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#2 オーソモレキュラー療法は自宅でできる検査キットを使って実践できるのか? クリニックで受ける検査との違いや問題点を解説

自宅でできる血液検査キットを使ってオーソモレキュラー療法を行う際の問題点

では、なぜこのような問題がオーソモレキュラー療法の実践に支障を来すのでしょうか? その理由を一つ一つ解説していきましょう。

まず、血液検査を行う上で是非とも知っておいてほしいことがあります。それが、血液検査は使用する「試薬」や「手法」によって、出てくる検査結果に大幅な違いがあるということです。

例えば、同じ日に採血した血液でも、受診した医療施設によっては血液検査結果のデータが異なる場合があります。これは、検査の手法や使用する試薬は、医療施設によって異なることがあるためです。

また、自宅でできる検査キットでは指先に「ランセット」と呼ばれる針を刺して血液を押し出すのに対し、クリニックでは注射器を用いて血液を吸い出します。このような手法の違いも、血液検査結果に影響を与える要因です。

このため、クリニックで受ける血液検査と、自宅でできる検査キットを使った場合の検査では、検査結果にばらつきが出る可能性が高くなります。例えば、クリニックで検査を採血したときのフェリチン値は50だったのに対し、自宅でできる検査キットでは100だったというように、検査結果に大きな違いが出る可能性が高いのです。

そこで問題となるのが、基準値やカットオフ値の問題です。先ほど、メガビタミン健康法ではBUNの目標値は20、アルブミン4.2以上、GOT、GPT、γGTPは20前後、血清フェリチン値は150~200が理想としていましたよね。

また、当方が推奨するオーソモレキュラー療法では目標血清フェリチン値を100ng/mL以上としています。この栄養状態や病態を識別するために、正常範囲と見なす基準範囲を区切った値のことをカットオフ値と言います。

先ほど解説した検査結果のバラツキでは、このカットオフ値も異なってくるため、正確な判断が行えません。

先ほどの例えで言えば、クリニックで検査を採血したときのフェリチン値は50だったのに対し、自宅でできる検査キットでは100だったといった場合、これをそのまま上述したカットオフ値に当てはめて判断することは出来ないのです。

このことから、自宅でできる検査キットではそれに適応するカットオフ値で判断する必要がありますし、クリニックで受けた検査結果は、その検査に適応するカットオフ値で判断する必要があります。

つまり、メガビタミン健康法で用いられているカットオフ値は、あくまで藤川徳美医師が行っているクリニックでの血液検査などに適用されるものであり、それ以外の血液検査でも同じように適用できるとは限りません。

また、オーソモレキュラー療法で使用されているカットオフ値は、専用の血液検査結果でのみ適用できるカットオフ値です。このカットオフ値は、「このような手法を用いて採血し、お願いする検査会社はここ、使用する試薬はこれ」といったように細かく定めた上で決定しています。そのため、上述したオーソモレキュラー療法のカットオフ値は、指定されたオーソモレキュラー療法の血液検査結果のみにしか使うことは出来ません。

これは自宅でできる検査キットだけに限らず、人間ドックでの血液検査や、保険診療での血液検査でも同様です。クリニックAで受けた血液検査と、クリニックBで受けた血液検査では、検査の手法や使用する試薬が異なることがあるため、一概に比較することは出来ません。また、検査の手法や使用する試薬が異なることから、オーソモレキュラー療法のカットオフ値を用いて判断することも出来ません。

このような問題は20年以上前から取り上げられており、そのたびに検査の標準化を進めて同じ結果が得られるよう改善されてきました。しかし、どんなに検査の標準化を進めても、検査の手法や使用する薬品などが国際基準で統一されていないため、いまだにばらつきが出てしまっているのが現状です。

このような問題があることから、単に検査結果だけを見て栄養状態を判断することは出来ません。


自宅でできる検査キットでは検査項目が少なく、根本原因までは分からない

次に、自宅でできる検査キットの問題点としてあげられるのが、検査項目の少なさです。検査項目が少ないと、体内の栄養状態を正確に把握することは出来ません。

多くの方は、栄養療法を行う際に、先ほどのような血液検査結果を「カットオフ値」に当てはめて、基準値以上であれば栄養が足りている、基準値以下であれば栄養が足りていないなどと判断しているかと思います。

例えば、フェリチンが50と少なければ鉄が足りていない、逆にフェリチンが150と高ければ鉄が足りているといった感じです。また、総タンパクやアルブミン値、BUNが高ければタンパク質が足りていて、これらが逆に少ない場合はタンパク質が不足しているなどです。

ですが、実際にはこれだけで栄養が足りているかどうかを判断するには不十分すぎます。なぜなら、数値は体調や脱水の状態によっても変化するうえ、慢性炎症や病態の有無によっても、特定の値は変化してしまうためです。

