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糖質制限中に低血糖に陥るワケとは。その糖質制限、間違っていませんか? 低血糖症に対する適切な食事を分子栄養学的観点から解説

近年、糖質の摂りすぎが糖尿病や低血糖症など様々な病気の原因になるとして、糖質制限を行う事が流行っています。糖質制限とは、パンやお米、芋類、お菓子などの糖質摂取を制限することで、健康増進または病態改善をしようという方法です。

しかし、このような糖質制限を行う事が体に良いと言われている反面、糖質制限を行えば行うほど体調が悪くなり、低血糖に陥ってしまう人も増えてきています。低血糖症とは、血糖値が正常値よりも大きく下がってしまうことで、精神的不調や体調不良を引き起こし、最悪の場合は意識障害や死に至る恐ろしい病気です。

健康になるために糖質制限をしているのに、なぜ余計に体調不良や低血糖に陥ってしまうのでしょうか?
今回は、糖質制限中に低血糖症に陥ってしまう理由と、正しい糖質制限、低血糖症の改善方法について分子栄養学的な観点から解説します。

糖質を過剰摂取する問題点と低血糖症との関係

現代では、パンやパスタ、お米やお菓子などの糖質を過剰に摂取する食生活になりやすいことから、これらの摂取しすぎが「機能性低血糖症」や「血糖値スパイク」などを引き起こすとして問題視されるようになってきました。

機能性低血糖症や血糖値スパイクとは、ラーメンやパスタ、うどん、パン、お菓子、ジュースなど、精製された糖や糖質を大量に摂取してしまうことで血糖値が一気に上昇し、その後急降下してしまう状態の事です。この血糖値が急上昇したり急降下したりすることを繰り返してしまうことにより、イライラしたり落ち着かなくなったり、人によってはキレやすくなったり攻撃的になったりと、様々な精神的不調や身体的不調が引き起こされることがあります。

具体的には、空腹時の血糖値は正常値にもかかわらず、お菓子やジュース、炭水化物を摂ることによって血糖値が急激に上昇し始め、血糖値が160を超えるなど高血糖状態になります。

その後、身体は高くなった血中の糖を利用して血糖値を下げるために「インスリン」というホルモンをすい臓から分泌します。この時、インスリンの効きが悪くなっていると、通常以上にインスリンが分泌されてしまいます。すると、今度はインスリンが逆に効き過ぎてしまうことで低血糖に陥ってしまう事があるのです。

例えば、お菓子やジュースなどを甘いものやラーメン、パスタなどの炭水化物を摂ると血糖値が急激に上昇します。その後、身体は血糖値を下げるためにすい臓から大量のインスリンを分泌します。このインスリンが大量に分泌されることによって血糖値が急激に下がり始め、今度はインスリンが効き過ぎることによって血糖値が下がりすぎて低血糖になってしまうというわけです。

この時、低血糖の状態では脳のエネルギー源となる「ブドウ糖」が足りなくなることから、耐えられないほどの眠気が急激に襲ってきたり、甘い物の欲求が異常に強くなったりすることがあります。その他、ダルくなったりやる気が起きなくなったり、最悪の場合には意識を失ったり、命を落としてしまう事もあります。

低血糖症の主な症状

  • 全身の倦怠感、疲れやすい

  • 集中力が無い

  • 眠気が強く、朝起きられない

  • 寒がり、低体温

  • 動悸がする

  • めまいがする

  • 冷や汗をかく

  • 不眠

  • イライラする

  • 頭痛

  • 神経過敏

  • 不安、恐怖感が強くなる

  • 太りやすくなった

そのため、身体は命を守るために全力で血糖値を上げようとします。このときに分泌されるのが副腎皮質から分泌される「アドレナリン」や「ノルアドレナリン」「コルチゾール」などです。これらホルモンは筋肉などに含まれるタンパク質を分解し、タンパク質からブドウ糖を合成するよう働きかけます。(タンパク質からブドウ糖を合成することを糖新生と言います)

そして下がりすぎた血糖値を上昇させるのですが、これらホルモンには同時に交感神経を刺激し、攻撃性を高める作用もあります。

このことから、イライラしたり落ち着かなくなったり、人によってはキレやすくなったり攻撃的になったりと、様々な精神的不調や身体的不調が引き起こされてしまうことがあるのです。

このような、普段の状態では正常の血糖値の範囲内に収まっているのに、食事をすると血糖値が乱高下し、低血糖症に陥ってしまう事を、「血糖値スパイク」や「機能性低血糖症」もしくは「かくれ低血糖症」といいます。

では、このような「血糖値スパイク」や「機能性低血糖症」を予防するためには、どのようすればいいのでしょうか?

