見出し画像

#3 分子栄養学と一般的な栄養学の違いとは? それぞれの違いを具体的に解説

一般的な栄養学と分子栄養学の違い②『栄養素の質、劣化、損失量の考慮』

次に、栄養素の劣化や損失など、質を考慮するかどうかの違いです。一般的な栄養学では栄養素の質などは殆ど考慮されませんが、分子栄養学では栄養素の働きを重視しているため、質や劣化、損失量なども考慮します。

例えば、栄養素は光や酸素、温度や湿度などで酸化、劣化、分解したり、栄養素同士が反応したりしてしまうものがあります。よく、調理の際に野菜を茹でるなど加熱して食べた場合、水溶性ビタミンのビタミンCやビタミンB、カリウムなど栄養素の一部が失われてしまうということを聞いたことがありませんか?

これは、調理される過程で水や油に栄養素が流れ出てしまったり、熱によって分解されたりして、その一部が失われてしまうためです。

また、調理をする前の段階であっても、食品の保管状況によっては栄養素が酸化、分解して効力を失ってしまう場合もあります。特に、野菜や果物の一部には、冷蔵庫など低温で保存すると細胞が変質し、水っぽくなったり栄養価が低下したりするものがあります。このような低温下におけるダメージを「低温障害」と言います。

例えば、サツマイモをそれぞれ7.5℃、15℃で保存し、アスコルビン酸(ビタミンC)の含有量の変化を調べたデータがあります。貯蔵期間が長くなるにつれ、7.5℃で保存したものはアスコルビン酸の減少が大きく、10週後には殆ど0になってしまいました。

https://weathernews.jp/s/topics/201810/250165/amp.htmlより


このような低温障害に伴うビタミンCの減少は、パイナップルやレモン、バナナ、ナス、ピーマンなどでも確認されています。そして、一般的に家庭用冷蔵庫の野菜室は3〜8℃程度に設定されていることから、一部の野菜を冷蔵庫など低温保存していた場合、保管状況によっては栄養価の損失が進んでしまう場合があるのです。

このため、個人個人に必要な栄養素を食事から摂取しようとした場合、例えばビタミンCを1000mg摂ろうとしたときに、食材の保管方法や調理方法、食材の産地や摂れた時期、栽培方法などによって摂れる栄養素の量が変わってきます。これでは、必要な栄養素の量が本当に摂取出来ているかどうかの判別が出来ません。

加えて、ビタミンCには還元型の「アスコルビン酸」酸化型の「デヒドロアスコルビン酸」があります。両者の違いは、還元型のアスコルビン酸は活性酸素を消去する抗酸化作用があるのに対し、酸化型のデヒドロアスコルビン酸は既に酸化しているため、抗酸化作用が期待出来ない点です。

食品中に含まれるビタミンCは、先ほどの例のように保存状態や調理方法、温度などによって変化し、デヒドロアスコルビン酸に酸化したり分解されたり、流出したりして失われていきます。酸化型のデヒドロアスコルビン酸は体内でアスコルビン酸に還元することが出来ますが、それでもアスコルビン酸を摂取した場合と比べて抗酸化作用は期待出来ません。

一般的な栄養学では、アスコルビン酸とデヒドロアスコルビン酸の区別は無く、どちらも「ビタミンCの摂取量」としてカウントしています。これはデヒドロアスコルビン酸を摂取しても体内でアスコルビン酸に還元することが出来るためです。

それに対し、分子栄養学では「アスコルビン酸」のみを有効成分としてカウントしています。理由としては、分子栄養学ではアスコルビン酸における抗酸化作用によって、体内の活性酸素を消去したり、ガンの予防や進行抑制など、薬理効果を得ることが目的のためです。

このように食事からでは栄養素の劣化や損失などがある事から、分子栄養学では必要な栄養素を摂取するためにサプリメント(分子栄養学実践専用サプリメント)を用いて補給します。サプリメントには様々な種類が販売されていますが、有効成分が高濃度に含有されているものや、天然由来の生体内物質が原材料として使われているものなど、一定の条件をクリアしたものを使用する事が基本です。


治療で使われるサプリメントの条件

  • 含有原料は、食品由来の生体内物質が使用されているか

  • 有効成分が効力を失わないまま、高濃度に含有されているか

  • 消化吸収を考慮した設計、配合内容になっているか

  • 体内での崩壊が考慮された設計、配合内容になっているか

  • 製品中の栄養成分同士が反応しないよう、反応抑制のためのコーティングはされているか

  • 栄養素は単体で摂取しても効果が無いため、複合体での設計、配合になっているか

  • 細菌・薬物など汚染物質のチェックは厳重に行われているか?

  • 製品管理システムはとられているか


このような高濃度、高品質なサプリメントであれば栄養素の損失も殆ど無く、劣化や酸化などしていない有効成分を一定量確実に摂取することが出来ます。

また、天然由来の生体内物質が使用されているサプリメントであれば、食事から栄養摂取したことと殆ど変わりません。天然由来の生体内物質というと分かりにくいかも知れませんが、サプリメントの中には人工的に合成したものや、天然には存在しない形に加工されたもの、元々天然由来の成分でも人工的に加工されたものなどがあります。(合成のビタミンE、アミノ酸キレート鉄など)

これらは、同じ栄養素に見えても生体内では「異物」として蓄積、排泄されてしまうこともあることから、サプリメントを選ぶ際は人工的に加工されていない、食品由来の天然成分が原材料として使われているものを選ぶことが大切です

加えて、「非ヘム鉄」のように野菜など植物性の食品に含まれる天然成分であったとしても、大量に摂取することで胃腸障害を起こしたり活性酸素が発生してダメージを受けてしまう栄養素については非推奨となっています。そのため、分子栄養学では肉や魚などに含まれる動物性の鉄分である「ヘム鉄」の摂取を推奨しています。

このように、分子栄養学ではそれぞれの栄養素の働きを理解し、食品と同じ安全な有効成分が高濃度に含有されたサプリメントを用いて、個人個人に合わせた栄養アプローチを行います。

対して一般的な栄養学では、アスコルビン酸やデヒドロアスコルビン酸の摂取を区別したり、ヘム鉄、非ヘム鉄の摂取を区別したりすることはありません。

このような栄養素の質や働き、損失量などを考慮して行うか否かが、一般的な栄養学と分子栄養学の大きな違いです。



※この記事は、下記記事から一部を抜粋・改編したものです。記事全文は下記記事をご覧下さい。元記事はこちら↓


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?