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#3 ピロリ菌に感染していると低血糖症発症リスク大。ピロリ菌と低血糖症の関係と、除菌成功率を高める分子栄養学的アプローチをご紹介

胃腸機能の低下から更なる糖代謝悪化の悪循環へ②

消化能力の低下から腸内環境が悪化。腸内環境の悪化が糖代謝悪化の原因に。

前述したようにピロリ菌に感染すると、ピロリ菌の出す毒素によって胃粘膜に炎症が発症し、慢性胃炎や萎縮性胃炎となって胃腸の消化能力が低下します。このことから、タンパク質がうまく消化吸収できなくなり、タンパク質不足に陥ってしまうことは解説しましたよね。では、消化できなかったタンパク質はいったいどこにいってしまうのでしょうか?

この消化できなかったタンパク質は小腸や大腸にそのまま流れ、吸収出来ずに悪玉菌のエサとなってしまいます。悪玉菌のエサが増えることで腸内に悪玉菌が増殖し、毒素を出して腸粘膜にダメージを与えてしまいます。これが炎症の元となって更なる低血糖症の悪化を引き起こしてしまう原因になるのです。

ここで、タンパク質の消化吸収についておさらいしましょう。タンパク質をしっかり消化するためには、胃から分泌されている「胃酸」と「ペプシン」という消化酵素が必要です。これら消化酵素でタンパク質から「ペプチド」という状態になり、次に十二指腸で分泌されるすい液によってアミノ酸まで分解されます。タンパク質は、このアミノ酸まで分解されて、初めて吸収することが出来ます。

もし、タンパク質がアミノ酸にまで十分に消化できなかった場合は、分子の大きいまま小腸や大腸へと運ばれてしまいます。小腸や大腸に運ばれた未消化のタンパク質は悪玉菌の餌となり、悪玉菌が増殖して腸内環境が悪化します。腸内環境の悪化は腸粘膜を炎症させ、炎症によってインスリンの働きを低下させます。このような腸内環境が悪化する原因として近年注目されているのが、「リーキーガット症候群」や「SIBO(腸内細菌増殖症)」と呼ばれる疾患です。

リーキーガット症候群とは、食べ物の栄養を吸収する小腸の粘膜が炎症によって弱り、腸粘膜の細胞同士の間に隙間が出来てしまう状態のことです。この隙間から本来吸収されるはずのない未消化の食べ物や細菌などが血液中に入り込み、免疫が過剰に反応してアレルギー反応や慢性的な炎症を引き起こしてしまいます。

通常、健康な腸の粘膜では「タイトジャンクション」と呼ばれる腸粘膜同士の結びつきがしっかりしていて、腸粘膜の隙間から異物が血管内へと漏れ出ることはありません。

しかし、リーキーガット症候群の状態では、このタイトジャンクションの結びつきが弱くなってしまっています。ここから隙間が出来て、未消化のタンパク質や細菌などが血管内へ侵入し、これらを免疫細胞が異物と捉え、攻撃することで様々なアレルギーや炎症を引き起こしてしまう原因になるのです。

この時、身体はアレルギー反応を抑えようと副腎から「副腎皮質ホルモン」を分泌します。副腎皮質ホルモンは炎症を抑えたり免疫力を抑制したりする作用があるステロイドの一種です。

他にも、副腎は血糖値をコントロールするためのアドレナリンやノルアドレナリン、ストレスに対抗するためのコルチゾールなどのホルモンを分泌しています。副腎がこれらのホルモンを出し続ける状態が続くと、副腎が疲れ切って副腎機能が低下し、ホルモンの分泌量が低下してしまいます。これがいわゆる「副腎疲労」と言われる状態です。

副腎疲労の状態では、ホルモンの分泌量が減ることでさらなるアレルギーの悪化や炎症が慢性化してしまいます。このアレルギーや炎症が慢性的に続くと、TNF-αの分泌が亢進し、インスリンの働きが悪くなってしまいます。また、血糖をコントロールするためのアドレナリンやノルアドレナリンなどのホルモンが分泌出来なくなることで血糖コントロール機能がドンドン低下し、低血糖症を引き起こしてしまうのです。

このリーキーガット症候群は機能性低血糖症や無反応性低血糖症の原因にもなっていると考えられており、現時点で低血糖症を抱えている方なら、既にリーキーガット症候群になってしまっている可能性が高いです。特に下記の症状に当てはまる項目が多いようでしたら、リーキーガット症候群も疑いましょう。