まず大前提として行いたいのは、「甘い物の撮りすぎや炭水化物の過剰摂取をしない」事です。お菓子やジュースなど、加工された甘い物には大量の砂糖が含まれています。また、ラーメンやうどん、パスタやパンなどは炭水化物と言われ、消化されると糖分に変わります。

これらを摂りすぎることによって血糖値が急激に上昇する原因となりますので、まずはこれらを摂りすぎないようにしましょう。

血糖値スパイク・かくれ低血糖症対策に必要なこと

  • 甘い物、炭水化物の摂りすぎを控える

  • バランスの良い食生活を心がける

  • よく噛む

  • 食べたら動く運動する習慣を取り入れる

  • インスリンの働きを高める栄養補給をする

  • 必要に応じて回数頻回食を取り入れる

  • 口腔内のケアをする(歯周病など)

具体的には、お菓子やジュースなどの甘いものは極力避け、ラーメンやパン、パスタなどの炭水化物だけでお腹いっぱいにすることは避けるようにしてください。そして、タンパク質や脂質、炭水化物を含めたバランスの良い食事を心がけるようにすることが大切です。

この時、糖質制限のしすぎにはくれぐれも注意して下さい。実は、このような糖質の摂りすぎを気をつけるあまり、逆に糖質制限をし過ぎてしまう人が中にはいます。糖質制限のしすぎはカロリーの不足を招き、逆に低血糖を引き起こしてしまう原因になるので、極端な糖質制限はくれぐれも行わないようにしましょう。

糖質制限のしすぎが低血糖の原因に。過剰な糖質制限は避け、バランスの良い食事を心がけましょう

低血糖症を改善させる上で重要となるのが、極端な糖質制限は行わないことです。上述した血糖値スパイクや隠れ低血糖では糖質や炭水化物の摂りすぎが問題でしたが、だからと言って極端に制限しすぎてしまうことも逆効果となります。

なぜかというと、人は食べた食べ物をエネルギーに変えて体を動かしたり、体温を維持したり、消化吸収をしたりしています。この時、過剰な糖質制限によって摂取カロリーが低くなってしまうと、体内で利用出来る糖やエネルギーが枯渇してしまいます。その結果、低血糖へと陥ってしまうことがあるのです。

そのため、糖質制限を行っている方の栄養アプローチとしては、まず第一に「過剰な糖質制限」行わないようにすることです。

実は、糖質制限を行えば行うほど糖代謝が悪化し、低血糖症が悪化してしまう傾向にあります。これは、糖質制限や食べないダイエット等で体内でブドウ糖が足りなくなってしまったとき(血糖値が下がったとき)は、真っ先に筋肉を壊してブドウ糖を生成し、エネルギーとして使ってしまうためです(糖新生)。

筋肉にはブドウ糖(グリコーゲン)を貯えたりエネルギーとして使ってくれる組織でもあるため、筋肉量が落ちてしまうとブドウ糖(グリコーゲン)を貯えたりエネルギーとして上手く使うことが出来なくなってきます。その場合に引き起こされるのが、前述した「血糖値スパイク」や「かくれ低血糖症」などの低血糖症です。

実は、低血糖症を引き起こす原因の1つに、筋肉量の低下があります。筋肉はブドウ糖を取り込んでエネルギーとして使っている臓器ですので、筋肉量が減ってしまうとそのぶんだけブドウ糖がエネルギーとして使いにくくなり、血糖値が上昇しやすくなったり、血糖値の乱高下を引き起こしたりしやすくなります。

加えて、過剰な糖質制限では、食べる量も噛む量も少なくなるため、消化管の筋肉量低下に繋がります。胃や腸の殆どは筋肉である事から、消化管の筋肉量低下は消化吸収能の低下を招く大きな原因です。この結果、食べ物を上手く消化吸収出来なくなり、さらに低血糖症を深刻化させることに繋がります。

消化吸収能の低下や低血糖症が深刻化した場合、最悪の場合は「甲状腺機能低下症(低T3症候群)」や「SIBO」「リーキーガット症候群」などにも発展する恐れも高いです。また、胃や腸の筋肉が低下すると胃や腸を十分に支えられられなくなり、胃や腸が垂れ下がってしまう「胃下垂」も引き起こしやすくなります。胃下垂は、更に消化吸収能を低下させ、栄養障害を引き起こしやすくなる原因です。

