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#1 分子整合栄養医学と医学の違いとは? それぞれの役割と違いについて解説

近年、クリニックでは栄養療法や高濃度ビタミンC点滴など分子整合栄養医学を取り入れる所が増えてきました。また、健康意識の高まりによってインターネット上では様々な健康情報が飛び交っています。その中でも、分子栄養学や分子整合栄養医学、オーソモレキュラー療法といった言葉も多く目にするようになってきました。

この分子整合栄養医学やオーソモレキュラー療法とは一体どのようなものなのでしょうか? 分子整合栄養医学と一般的な医学では、何が違うのでしょうか?

今回は、医学と分子栄養医学との違いについてと、分子整合栄養医学の基礎についてわかりやすく解説します。

分子整合栄養医学とは? 分子整合栄養医学における役割と、西洋医学、東洋医学における役割の違い

私達の身近な医療として、お薬や手術で病気を治す西洋医学と、漢方や鍼灸などで治療を行う東洋医学があります。これらと分子整合栄養医学とでは、一体何がどのように違うのでしょうか?

まず、西洋医学と東洋医学、分子整合栄養医学では、その目的もやり方も全く異なります。現代医学、通常医療とも言われる西洋医学では、主に「悪くなっているところを検査で調べて客観的に分析し、症状の原因となっている病巣を科学的根拠に基づいて排除しましょう」というのが西洋医学の基本的な考え方です。

例えば、頭痛がする、頭が痛い、足が痛いなどの症状に対し、血液検査やレントゲンなどの画像診断、触診や問診などの検査を行います。そして、これら検査結果を統合して可能性のある疾患を絞っていき、病気かどうかの診断を行います。

もし、この時に病気と診断できた場合は、主に原因となっている部位に対してのみ治療薬を投与したり、手術を行うなどして治療を行います。このように、西洋医学では科学的根拠に基づく原因のハッキリした病態が得意です。

もう一つの東洋医学では、「病気や不調が引き起こされる背景には必ず原因があるとし、体全体をみてその根本原因から改善させていきましょう」というのが東洋医学の考え方となります。

例えば、西洋医学では頭が痛いという症状があった場合、脳神経外科を受診して画像診断を行います。そこで特に病気と判断出来なければ、痛み止めを処方されて治療はいったん終わりです。

対して東洋医学では、なぜ頭痛が起きているのかを、頭痛以外の症状や状態を伺いながら根本原因を探っていきます。一般的に、同じ頭痛の症状でも、その他の症状については人によって様々です。これら人それぞれ異なる症状をお伺いし、どのような体質で、どうなっているから頭痛が出ているのかを見ていくのが東洋医学です。

具体的には、生活環境や季節性のストレスが無いか、花粉症や冷え性などが無いかなど、患者さんの体全体に起こっている症状をお伺いします。この時、患者さんの状態が本来の健康な状態からどのようにバランスを崩しているかを独自の診察法を用いて判断します。

そして、その崩れたバランスを正したり、自己治癒力を高めるために漢方や鍼灸などで改善を図っていきます。このように、東洋医学では個人差を重視し、原因まで追及して治療を行っていくのが東洋医学です。東洋医学では、「なんとなく調子が悪い」など病気とは診断されていないけど不調が起こっている「未病」と呼ばれる状態に対し、体全体から整えていくことを得意としています。

この2つはどちらも得意とすることが違い、どちらが良いとか優れているとかではありません。西洋医学はウィルス感染や細菌感染、ガン、骨折などの治療においては多大なる貢献と実績があります。一方、東洋医学では原因のハッキリしない不調に対する治療や、体質改善が得意です。主にスポーツや美容、介護など様々な分野で重宝されています。どちらも、それぞれ得意・不得意を考慮してうまく使い分けたり、組み合わせたりすることが大切です

分子整合栄養医学とは?

では、分子整合栄養医学とは一体どのようなものなのでしょうか?