リーキーガット症候群と関連のある疾病と症状

  • アレルギー性疾患

  • 炎症性腸疾患

  • 自己免疫疾患

  • 糖尿病

  • 低血糖症

  • 頻繁に下痢をする

  • 下腹部(大腸)に不快感や痛みが起こる

  • 食後の膨満感が強い

  • 原因不明の倦怠感

  • 栄養補給していても血液データの改善がみられない

  • 服薬中の方(抗生物質、鎮痛剤、ステロイド、ピルなど)

また、リーキーガット症候群と同じく腸内環境が悪化する原因といわれているのが、「SIBO(腸内細菌増殖症)」と呼ばれる疾患です。SIBO(腸内細菌増殖症)とは、その名の通り小腸に細菌が増殖してしまう病気のことです。

小腸内に細菌が増殖してしまうことで、これら菌が私達が食べた食べ物をエサに腸内で大量のガスを発生させます。この結果、お腹が張ったり便秘や下痢になったり、食べていても栄養が吸収出来ずに栄養不足になるなど、様々な不調が表れます。

本来、小腸には大腸と比べるとかなり少ない数の細菌しか生息していません。これは、本来であれば胃酸によって食べ物に付着している雑菌が殺菌されたり、胆のうから分泌される胆汁によって殺菌されたりしているためです。

また、これら胃酸や胆汁酸から菌が生き残ったとしても、空腸や回腸と呼ばれる部分では腸の動きが激しく、流れが速いために増殖することは出来ません。このことから、健康な人の小腸では細菌が増殖することは殆ど出来ません。

しかし、SIBOの状態では健康な腸の人と比べて10倍近くの特定の腸内細菌が激増してしまっています。この菌が増殖してしまう理由としては、ピロリ菌に感染するなどして消化吸収能が落ちていたり、胃や腸の働きが落ちていたりすることなどです。胃酸の分泌量が減っている場合は、食べ物に付着している菌が胃酸で十分殺菌する事が出来なくなります。

また、胃酸の分泌量が減っていることによって十分な消化が出来なくなり、未消化の食べ物が悪玉菌のエサとなってしまいます。この2つが同時に重なる事で腸内に細菌とエサが流れ込み、腸内環境が乱れてしまう結果になるのです。

では、小腸内で大量の腸内細菌が増殖することでどのような悪影響が引き起こされるのでしょうか。まず、小腸内で大量に増殖した菌は、特定の糖類をエサに大量のガスと毒素を発生させます。このガスは水素やメタンなどで、臭いおならの原因になったり、お腹がガスでパンパンになるなどの症状を引き起こします。

そして、この大量に発生したガスは腸の粘膜を風船のように膨らませてしまうことから、腸粘膜同士の結びつきである「タイトジャンクション」の結着力が低下してしまいます。すると、腸粘膜同士に隙間が出来て、リーキーガット症候群へと発展してしまうのです。

SIBOやリーキーガット症候群になっていると、腸内細菌が出す毒素や血管内に侵入する異物によって粘膜や体内に炎症が発生し、低血糖症を引き起こす原因になります。特に、ダメージが大きいのが「肝臓」です。

小腸と肝臓は門脈という血管で繋がっており、小腸から吸収した栄養は最初に肝臓に運ばれます。この時に分子の大きい物質や細菌から分泌された毒素が血管内に漏れ出ると、肝臓にもダメージを与えて炎症や脂肪肝、繊維化を引き起こしてしまいます。

この脂肪肝や炎症が発生することによってインスリンの働きが低下することから、機能性低血糖症や糖尿病を発症する原因になります。他にも、SIBOやリーキーガット症候群では栄養の吸収阻害が起こることで栄養が吸収出来なくなり、甲状腺機能や副腎機能なども低下して無反応性低血糖症へと繋がる原因と考えられています。このように、ピロリ菌感染による消化能力の低下は腸内環境の悪化へと繋がり、腸内環境の悪化は低血糖症の発症と発展することから、ピロリ菌の感染と低血糖症には深い関係があるのです。




この記事は、下記記事から一部を抜粋・改編したものです。記事全文は下記記事をご覧下さい。元記事はこちら↓


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