このため、過剰な糖質制限はむしろ身体に大きな悪影響を引き起こしますので絶対に行わないようにして下さい。

それから、野菜たっぷりのヘルシーな食事を行っている方は、貧血やタンパク質不足に注意が必要です。野菜たっぷりのヘルシーな食事では、鉄分やタンパク質が十分に摂取出来ないことから貧血が進行したり、筋肉量が低下したりしてしまう危険性があります。

鉄分は肉や魚などの赤身肉に多く含まれていますが、野菜たっぷりのヘルシーな食事ではこれらを避けてしまうため、十分な量の鉄分を補給することが出来ません。特に女性は毎月の月経によって血液が失われてしまうので、十分な鉄分補給しないと貧血がドンドン進行してしまいます。この貧血も代謝を悪化させるため、太りやすくなったり低血糖症を引き起こしやすくなります。

また、筋肉はタンパク質で出来ているため、肉や魚などのタンパク質の摂取量が不足してしまうと筋肉量の低下にも繋がります。筋肉量の低下は低血糖症と深い関係がありますので、ヘルシーな食事をすればするほど低血糖症に陥ってしまうリスクが高くなります。

ですので、極端な糖質制限やヘルシーな食事は低血糖症や貧血を引き起こす主な原因になりますので、絶対に止めましょう。

過剰な糖質制限を行うことによって引き起こされること

  • 貧血になりやすくなる

  • 甲状腺機能が低下しやすくなる

  • 筋肉量が低下する

  • 太りやすくなる

  • 低血糖症を発症しやすくなる

  • 消化吸収能が低下する、胃下垂になる

  • PMS(月経前症候群)、生理不順など月経に問題が起こる

  • 非アルコール性脂肪肝になりやすくなる

  • 腸内環境が悪くなる、便秘、下痢になる

  • SIBOやリーキーガット症候群などになりやすくなる

極端な糖質制限は行わず、きちんとバランスの良い食事とカロリーの摂取を心がけましょう

このように極端な糖質制限はむしろカロリー不足やタンパク質不足を引き起こし、低血糖症の原因となります。そうならないようにするためにも、炭水化物や脂質、タンパク質などバランスよく食べるように心がけて下さい。

オススメの食事内容としては、和食や地中海料理などがオススメです。和食ではご飯に味噌汁、納豆に卵焼き、焼き鮭など複数種類の食べ物を食べるので、炭水化物に脂質、タンパク質をバランスよく摂る事が出来ます。また、地中海料理も、肉や魚などおかずの種類も多く、炭水化物や脂質、タンパク質をバランスよく摂る事が出来ます。

それから、糖質制限を行っている方は朝食を食べない方も多く、もし朝食を抜いてしまうと低血糖症に陥りやすくなってしまいます。低血糖症を引き起こさないようにするためにも、朝食はしっかり食べるようにして下さい。

この時大切なのは、必要な量のカロリーはしっかり摂るようにすることです。カロリーは身体を動かすために必要なエネルギー源のことで、これが足りなくなると低血糖を引き起こしやすくなります。

特に極端な糖質制限によって低血糖症を引き起こしている場合は、まず第一にバランスの良い食事と適正なカロリーの摂取を行う事が必要になります。その為には、ご自身に必要なカロリー摂取量を把握し、基礎代謝を下回らないように食事を摂取していきましょう。

必要なカロリー量の計算は、次のサイトで計算することが出来ます。

基礎代謝量・1日の必要エネルギー量計算式 基礎代謝量・1日の必要エネルギー量計算サイト

サイト上で、ご自身の体重と身長、年齢と性別を入力し、活動レベルを「低い」「普通」「高い」の中から選択して「計算」ボタンを押せば、一日に必要なエネルギー量と基礎代謝量が分かります。ここで計算したカロリー量を参考に、一日に必要なエネルギー量は必ず摂取するようにして下さい。

例えば、ある人の基礎代謝量が1320kcal/日、一日に必要なエネルギー量が2292kcal/日だとしましょう。

この基礎代謝量は、「体温など生命維持をするために絶対必要なカロリー」のことです。この基礎代謝を下回ると命の危険に晒されてしまいます。基礎代謝量以上のカロリーは生きる上で最低限必要なカロリーですので、絶対に下回らないよう注意してください。

一日の必要エネルギー量は、基礎代謝に加えて体を動かしたり、頭を使ったり、喋ったりするなど日常生活を送る上で必要なカロリーが足された物です。この一日の必要エネルギー量を十分に摂取する事で、筋肉が壊されてエネルギーとして使われてしまうことを防げます。

