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#6 分子栄養学と一般的な栄養学の違いとは? それぞれの違いを具体的に解説

サプリメントを利用しなくても、食事だけで分子栄養学は実践できる?
食事から至適量の栄養を補給することはほぼ不可能です。

ここまで、一般の栄養学の違いと分子栄養学の違いについて解説してきました。一般的な栄養学では主に食事から栄養を摂取し、分子栄養学では分子栄養学実践専用サプリメントで栄養補給を行います。

ただ、人によっては「サプリメントなんか使わなくても食事だけで十分な栄養補給が出来るのでは?」と思いますよね。タンパク質は肉や魚から摂れますし、貧血改善に必要なヘム鉄も肉や魚などの動物性食品に多く含まれています。

では、一般的な栄養学で行われているような食事内容を、個人個人に合わせて更に質を高めれば、至適量の栄養補給となるのでしょうか?

結論を先に言いますが、食事だけで分子栄養学を実践し、至適量の栄養素の補給を行うことはほぼ不可能です。というのも理由としては主に4つあり、一つは食事で摂れる栄養素の量が少ないこと、もう一つは病気などによって消化能力が低下してしまった状態では十分に消化吸収出来ないこと、もう一つはむしろサプリメントよりも食事からの方がコストが高くなってしまうこと、最後の一つは毎日同じ物を食べ続けることで飽きが来たり食事の楽しみが無くなってしまうことが理由です。

例えば、タンパク質やヘム鉄ビタミンB群、亜鉛を多く含む食べ物として「赤身肉」や「レバー」があります。赤身肉のヒレやランプ、モモの部位には、100gあたり20gのタンパク質と、2.5mg程度のヘム鉄が含まれています。この肉を多く食べれば、十分にタンパク質もヘム鉄もビタミンB群も補給出来そうな気がしますよね。

しかし、肉に含まれるタンパク質は、そのすべてが得られるわけではありません。肉からタンパク質を摂取する場合は、調理による損失も加わります。肉は加熱調理をして食べますので、一定量のタンパク質は損失してしまいます。これを加味すると、100gの肉を食べてもおよそ8g程度のタンパク質しか摂取出来ない計算です。

また、肉に含まれるヘム鉄は肉汁(ドリップ)と共に流れ出てしまいます。特に煮物や茹でこぼしでは多く鉄分が溶出し、30分から1時間程度煮込むだけでおよそ30%〜50%ほどの鉄分が溶出してしまいます。肉に含まれるビタミンB群も水溶性ビタミンですので、加熱調理や煮込むことで大部分が失われます。食べ物の栄養損失は、思っている以上に大きいのです。

この事を前提に、食事で必要な栄養を摂取するとしましょう。体重が60kgの成人が一日に必要なタンパク質の目安量は、その体重分の60gと言われています。仮に50kgの方なら50g必要です。また、貧血の人は一日あたり45mgのヘム鉄が必要になります。

もし体重が60kgの人が肉だけでタンパク質を補給しようとすると、およそ800gもの肉を毎日食べなければなりません。ヘム鉄に至っては、赤身肉100gあたり2.5g含まれているとすると、45mg補給するためにはおよそ一日2kgも必要になります。一日に800gや2kgもの肉なんて、到底食べる事は不可能ですよね。

加えて、これら摂取した肉がすべて消化吸収出来るとは限りません。消化管に問題や病気を抱えている方は、消化吸収能力が落ちてしまっている場合もあります。そうなると、消化吸収出来るタンパク質量やヘム鉄量は更に低いと考えられます。消化吸収能が落ちている場合は、摂取タンパク質の半分程度が消化吸収出来れば良い方で、場合によっては全く消化吸収出来ない可能性も高いです。

この消化できなかったタンパク質はそのまま小腸や大腸に流れ、悪玉菌のエサとなって腸内環境の悪化を招きます。消化吸収能力が低下している方が肉を大量に食べる行為は、むしろ体調が悪化してしまう原因にもなるのです。

そして、当然ながらこれら肉や食材にはお金がかかります。毎日肉を1kgも2kgも買えば、出費も相当な額になるでしょう。例えば、2023年一月の全国牛肉平均価格は100gあたり342円となっています。物価の高騰で徐々に値上がりしており、今後も値上がりが続くと思われます。この肉を毎日2kg購入するとなると、物価上昇の影響を考慮に入れなくても一日あたり6,840円の出費です。

これに家族分を加えたり、一ヶ月分まで算出すると、とてもじゃありませんが現実的ではありませんよね。購入した肉が問題なく消化吸収出来るならまだしも、消化吸収できない場合はお金を便器に流してしまうようなものです。そんなことを続けるのは、よほどお金に余裕がある人でも不可能だと思います。

また、毎日毎日肉を食べ続けるのは精神的苦痛も伴います。いくらレシピや食べ方を工夫しても、毎日食べていれば当然飽きてきます。食べたくもないのに健康のために食べ続けることは、もはや苦痛でしかありません。

