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#8 保険診療でオーソモレキュラー療法は出来る? 保険診療とオーソモレキュラー療法の違い、薬とサプリメントの違いとは

薬とサプリメントの具体的な違い。同じように見える物でも何が違う?⑥

薬で使われるビタミンAと、分子栄養学実践専用サプリメントのビタミンAの違い

最後に、薬で処方されるビタミンAと、分子栄養学実践専用サプリメントのビタミンAの違いについてです。

ビタミンAには主に細胞の分化・分裂に関係しており、規則正しい細胞分裂を誘導するために必要な栄養素です。特に皮膚や粘膜などの細胞分裂に重要な役割を果たしていることから、「お肌のビタミン」とも表現することが出来ます。

このビタミンAが不足してしまうと、細胞の分化・分裂が上手く誘導されなくなってしまい、お肌の新陳代謝(ターンオーバー)が乱れてしまいます。

すると、お肌のハリ・ツヤが無くなる、小じわが目立つ、シミ・そばかすが目立つ、ニキビなどの皮膚炎になりやすくなるなどのトラブルが起こります。

また、ビタミンAは他にも眼の機能を維持する働きを持っていて、不足すると夜盲症(暗いところでものが見えない)や眼球乾燥症(結膜や角膜の乾燥)、ドライアイを起こすことがあります。

そのため、ビタミンAは皮膚や粘膜以外に、眼の健康や視力の維持にも必要な栄養素です。もしビタミンAが不足してしまうと、眼が乾燥する、涙目になる、暗いところでものが見にくい、眼が疲れるなどの不調が起こりやすくなります。

では、病院で処方されるビタミンAを使って、オーソモレキュラー療法を行う事は出来るのでしょうか?

病院では主に、ニキビや吹き出物の治療としてビタミンAのお薬が処方されています。同じビタミンAなら、サプリメントのビタミンAよりも病院で処方されるビタミンAの方が効果が高そうな感じがしますよね。

ですが、病院で処方されるビタミンAでは、オーソモレキュラー療法を実践することは出来ません。

なぜなら、病院で処方されるビタミンA製剤は「活性型」の栄養素であり、効き目が強すぎることから、栄養補給を目的としたオーソモレキュラー療法では使用できないためです。

具体的には、ビタミンAには「レチノール」「レチナール」「レチノイン酸」という3つの種類があります。また、ビタミンAの一種と言われているβカロテンも必要に応じてレチナールに変換されています。このうち、「βカロテン」「レチノール」が前駆体で、「レチナール」と「レチノイン酸」が活性型です。(※正確にはレチノール、レチナール、レチノイン酸共に活性型ですが、ここでは分かりやすくするためにレチノールを前駆体としています)

レチノール(レチニルエステル)は主にレバーや魚の脂肪部分、肝臓部分に含まれていて、普段私達が食品から得られるビタミンAです。また、βカロテンは主に緑黄色野菜に含まれています。これらは体内で必要な量を必要なだけ、必要に応じて「レチナール」や「レチノイン酸」に変換(活性化)されて利用されています。

対して、皮ふ科などの治療で用いられているのが、既に活性型のビタミンAである「レチノイン酸」です。レチノイン酸には細胞の分化・増殖を促進し、皮膚の細胞分化やターンオーバー(新陳代謝)を調節する働きがあります。このことから、主にニキビの治療薬として使われています。

このように聞くと、栄養素は前駆体で摂らずに活性型で摂った方が効果が高いのでは?と思いますよね。しかし、活性型で摂った場合は身体が本来持っている調節機能を無視して栄養素が働いてしまいます。そのため、場合によっては栄養素の働きをコントロールできなくなり、副作用が出たり逆に生体内の分子や代謝が乱れたりしてしまう原因になるのです。

例えば、レチナールは主に網膜に存在し、視覚に関与するのに対し、レチノイン酸では細胞の分化・増殖に関与しています。同じビタミンAに属していますが、この2つは全く働きが異なります。もし、眼の健康を目的としているのに、同じビタミンAだからと「レチノイン酸」を大量に摂取してしまった場合、レチナールとしての働きは得られないどころか、レチノイン酸による副作用によってむしろ健康を害してしまう結果になりかねません。

また、お薬である「レチノイン酸」の過剰摂取で問題となるのが、時に死に至るなど重篤な副作用を引き起こしてしまうことです。これを読んでいるあなたも、「ビタミンAを摂りすぎると死に至る」という情報を聞いたことがあるのではないでしょうか。

これについては、やはりお薬である活性型のレチノイン酸を過剰摂取することは非常に危険です。前の記事でも解説した様に、活性型で摂った場合は身体が本来持っている調節機能を無視して栄養素が働いてしまいます。そのため、場合によっては栄養素の働きをコントロールできなくなり、副作用が出たり逆に生体内の分子や代謝が乱れたりしてしまい、最悪の場合は死に至る原因になってしまうのです。

逆に、前駆体である「βカロテン」や「レチノール」ではそのような危険性はありません。なぜなら、これらは体内で必要に応じて活性化されて利用されています。そのため、βカロテンやレチノールを摂りすぎたとしても、死に至るなどの危険性は基本的には無いと言えるのです。

また、副作用の報告のすべては活性型である「合成のレチノイン酸」を大量投与した結果であって、決して「レチノール」や「βカロテン」でテストされたものではありません。

ビタミンA過剰症についての注意喚起では、その情報の多くが活性型のレチノイン酸と「レチノール」「βカロテン」などを混同しています。基本的にレチノールやβカロテンでは、活性を持たないことから安全性が高いビタミンAです。