ですので、ご自身に必要な一日のエネルギー量を計算し、これを下回らないような食事をするようにしましょう。

逆に、この必要エネルギー量よりも多いカロリーを摂取してしまうと肥満に繋がります。多すぎても少なすぎても体には良くありませんので、適切なカロリー摂取量を心がけて下さい。

食事をこまめに摂る回数頻回食を実践する

また、状態によってはバランスの良い食事を心がけると血糖値スパイクや機能性低血糖症に陥ってしまう場合があります。このような場合は、回数頻回食を実践してみて下さい。

回数頻回食とは、1時間や2時間おきに少量の食事を何回も摂取する事です。また、朝昼晩の三食に加えて、間に間食を挟むという方法もあります。こうすることによって食事一回あたりの血糖値の急激な上昇を抑えることができ、血糖値を一定に保てるので低血糖も防ぐことが出来ます。

回数頻回食のコツとしては「吸収が比較的穏やかな糖質を組み合わせる」事と「なるべくこまめに食べる」ことです。こうすることで血糖値の乱高下を防ぎ、更に血糖値を下げないように安定させることが出来ます。

ここで言う吸収が比較的穏やかな糖質とは、お米や芋類などのデンプン質のことです。デンプンは噛むことによって徐々にブドウ糖に分解され、徐々に吸収されていきます。このため、精製された砂糖を補給するよりも、比較的穏やかに血糖値を上昇、維持させることが可能です。

また、いくらお米でも一気に食べると血糖値が急上昇しますので、何回にも分けて食べるようにしましょう。お団子くらいに小さく握ったおにぎりを1時間おきに食べるなど、細かく分けて食べれば、血糖値をなるべく一定以上に保つことが可能になります。

それから、お米などのデンプン質は油でコーティングすると急激な血糖値の上昇を緩やかにしてくれます。具体的には、チャーハンやピラフなど、お米を油で炒めるものがこれにあたります。

これらも血糖値スパイクや低血糖の予防としてはそれなりに活用出来ますので、吸収の早い糖質と吸収の遅い糖質を組み合わせてなるべく回数頻回を行い、低血糖にならないよう工夫してみて下さい。

そもそも何故血糖コントロールに問題が起こる? 低血糖症と関連のある疾病

とは言え、単にバランスの良い食事にするだけでは機能性低血糖症を始めとした低血糖症を改善させることは難しいです。また、何の検査もせずにいきなり食事改善から始めるのは危険です。

実は、低血糖症の原因にはピロリ菌の感染や腸内環境の悪化などの疾病が関係している場合があり、例えばピロリ菌に感染していると胃がんのリスクや糖尿病・低血糖症、貧血のリスクが上昇すると言われています。これは、ピロリ菌の出す毒素が胃粘膜にダメージを与え、胃炎を起こしてしまうためです。

この胃炎は慢性的な炎症を引き起こし、生体内の分子の乱れ引き起こします。加えて胃粘膜が炎症によってダメージを受けてしまうことで胃腸機能が低下し、食べ物の消化吸収能力が低下して生体内の分子の乱れに繋がってしまいます。

特に慢性胃炎による胃腸機能低下では、タンパク質の消化不良やビタミンB12・葉酸、鉄分などの吸収不全を引き起こしてしまいます。タンパク質をしっかり消化するためには十分な胃酸の分泌が必要ですし、ビタミンB12や葉酸を吸収するためには胃から分泌される内因子が必要です。

このタンパク質不足や鉄不足、ビタミンB12や葉酸不足に陥っていると、正常な血液を作るための栄養が足りなくなり、鉄欠乏性貧血や悪性貧血などを引き起こす原因になってしまうというわけです。

ですので、オーソモレキュラー療法で栄養補給を行う際は、ピロリ菌に感染していないかなどの検査を行い、必要に応じて治療を行う事も必要です。このような感染症などの病態にはサプリメントで対処出来ませんので、西洋医学的な治療が必要になります。

また、低血糖症を引き起こす1つの原因として挙げられるものに「貧血」があります。貧血にはさまざまな種類がありますが、その中でも特に注意したいのが「鉄欠乏性貧血」です。

鉄欠乏性貧血とは、その名の通り鉄の摂取量が少ない場合や不足している場合に起こる貧血のことで、全体の貧血原因の約7割を占めていると言われています。

この鉄欠乏性貧血は特に女性と子供に多く、理由としては女性の場合は毎月の月経によって定期的に出血し、血液と共に鉄分が失われてしまうためです。加えて、妊娠出産によって鉄の需要と消費が多くなるのも女性に貧血が多い理由です。他にも、子宮筋腫、過多月経など何かしらの疾病や病気、怪我によって出血量が多くなった場合や、先ほど挙げたピロリ菌感染症のように栄養の消化吸収に問題が発生した場合も鉄欠乏性貧血となります。