分子整合栄養医学(ぶんしせいごうえいよういがく)とは、食物から摂取した栄養素や食品成分が、体内でどのように働くかを分子レベルで解明する学問のことです。分子整合栄養医学は、20世紀後半に北米で活躍した2名の科学者、ライナス・ポーリング博士(1901-1994 年)とエイブラム・ホッファー博士(1917- 2009 年)により確立されました。

先ほどの医学は、病気を予防したり治療を行うことが目的なのに対し、分子整合栄養医学では、私たちの身体がもつ本来の力を最大限に引き出し、オプティマムヘルス(単に病気を予防するだけに限らず、心身ともに最高・最善の健康状態)の実現を目指す事が最大の目的です。

分子整合栄養医学は、人によって分子栄養学(ぶんしえいようがく)やオーソモレキュラー療法、オーソモレキュラーニュートリション、栄養療法などと呼ばれることもありますが、基本的にどれも同じものを指しています。

これら言葉の利用傾向としては、基礎理論である座学に対して分子栄養学や分子整合栄養医学などと呼ぶことが多く、対してクリニック等で提供している分子整合栄養医学を元にしたサービスに対しては、オーソモレキュラー療法や栄養療法と呼ばれる傾向にある印象です。

このサイトでも、わかりやすく解説するために分子整合栄養医学の基礎理論を解説する場面においては「分子栄養学」とし、クリニックで提供されている分子整合栄養医学を元にしたサービスを解説する場面においては「オーソモレキュラー療法」という表現を用いています。

オーソモレキュラー”Orthomolecular”という言葉の意味は、ギリシャ語の「正しい」という意味に由来するortho(正常な)と molecule(分子)を組み合わせた造語です。この言葉は、ノーベル賞受賞者でもあり、分子栄養学の第一人者であるライナス・ポーリング博士が提唱しました。

分子整合栄養の理念多くの疾患は、体内の分子が本来あるべき正常な状態ではなくなる事と考え、分子を正常化するために不足している栄養素を至適量補給することによって自然治癒力を高め、病態改善が得られる。

ノーベル化学賞受賞 ライナス・ポーリング博士

ポーリング博士は、自身が研究する鎌状赤血球症という病気の背景に、ヘモグロビン分子の異常が潜んでいることを発見し、「分子病」という病気の概念を新たに確立したことで知られています。

鎌状赤血球症とは、本来丸いお餅の真ん中をへこませたようなへん平な形をしている赤血球が、草を刈る鎌のような三日月に変形してしまう病気です。赤血球は全身に酸素を運ぶ役割を担っていて、本来のへん平な形をしていれば、細い毛細血管内でも柔軟に形を変えて通り抜けることが出来ます。

しかし、赤血球が三日月型に変形してしまうと、毛細血管など細い血管が通れなくなって詰まってしまい、壊れやすくなってしまいます。その結果、慢性溶血性貧血、慢性疲労、疼痛、臓器障害など、さまざまな症状につながってしまうのです。

ポーリング博士は、この鎌状赤血球症という病気の背景に、赤血球の中のヘモグロビン分子の異常が潜んでいることを発見しました。ヘモグロビンは、アミノ酸など様々な分子が組み合わさって出来ています。このヘモグロビンに含まれるたった1つのアミノ酸分子の違いが、鎌状赤血球症の原因となるのです。この発見こそが、分子の乱れが人間の病気の原因になることを世界で初めて示した瞬間でした。

それ以降、ポーリング博士は自身の研究を通じて「生体内の分子の乱れが病気の発症に関与しているのではないか」と考えるようになります。そして、前述した「多くの疾患は、体内の分子が本来あるべき正常な状態ではなくなる事と考え、分子を正常化するために不足している栄養素を至適量補給することによって自然治癒力を高め、病態改善が得られる」事を提唱したのです。

これは、私たちの身体の中に正常にあるべき分子(molecule)を至適濃度に保つ(ortho)充分量の栄養素(nutrition)を摂取し、それを適切に消化・吸収・代謝することによって生体機能が向上し、病態改善が得られるという理論です。