例えば「脱水状態」だと通常よりも特定の検査項目の数値が高く見える場合があります。これは、脱水によって血液の濃縮が起こり、腎機能が低下するためです。脱水状態では、次のような検査項目の数値が上昇することが分かっています。

脱水によって上昇する数値
・赤血球数(RBC)
・ヘモグロビン値(Hb)
・アルブミン(Alb)
・総たんぱく(TP)
・ヘマトクリット(Ht)
・尿素窒素(UN)
・尿酸(UA)
・クレアチニン(Cr)

特に、タンパク質不足の状態では脱水が起こりやすくなります。これは、アルブミンなどが体内の水分を保持する働きをしていることから、タンパク質不足によってアルブミンが低下していると、脱水を起こしやすくなるためです。

他にも脱水を起こす原因には多々あり、通常、脱水を起こしているかどうかは、医師が他の血液検査項目や身体的所見、食事や運動などの聞き取りを行いながら総合的に判断を行います。

そのため、このような知識が無い初心者の方が、単に血液検査結果のデータを見て栄養が足りている、足りていないと判断することは、ほぼ間違っているといっても過言ではありません。

それに、フェリチン値は肝臓病などの炎症性疾患や、リウマチなど自己免疫性疾患などの炎症でも上昇することがあります。そのため、フェリチン値が高かったとしても、鉄が足りているとは限りません。

また、AST (GOT)、ALT (GPT)、γ-GTPは脂肪肝などの疾病や薬物、運動、食事などの影響でも上昇することがあり、数値がそこそこある様に見えても、それで栄養が足りていると判断することは出来ません。

総コレステロール、LDLコレステロール 、HDLコレステロール においても同じで、脂質代謝が悪くなっている場合にも数値が足りているように見えることがありますし、中性脂肪の場合では食後10時間以上絶食したかなど検査を行う時間やタイミングによっても変化します。

通常、このような数値の影響に関しては医師が他の血液検査項目や身体的所見、食事や運動などの聞き取りを行いながら総合的に判断を行いますが、自宅でできる検査キットではこのような判断は行われていません。

このことから、自宅でできる血液検査キットでは、オーソモレキュラー療法に使えないどころか、殆ど何の参考にもならないというのが実際にオーソモレキュラー療法に携わっている筆者の見解です。

そもそも、オーソモレキュラー療法の血液検査は、単品の血液検査項目を見て栄養が足りているかどうかを判断しているわけではありません。

血液検査には「関連項目」といって、それに関連する検査項目をセットで検査して初めて意味があります。例えば、貧血であればフェリチンやヘモグロビン以外にも様々あります。主なものとしては、次の通りです。

貧血関連項目

  • 赤血球数 RBC

  • ヘモグロビン HB

  • ヘマトクリット HT

  • 平均赤血球容積 MCV

  • 平均赤血球HB量 MCH

  • 平均赤血球HB濃度 MCHC

  • 網状赤血球 RET

  • 血小板数 PLT

  • 血清鉄 Fe

  • 不飽和鉄結合能 UIBC

  • フェリチン

  • C反応性タンパク CRP

  • GOT(AST)

  • GPT(ALT)

  • γ-GPT

  • 25-OHビタミンD

この他にも、タンパク質関連項目や炎症・免疫関連項目、酵素関連項目、腎・尿関連項目、酸化ストレス関連項目など様々な関連項目も同時にチェックします。決して、単品の項目だけを見て栄養が足りているかどうかを判断することはありません。

では、なぜこのような関連項目まで同時に見る必要があるのかというと、根本原因までしっかり調べてアプローチを行っていく事が大切だからです。

タンパク質や鉄が不足するにも、必ず原因があります。また、数値が高い低いにも必ず原因があり、なぜその数値が高いのか、逆になぜ低くなってしまったのかの根本から理解することが大切です。

特に貧血においては、単に鉄分の摂取量が少ないこと以外にも様々な原因によって貧血となる事があります。貧血だから鉄を摂れば良いというわけではなく、貧血を引き起こした根本原因からアプローチを行っていく事が必要です。

このことから、正しいオーソモレキュラー療法を行うためには、関連項目を含めた専用の血液検査を行う事が大切です。自宅でできる検査キットでは、検査項目が少ない事から何故栄養が不足してしまったのか、その根本原因までは分かりません。特に、単に特定の項目だけを見て栄養が足りているか足りていないかを判断することは無意味です。

血液検査データの読みやオーソモレキュラー療法はそんな単純ではありませんので、くれぐれも自己判断のみで行わないよう注意して下さい。





※この記事は、下記記事から一部を抜粋・改編したものです。記事全文は下記記事をご覧下さい。元記事はこちら↓


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