また、ダイエットや健康志向などによる鉄分の摂取不足に加え、現代の食生活で摂取量が多くなったコーヒーや紅茶、レトルトやインスタント食品の摂りすぎも関係しています。 これらは「タンニン」や「リン酸」などが多く含まれており、これらの成分は鉄分の吸収を阻害してしまいます。そのため、余計に鉄欠乏性貧血に陥りやすくなってしまっているのです。

鉄欠乏性貧血に陥る原因(婦人科疾患など疾病を除く)

  • 肉類の摂取量低下、菜食主義

  • コーヒーや紅茶の摂りすぎ(タンニンの影響)

  • レトルトやインスタント食品の摂りすぎ(リン酸の影響)

  • タンパク質不足

  • 胃の消化能力低下

  • ビタミンCやビタミンB群、亜鉛など造血に必要な栄養素の不足

では、具体的に貧血と低血糖症にはどのような関係があるのでしょうか? 1つ言えることとして、貧血があると低血糖症になりやすくなるという傾向があります。その理由は、貧血の状態だと身体が作り出せるエネルギー生成量が低下してしまうためです。

貧血は単に血が足りないだけと思われがちですが、それだけではありません。血液や鉄分は体内の細胞に酸素や栄養を届けたり、脳の神経伝達物質を合成する材料としても使われています。そのため、貧血ではその分だけ全身に酸素や栄養を運ぶ能力が低下し、糖をエネルギーとして利用する能力が低下してしまいます。

また、貧血では脳の神経伝達物質の合成量が低下することから、自律神経の乱れやホルモンバランスの乱れも引き起こす原因です。この自律神経の乱れが引き起こされると、身体は強いストレスを受けて血糖値が乱れやすくなり、正常な維持やコントロールが出来なくなります。

このことから、貧血を抱えていると低血糖症を引き起こしやすくなります。このような場合、低血糖症を改善させるためには鉄欠乏性貧血を含めた疾病を改善させることが第一です。特に栄養鉄欠乏性貧血は単に鉄分の摂取量が少ないこと以外にも、タンパク質不足などの消化吸収能の低下や、ピロリ菌感染症による栄養障害消化管などからによる出血、婦人科疾患による出血量の増加などの疾病が関係している場合があります。

これら疾病が合った場合は適切に治療を行い、鉄分を始めとした栄養不足や栄養欠損を改善することが出来れば、低血糖症も同時に改善出来る可能性があります。

それから、機能性低血糖症と切っても切り離せないのが、「肥満」です。現代は飽食の時代と言われるように、食べたいものを食べたいだけ、いつでもどこでも食べられるようになりました。また、交通手段の発展による運動不足やお酒の飲み過ぎなど、あまり動かなくても嗜好品が楽しめる時代になっています。その結果、カロリーや糖質の摂り過ぎを始めとした肥満に繋がる大きな原因となりました。

この肥満が、実は生活習慣病を始めとした二型糖尿病や、低血糖症を引き起こす原因と言われています。肥満とは、いわゆる体脂肪が身体につきすぎてしまった状態のことです。

体脂肪自体は飢餓から命を守るために備えられた身体の機能ですが、この体脂肪がつきすぎることによって炎症が発生する原因となります。そして、この炎症が慢性的に続くことによって、インスリンが効きにくくなり糖尿病や低血糖症に繋がってしまうのです。

具体的な肥満への流れとしては、身体には脂肪を蓄える「脂肪細胞」と呼ばれる細胞があり、過剰な糖質摂取や高カロリー食、運動不足などによってこの脂肪細胞が徐々に肥大化していきます。この肥大化した脂肪細胞は一定の大きさになるとそれ以上の大きさになる事は出来ず、細胞分裂することで増加します。この一連のサイクルが進むことで肥満が進んでいきます。

ただ、この脂肪細胞自体は悪者ではありません。脂肪細胞には炎症を抑えるための生理活性物質や炎症を促進させる生理活性物質等を分泌しています。しかし、脂肪細胞があまりにも増えすぎてしまった状態だと、炎症を抑えるための生理活性物質の分泌が低下し、炎症を亢進させる生理活性物質の分泌が亢進します。すると、結果として慢性炎症を引き起こしてしまうのです。

