはいたってシンプル。
写真の人物は、ボク自身だったからです。
芸術、アートの道を志し、夢を見て、そこに人生を捧げる。
目の前のキャンバスに筆を擦り付けながら、遥か遠くでぼやけている芸術の答えに向かっていく様は、まさに二階から飛び立つイヴ・クライン。
ボクはこれから空を飛ぼうとしている、そう思うと震えました。

ラジオではTHE BLUE HEARTSのヒロトがリスナーに問われていました。
「夢は必ず叶うって歌ってるけど、夢が叶わない。嘘つきだ」
ヒロトはこう答えました。
「いや夢は叶うんだよ。でもさ、だいたいみんなそうなんだけど、他のものも欲しがるんだよね。お金とか愛とか家族とか友達とか幸せとか健康とか娯楽とか。夢しか叶わないんだよ、他は全部あきらめて。でも夢だけなら叶うんだよ」

◇ルーブルへ、空を飛ぶ夢


昔、日本で、ウサギは鳥とされていました。
2足の生き物しか食してはいけない決まりのもと、鳥だけでは肉が足りず、耳の大きなウサギも鳥ということにして、食べても良いことにしよう、ということになりました。
ウサギは跳ねる、でも鳥のように空は飛べない。
そのウサギの見る夢。
ボクはそれを想像するといつも、空を飛ぶ夢、を思い浮かべてしまいます。

人間の文明の発達が科学と電力によるものではなく、蒸気によるソレだったら。
その発想をスタイリッシュに表したのがスチームパンクです。
ボクはその発想と何より外観が好き。
かっこいい。
子供の頃からドラゴンボールやアラレちゃんで鳥山明の描くスチームパンク風の衣装にときめいていました。
スチームパンクが掲げる夢の一つが、空を飛ぶ夢、です。

ウサギが空を飛ぶ。
衣装はもちろん、スチームパンク!
そこにかつての自分、かつての想いをなぞらえて。

翼や羽根やマントを身につけたウサギたち(の絵)は海を越え、アジア、アメリカ、ヨーロッパ、各国の美術館やギャラリー、アートフェアで展示・販売されていきました。
そしてウサギの飛翔は、パリ、ルーブル美術館へ。
世界一有名な美術館にも2度、展示されました。
ウサギたちは、遠く遠くへとボクの想いを運んでくれました。
特別な思い入れのあるこの絵画シリーズをこれから少しずつ丁寧にNFTの作品にしていきます。
もう一度、また違う空、その、空を飛ぶ夢。
さあまた、2階から飛ぼう。

月と太陽とウサギたち(空を飛ぶ夢)とその前に立つ作者
キャンバスに油彩 91×91cm 2017
ルーブル美術館(フランス)、パクスギャラリー(オーストリア)他、日本国内でも多数展示


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?