加えて、「レチノール」と「レチナール」は体内で必要に応じて相互に変換することができ、体内でビタミンAを運ぶ際や貯蔵する際にも「レチニルエステル」というエステル化(コーティングのようなもの)が行われます。例え食品からビタミンAを摂りすぎたとしても、体内では「レチナール」を活性の低い「レチノール」にしたり、レチニルエステルという非常に安定性が高い状態にして肝臓に貯えることが出来るのです。

そのため、「レチノール」や「βカロテン」をサプリメントで摂ったとしても、基本的に過剰摂取の心配はありません。逆に、レチノイン酸はレチノールへと変換できないことから、薬によるレチノイン酸の大量投与は過剰摂取の危険性が高まってしまうのです。

それから、体内では必要に応じて「レチノイン酸」に活性化して利用されますが、この体内で作られる「レチノイン酸」と薬で用いられる「レチノイン酸」の作用は異なります。

例えば、体内でレチノイン酸が生成される場合、その生成量やタイミングは生体の調節機構によって厳密に制御されています。一方、薬など外部から投与される場合は、一度に大量のレチノイン酸が体内に供給されるため、自然な生体調節とは異なる影響を及ぼす可能性が高くなります。

つまり、体内で作られるレチノイン酸は、作られる量や作られた後の分解量、分解するタイミングなどを身体がコントロールできるのに対し、外部から投与したレチノイン酸は、身体がコントロールする事が出来ません。このため、外部から投与するレチノイン酸の作用と、身体の中で作られるレチノイン酸の作用は、同一視してはならないのです。

このように、お薬で使われるビタミンAには副作用があることから、医師の判断の下慎重に投与量が決められて処方されています。お薬のビタミンAを処方されたときは、医師の処方通りに用法用量を守って正しく服用することが大切です。

対して、オーソモレキュラー療法では、食生活などで不足したビタミンA(βカロテン、レチノール)の補給を目的としているため、お薬のビタミンAをオーソモレキュラー療法で使用する事は出来ません。同じ栄養素に見える薬とサプリメントですが、その働きも目的も全く異なるのです。

また、オーソモレキュラー療法ではビタミンAのサプリメントを単品で摂取する事は基本的にありません。これは、ビタミンAを体内で貯蔵したり運んだりするためには、ビタミンAを運ぶための「タンパク質で出来た専用のトラック(レチノール結合タンパク)」が必要なためです。

もし、体内でタンパク質が不足していた場合、ビタミンAを貯蔵したり運んだりすることが出来なくなり、ビタミンA不足に繋がります。

そのため、オーソモレキュラー療法ではビタミンAのみを単品で摂取するのではなく、タンパク質やタンパク質の代謝を助けるビタミンB、亜鉛など、ビタミンAの利用に必要な栄養素も同時に摂取を行っていきます。

加えて、ビタミンAを活性化しているのは主に肝臓ですので、脂肪肝や肝炎など肝臓の働きが悪くなっていないか、お酒を飲みすぎていないかなどもチェックし、摂取したビタミンAが体内できちんと働けているかどうかもチェックしながら行っていく事が基本です。

それから、ビタミンAは脂溶性のビタミンのため、消化液などの体液と混ざりにくく、そのままでは吸収・運搬することが出来ません。これを解決するために、私達の体内では「胆のう」から分泌される胆汁によって、脂質と水分を混ざりやすくする「乳化」という仕組みが備わっています。この乳化の仕組みは、女性の方であればメイク落としを想像していただければイメージしやすいかと思います。

繰り返しになりますが、この乳化能力は、加齢やストレスなど様々な要因によって低下してしまう場合があります。このような場合、いくら脂質を摂っても、体内でうまく乳化することが出来ないため、十分に吸収することが出来ません。

そのため、当方が推奨する分子栄養学実践専用サプリメントのビタミンAには、脂質を上手く吸収できない方のために「ミセル加工」が施されているものもあります。ミセル加工とは、水に混ざりにくい油を、水に混ざりやすくした加工のことです。

当方が推奨するオーソモレキュラー療法実践専用サプリメントの場合では、このような加齢やストレスなど様々な要因によって乳化能力が低下している方のために、予め乳化を施した「ミセル加工」(自己乳化型加工)を施した製品が用意されています。

また、天然に存在するビタミンAは「βカロテン」や「レチノール」など、様々な形態で存在しています。当方が推奨するオーソモレキュラー療法実践専用サプリメントでは、なるべく食品と同じ自然に近い形で摂取する事が大切と考えていることから、レチノール以外にも協調して働く7種類のカロテノイドとDHA・EPAが配合されています。このように、体内での利用効率も考えられた処方設計になっている事も特徴です

つまり、病院で処方されるビタミンAは、あくまで治療が目的であって、栄養補給を目的とした用途には使うことが出来ません。

もし、ビタミンA製剤が保険適用で利用出来るようになったとしても、やはりオーソモレキュラー療法で使用する事は出来ないのです。

このような違いがあることから、病院で処方されるビタミンA製剤やドラッグストアなどで市販されているビタミンAサプリメントを使ってオーソモレキュラー療法を行う事は出来ません。

ただ、中には代謝障害や臓器の病気などでビタミンAをうまく活性化したり、利用することができない方もいます。そのような方は適切にお薬のビタミンAを使うことも必要です。

ビタミンAというとみんな同じように見えるかもしれませんが、比べてみるとオーソモレキュラー療法と保険診療では、使う材料ややり方、考え方に大きな違いがあることが分かりますね。





※この記事は、下記記事から一部を抜粋・改編したものです。記事全文は下記記事をご覧下さい。元記事はこちら↓


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