この慢性炎症が引き起こされると脂肪細胞が弱ったり死んでしまったりしてしまいます。すると、その脂肪細胞からDNAの断片が血管中に離脱し、これを異物と捉えた免疫細胞の一種、マクロファージが異物を除去するために活性化します。このマクロファージが更に炎症を起こすホルモンを放出することで、インスリンの機能が低下し、インスリン抵抗性が高まってしまうことが分かってきたのです。

ですので、肥満と糖尿病・低血糖症の関係は切っても切り離せません。基本的には、肥満が進行すればするほど慢性炎症が発生し、インスリン抵抗性がドンドン進んでしまいます。糖尿病や低血糖症を抱えている方の中には、体重増加やお腹のポッコリが気になっている方は多いのではないでしょうか? もしかすると、あなたの糖尿病や低血糖症も、この肥満が原因になっているかもしれません。

ただし、糖尿病や低血糖症を抱えている方の中には「太っているようには全く見えない」ような人でも糖尿病や低血糖症になってしまっている方がいます。これは、見かけでは太っていないように見えても、実は内臓や肝臓などに脂肪がベッタリ付いている「隠れ肥満」になっている可能性があります。

この隠れ肥満の状態になってしまっている方も、実は肥満の方と同じようにインスリンの機能が低下し、糖尿病や低血糖症を発症してしまう原因になっている可能性があるのです。

近年、日本人に多いと言われているのが、「異所性脂肪」と呼ばれる脂肪です。異所性脂肪とは、本来脂肪が付くはずが無い肝臓や筋肉、心臓やすい臓などに脂肪が溜まってしまう状態のことです。

最近の日本人の糖尿病患者は、肥満指数として使われるBMI値が23kg/㎡程度であり、肥満とされているBMI値25kg/㎡を超えていなくても、糖尿病を発症しやすいことが分かってきています。

この異所性脂肪の最も多いものとしては、「脂肪肝」が挙げられます。脂肪肝とは、肝臓の周りに脂肪がベッタリくっついてしまった状態のことです。この脂肪肝がある場合は、脂肪肝が無い人と比べてインスリン抵抗性が高いことが分かり、糖尿病や低血糖症との関連が言われるようになりました。

順天堂大学の研究グループが正常体型に見える人々を調べたところ、内臓脂肪が無くても脂肪肝があるとインスリン抵抗性が高く、逆に内臓脂肪があっても脂肪肝が無ければインスリン抵抗性が低いという研究結果が出ています。

このため、体重やBMI値が正常範囲だったとしても、異所性脂肪の状態によっては糖尿病のリスクが高まってしまうのです。

従来、この脂肪肝にかかる人と言えば、お酒をよく飲む人がかかるという認識でした。しかし、近年ではお酒を全く飲まない方でも脂肪肝になったり糖尿病にかかってしまう方も増えてきています。この背景には、炭水化物や脂質過多など食生活の悪化、栄養状態の悪化、運動量の低下が関係しています。

肝臓は沈黙の臓器と呼ばれ、脂肪が溜まっていたり機能が落ちたりしていても殆ど自覚症状がありません。この見えない脂肪肝を放置することで糖代謝が徐々に悪化し、低血糖症の発症や糖尿病の発症に繋がってしまうのです。

このように、低血糖症には感染症や慢性炎症、疾病など様々な原因が関係しています。必要に応じてこれらの治療を行う事に加え、生活習慣の改善も必要です。低血糖症は二型糖尿病の前段階とも言われ、生活習慣病という面も強い病気でもあります。そのため、運動不足や睡眠不足、食生活の見直しや栄養状態の改善といった生活習慣の改善も必要です。

ですので、バランスの良い食事をすることも大切ですが、まずは低血糖症の原因となる疾病が無いかどうかを検査し、必要であれば適切な治療を行うようにしましょう。例えば、次の疾病には低血糖症と関連があると考えられています。

低血糖症との関連が考えられる疾病

  • 糖尿病(治療薬による低血糖は除く)

  • 貧血

  • 副腎疲労・慢性疲労症候群

  • 副腎不全

  • 脂肪肝など肝機能障害

  • 甲状腺機能障害

  • ピロリ菌感染、胃腸障害

  • SIBO

  • リーキーガット症候群

  • 腸カンジダ症

  • 口腔内環境の悪化

  • 更年期障害、自律神経失調症

  • 肥満、痩せすぎ

これら疾病は、糖の消化吸収や糖代謝、血糖の正常な維持に必要な臓器機能の低下を引き起こすことから、これらの疾病を抱えている方は低血糖症を発症する可能性が高くなります。