加えて、食品から特定の栄養素を大量に摂取しようとした場合、必要ない栄養素の摂取量も多くなり、脂質の摂取量増加など逆に栄養バランスが崩れてしまう事も考えられます。食事だけで分子栄養学を実践しようとした場合、むしろ食事や栄養のバランスが崩れてしまうこともあり得るのです。

ですので、分子栄養学を実践するために特定の物を大量に食べたり、同じ物を毎日食べることはオススメしません。これでは人生自体がつまらなくなってしまいますし、逆に健康も害してしまいます。つまらない人生は余計にストレスを増大させ、自律神経の乱れや消化能力の低下を引き起こします。そんなつまらない人生を送るよりも、必要な栄養素は都度補いながら毎日の食事を楽しむようにしましょう。

毎日の食事を楽しみながら健康的に必要な栄養素を追加する手段としては、サプリメントを取り入れるのが最も手軽で簡単です。サプリメントなら、普段の食事に加えて摂取する事で、食事では摂れないような高容量の栄養素を摂取することが出来ます。それに、特定の栄養素をピンポイントで補給することが出来るため、必要ない栄養素を過剰に摂取してしまう心配もありません。

例えば、ヘム鉄のサプリメント1カプセルあたり5mgのヘム鉄が含まれていたとしたら、2カプセル飲むだけで牛の赤身肉400g程度に相当します。一回2カプセルを三食食後に飲むだけで、牛の赤身肉では1.2kg相当です。また、タンパク質をプロテインで摂った場合は、そのプロテインの質にもよりますが1回あたり10g~20g程度のタンパク質が手軽に摂取出来ます。

これは、牛の赤身肉で換算すると100g〜200g程度になります。サプリメントの場合は普段の食事に加えて摂取しますので、摂取出来る栄養素の量はこれだけではありません。そう考えると、サプリメントを必要に応じて取り入れることがどれだけ効率が良くコストパフォーマンスが良いかが分かって頂けるかと思います。

このように、食事だけで分子栄養学を実践することは、不可能ではありませんがオススメできません。大切なのは、食事だけ、サプリメントだけと偏るのでは無く、一般的な栄養学をベースに、その上で分子栄養学を実践するということです。

つまり、一般的な栄養学に基づいてバランスの良い食事や栄養摂取を心がけ、それでも足りない栄養素を分子栄養学的アプローチによって補っていくという考え方です。サプリメントは食事ありきで摂取するものですので、ベースにバランスの良い食事が無ければサプリメントを摂っても意味を成しません。また、先ほど解説したように食事だけで個人個人に必要な栄養素を摂取することはほぼ不可能です。

なるべくサプリメントを使いたくないという方の意見や気持ちも分かりますが、サプリメントも食品成分から作られた安全なものであれば食事から摂取することとほぼ同じです。食事とサプリメント、一般的な栄養学と分子栄養学はどちらが優れているとかではなく、目的に応じてそれぞれ上手く組み合わせて行っていきましょう。


間違った分子栄養学の情報に注意!

近年、インターネットやSNSが発展したことから、健康に関する様々な情報が飛び交っています。分子栄養学においても、分子栄養学を学べるセミナーや講座が増えた事によって、これらを学んだ人達による情報発信が急激に増えてきました。

このような中で問題となってくるのが、間違った分子栄養学の情報です。分子栄養学の情報の中には間違った情報や、分子栄養学をしっかり理解せずに情報発信されたもの、独自理論を組み合わせたものや、自身の経験のみで語られた客観性、エビデンスのない情報なども発信されています。酷いものでは、全く分子栄養学でも何でも無いのに分子栄養学だと語られているものもあります。

例えば、以下のような情報は間違った分子栄養学の例です。

  • メガドーズ、メガビタミン健康法

  • 食事内容の改善や、特定の食材を摂取するだけで至適量の栄養が得られ、病気が改善するとしているもの

  • この不調にはこの栄養素」といったように、単に不調の症状だけを元に栄養アプローチを行うもの

  • 海外サプリメント、単に安価なサプリメントなど、安全性、有効性が確認されていないサプリメントで分子栄養学の実践をおこなっているもの

  • 前駆体では無く、活性型の栄養素を用いているもの

  • ファスティングと分子栄養学を組み合わせるなど、独自理論が組み合わされたもの

  • 薬は一切使わない、栄養療法だけで病気が治るなど極端なもの

  • 病態や不調の根本原因を調べるための検査に誘導しないなど、栄養欠損となった原因をきちんと調べずに行っているもの

  • 医師免許を持たない者が、血液検査データを扱う、サプリメントを処方する、食事指導を行うなど、医療機関を通さずに分子栄養学の指導を行っているカウンセラー など

このような情報は間違った分子栄養学であり、実践することで病態や体調が悪化するなどむしろ命に関わる危険性があります。事実、当方にもこれら誤った情報を元に実践した方からの健康被害に関するご相談も増えてきました。

現代では個人がSNSで気軽に情報発信が出来る世の中になっています。このような時代だからこそ、間違った分子栄養学の情報にはくれぐれもご注意ください。



※この記事は、下記記事から一部を抜粋・改編したものです。記事全文は下記記事をご覧下さい。元記事はこちら↓


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