ここで言う分子とは、私達が普段摂取しているタンパク質や脂質、ビタミンやミネラルなどの栄養素のことを指しています。例えば、私達の身体は200種類以上、およそ数十兆個の細胞が集まって出来た細胞の集合体です。これら細胞が集まることで心臓や脳、肺や血管、皮膚や筋肉などの組織が作られ、組織が集まることによって私達の身体が作られています。

では、この細胞自体を作ったり、動かしたりするエネルギー源や材料は一体何なのでしょうか?

これこそが、「タンパク質」「脂質」「糖質」「ビタミン」「ミネラル」などの栄養素(分子)であり、生命活動を営むために欠かせない成分のことです。

私達の皮膚や組織などの細胞を一つ一つもっと深く見ていくと、やがてこれ以上小さく見ることが出来ない「分子」という状態になります。

分子はビタミンやミネラル、アミノ酸などの分子(栄養素)のことで、これら分子(栄養素)が集まって構成された物が細胞です。

そして細胞は、糖質や脂質などの分子(栄養素)をエネルギーとして利用することで体温を作り出したり、身体を動かしたりしています。

私達の筋肉や臓器、骨なども、タンパク質やミネラル等で作られている事はご存じですよね。これらタンパク質やミネラル、糖質や脂質などは、胃や腸などの消化管を通じて消化(繋がった分子をバラバラに)した後、血管を通って細胞に必要な分子が送り届けられています。

つまり、私達は食事を通じて細胞に必要な分子(栄養素)を得て、組織の機能を維持し、生命活動を行っているのです。もし、この時に胃や腸などの消化管に問題があったり、食事の内容やバランスが悪くなったりしていると、体内の分子(栄養素)の量やバランスが乱れてしまい、細胞の正常な働きが出来なくなってしまいます。

この乱れた分子(栄養素)を個人個人、必要な量を補給することで、細胞の働きを本来あるべき状態に整え、病態の改善や予防、オプティマムヘルス(心身ともに最高・最善の健康状態)を目指すのが分子栄養学です。

具体的には、分子栄養学では消化管である口、胃、小腸や大腸、胆嚢などの状態や、酵素の量、働き、ホルモンや自律神経など身体の代謝全般と、個人個人の状態や病態を考慮し、「分子栄養学実践専用サプリメント」を用いて栄養補給を行います。また、分子栄養学では消化、吸収した栄養素が血液に運ばれて実際に利用されるまでを考慮します。

例えば、ピロリ菌に感染して胃粘膜が荒れていたり、ストレスがかかったりして胃腸の機能が低下しているとタンパク質などの消化能力が低下します。タンパク質の消化能力が低下していると、タンパク質が体内に上手く取り込めなくなってタンパク質が不足し、貧血や自律神経の乱れなど様々な不調が引き起こされてしまう原因となります。

分子栄養学ではこのような消化吸収能力を調べるために血液検査を行い、必要であればピロリ菌の除菌など西洋学的アプローチも行います。その上で、その人の消化能力に合わせて最適なタンパク質の摂取量や消化酵素の摂取量などのアドバイスを行っています。

そして、単に治療や病気の予防、足りない栄養を補給するといった枠に捕らわれず、「もっと筋肉を付けたい」「もっと肌が綺麗になりたい」など個人的な目標や要望に合わせて最適な栄養アプローチを行っていく事が最大の特徴です。

対して一般的な医学では、病気や不調に対する治療は行いますが、このような消化吸収能の低下や個人差に合わせた栄養補給、生体内分子の乱れなどの考慮は行っていません。このあたりが医学と分子整合栄養医学の大きな違いです。

このように、分子整合栄養医学は、西洋医学や東洋医学と比べてその中身は全く違うものです。



※この記事は、下記記事から一部を抜粋・改編したものです。記事全文は下記記事をご覧下さい。元記事はこちら↓


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