もしかするとあなたの状態にも心当たりありませんか? もし当てはまる疾病を抱えている方は、これら疾病を改善させることが最優先です。もし、これらを改善させないまま単に糖質制限のみを行ってしまうと、むしろ低血糖症が酷くなってしまう可能性があります。

そのため、食事だけで血糖値をコントロールしようとするのでは無く、まずは検査によって疾病が無いかどうかを調べ、何故低血糖が起きてしまうかの原因をきちんと調べることから始めましょう。

この時受ける検査は、体全体の健康状態や栄養状態を調べることが出来るオーソモレキュラー療法の検査がオススメです。

オーソモレキュラー療法では、先ほど挙げたピロリ菌の感染症などの検査や「必要な治療」に加え、「生活習慣の改善」や貧血などの栄養欠損を改善するための「至適量の栄養補給」を同時進行で行っていきます。なかなか治らない低血糖症で悩んでいる方は、低血糖症の根本原因を調べるためにも是非オーソモレキュラー療法を受けてみて下さい。

低血糖症を改善させるためには、ご自身の状態をしっかり知ることが重要です。まずはオーソモレキュラー療法の検査を受けましょう

ここまで、糖質制限中に低血糖を引き起こしてしまう原因と、低血糖症の原因や適切な食事内容について解説してきました。

低血糖症は「単に血糖が下がってしまう病気」だと思われがちですが、その原因には様々な疾患が関わっています。そして、低血糖症の改善にはこの根本原因から改善していかなければ意味がありません。

上述した疾患等はまだまだほんの一部で、低血糖症を引き起こす原因は他にも沢山あります。また、人によって複数の原因が複雑に絡み合っていることも多く、検査もなしに適切な栄養アプローチを行うのは困難です。

例えば、「甲状腺機能低下症」と「副腎疲労」が組み合わさって低血糖症になっている方と、「二型糖尿病によるインスリン抵抗性」と「脂肪肝」によって低血糖が起きている方とのアプローチは全く違います。また、先ほど紹介した原因以外にも、「胃の状態が悪い方」や「貧血」があるか、「肥満かどうか」や「遺伝的な問題」があるかなどの問題も関係してきます。

このように低血糖症には人によって様々な原因があり、個人個人バラバラに組み合わさって引き起こされています。同じ低血糖症に見えても対処法は全く異なりますので、これら原因となる要因を検査で洗い出し、その人に合ったアプローチを行っていく事が何よりも重要です。

その為には、栄養状態や疾病の状態を知ることが出来る「オーソモレキュラー療法」の検査を受けてみましょう。

オーソモレキュラー療法とは、オーソモレキュラー療法に対応するクリニックで専用の採血や検査を行い、その結果を基にサプリメントを用いてアプローチしていく療法です。オーソモレキュラー療法では主に68項目にも及ぶ血液検査が受けられるほか、副腎や甲状腺の検査、糖尿病や酸化ストレスなどの検査を必要に応じて組み合わせて行う事が出来ます。

これら複数の検査を組み合わせることによってより詳しく状態を知ることができ、あなたの低血糖症の根本原因がどこから来ているのかが分かります。

また、検査結果はレポートにまとめられ、どんな栄養素をどれくらい摂ったら良いかの詳しいアドバイスも受けられます。

このような情報を元に、あなたに合わせたアプローチを行っていきましょう。根本原因からきちんと対処していくことが出来れば、低血糖症も改善出来る可能性があります。

同じ低血糖症でも人によって全くアプローチが違いますので、ご自身に必要なアプローチについては、是非オーソモレキュラー療法の検査を受けてみて下さい。

低血糖の状態を調べるためにも、持続グルコース濃度測定検査を同時に受けるのがオススメ

上述したオーソモレキュラー療法の検査に加えて、低血糖症を抱えている方には是非受けて頂きたい検査があります。それが、「持続グルコース濃度測定検査」です。

持続グルコース濃度測定検査とは、針の付いたセンサーを装着し、そこから血中のブドウ糖濃度(グルコース)を継続的に測定していく検査です。測定されたグルコース濃度はグラフ化され、どのような時に高血糖や低血糖になっているのかの波が分かります。

なぜこのような検査が必要なのかというと、低血糖の状態や血糖値の状態は人によって様々な状態があるためです。

例えば、低血糖と言っても「夜間低血糖」がある方や「血糖値スパイク」を引き起こしている方、何を食べても血糖値が上がらない「無反応低血糖症」の方もいます。このように低血糖症と言っても様々な種類や状態があるため、オーソモレキュラー療法の検査とあわせて血糖値の状態も調べておくことが重要です。

この検査を受けることによって、ご自身にどの時間帯や食べ物で血糖値の乱高下が起きているのかや、どのような低血糖が起こっているのかが分かります。

例えば、

空腹時血糖が80〜70mg/dlを下回る時間が長かったら低血糖症の可能性あり。
食後血糖値が160mg/dlを超えるようなら血糖値スパイクの疑いあり。
空腹時血糖が130mg/dlを超えているようなら糖尿病の疑いあり。
夜間や朝方など特定の時間に低血糖が起こる場合は、夜間低血糖の疑いあり。
食後血糖値が60~80mg/dl前後から上がらない場合は、血糖値を上げられない無反応性低血糖症の疑いあり

といったように、読み取ったグラフや血糖値の傾向からどのような低血糖や血糖コントロールの異常があるのかが分かってきます。

最初にお伝えしたように、低血糖には食べ物を食べて血糖値が乱高下する「血糖値スパイク」もあれば、何を食べても血糖値が上がらない「無反応性低血糖」という低血糖の状態もあります。

このような低血糖の種類や状態によってそれぞれ原因や対処法が異なってきますので、ご自身の原因や対処法を知るためにも是非持続グルコース濃度測定検査を受けてみて下さい。

持続グルコース濃度測定検査の受け方

持続グルコース濃度測定の受け方についてですが、前述したオーソモレキュラー療法と同時に受ける事が可能です。

検査自体はクリニックが提供していますが、わざわざ病院まで検査を受けに行く必要はありません。測定に必要な測定器とセンサーは申し込み後に宅配で送られてくるため、ご自宅にて測定可能です。

測定した結果はクリニックに自動的に送られ、検査終了後は医師の解析や解説もセットで提供されています。解説は電話で受ける事が出来ますので、ご自宅に居ながらより詳しく状態を知ることが出来ます。(当方の推奨するオーソモレキュラー療法の場合)

ですので、低血糖症でお悩みの方はオーソモレキュラー療法の検査とあわせて持続グルコース濃度測定検査も受けてみて下さい。

また、血糖値の測定自体は病院など医療を通さなくてもご自身で必要な機材を揃えて頂ければ測定可能です。
「リブレ」と呼ばれるセンサーと読み取り装置を準備し、ご自身で装着すればお好きなタイミングで血糖値をモニタリングすることが可能になります。

持続グルコース濃度測定に用いるリブレのセンサーと読み取り装置については、楽天やアマゾンでも販売されていますので興味ある方はご自身で揃えてみて下さい。

ただし、ご自身で行う場合は医師からの解析はありません。測定結果は、全てご自身の判断の下で利用して頂くことになります。

持続グルコース濃度測定検査は、血糖値の上がり下がりを単に見ているだけで無く、その根本にある糖代謝異常の原因を探る検査になります。ご自身で測定しても、そのデータを活用出来なければ全く意味がありません。データの読み方が分からない方は、きちんと医療を通して医師に解析して貰いましょう

糖質制限中に低血糖に陥るワケとは。その糖質制限、間違っていませんか? 低血糖症に対する適切な食事を分子栄養学的観点から解説まとめ

以上が、糖質制限中に低血糖症に陥ってしまう理由と、低血糖症の原因や適切な食事内容についてでした。

低血糖症は、血糖値が下がりすぎてしまう事が原因と言われていますが、その奥深くにはもっと複雑な原因が関係しています。そのため、何か特定のサプリメントを摂ったり、食事改善をしたりしたとしても、それだけで低血糖症が改善出来るわけではありません。

低血糖症の発症には様々な疾患が関わっており、その疾患を改善していくことも必要です。人の身体には、元々糖質などの栄養素や血糖値を上手く利用したりコントロールしたりする機能が備わっています。低血糖症は、この機能が正常に働けなくなってしまったことが一番の問題です。この機能を元に戻すことが出来れば、機能性低血糖症や無反応性低血糖症も改善出来る可能性が高いです。

是非、このあたりの原因をしっかり調べて適切なアプローチを行っていきましょう。オーソモレキュラー療法では「至適量の栄養補給」と「生活習慣の改善」「必要な治療」をセットで行っていきます。オーソモレキュラー療法をしっかり受ければ、低血糖症の原因となっている疾病の早期発見や、根本原因から低血糖症を解決する際の大きな手助けになるはずです。

オーソモレキュラー療法や持続グルコース濃度測定検査を受けたことが無い方は、この機会に是非オーソモレキュラー療法を受けてみて下さい。



この記事は、下記記事から一部を抜粋・改編したものです。記事全文は下記記事をご覧下さい。元記事はこちら↓


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