#5 分子整合栄養医学と医学の違いとは? それぞれの役割と違いについて解説
分子栄養学では、なぜ大量の栄養素をサプリメントで摂取するのか? ドーズレスポンスと至適量の栄養補給を行う重要性②
分子栄養学の基本②『個人差に応じた摂取量の考慮』
続いて、個人差に応じた摂取量の考慮についてです。これは先ほど解説した消化吸収能力の考慮や、病態、薬の考慮と同じように感じるかも知れませんが、全く異なるものです。
例えば、同じ病気を抱える方が、同じ消化吸収能力だったとしても、その人の年齢や性別、酵素活性や生活習慣、目指している目的などによっても必要な栄養素の量は変わってきます。
身体を動かすことが多い人も居れば、身体をあまり動かさない人も居ます。ストレスが多い人もいれば、ストレスなく過ごしている人もいます。当然、身体を動かす量が多い人や、ストレスが多い人ほど、より多くの栄養素の摂取が必要です。
また、摂取した栄養素(ビタミンなどの補酵素)は体内で酵素と結びついて初めて働けるようになります。この酵素と栄養素(ビタミンなどの補酵素)が結合するために必要な結合力や、結合出来る量(親和性)は、人によって異なっています。
そのため、補酵素と酵素の親和性の個体差からビタミンの必要量にも大きな個体差が生じます。その差は、最大1:20にも及ぶとされ、ちょっと栄養補給すれば足りる人も居れば、摂っても摂っても全く足りない人も居るのです。
このような、個人差にあわせた最適な栄養素の量を摂取することを「至適量」と言います。一般的な栄養学や食事療法ではこのような個人差に応じた栄養素の摂取は考慮しませんが、分子栄養学では至適量の栄養摂取量をアドバイスしています。
また、人によっては「もっと筋肉を付けたい」「もっと肌が綺麗になりたい」などの要望があったり、目標を掲げていたりする方もいます。このような個人的な要望や目標なども考慮し、最適な栄養摂取量をアドバイスすることも分子栄養学の特徴です。
この個人差や至適量などを考慮するかどうかが、一般の栄養学や食事療法と分子栄養学の大きな違いになります。
使用するサプリメントの質に注意!サプリメントにおいて重要なのは消化と吸収です。
分子栄養学の実践で用いるサプリメントで、最も気をつけたいのが、サプリメントの質です。
サプリメントには、上述した「活性型」と「前駆体」の違いに加えて、その栄養素がきちんと消化吸収されるか?ということも重要になります。
例えば、市販されているサプリメントの中には、胃や腸で全く溶けないものがある事が報告されています。胃や腸で溶けないものは、身体の中で不要と見なされ、そのまま便に排泄されてしまいます。
具体的な例で言うと、独立行政法人国民生活センターでは、『錠剤・カプセル状の健康食品は、外見上医薬品と誤認されることが多いものの、医薬品並みの品質管理がなされているものではないとされています。また、成分が一定量に調整されていない商品や、消化管の中で確実に溶けて、吸収されるように作られていないと思われる商品があるともいわれています。』と解説しています。
そして、独立行政法人国民生活センターが市販されている商品を実際に購入して崩壊性を調べた結果、なんと100銘柄中42銘柄が、医薬品に定められた規定時間内に崩壊しなかったという結果になりました。
また、既に利用中の健康食品の崩壊性を調べた結果もあり、テスト対象とした合計105商品のうち、医薬品に定められた規定時間内に崩壊しなかったものが半数あったとの結果にもなっています。
このことから、市販されているサプリメントのおよそ半数は、医薬品に定められた規定時間内にきちんと崩壊していないという事実があります。当たり前ですが、どんなに良い原材料を使った高濃度の有効成分が含まれているサプリメントでも、それが胃や腸できちんと崩壊しなければ全く意味がありません。
そうなると、栄養素としての効果は期待できません。栄養素は消化・吸収されて初めて意味があるので、きちんと消化・吸収されることが実証されているサプリメントを選ぶことが非常に重要です。
また、人によっては胃酸の分泌量が少ない、胆汁酸の分泌量が少ないなど消化吸収に問題を抱えている場合があります。胆汁は、水と馴染まない脂質や脂溶性のビタミンを水に馴染みやすく(乳化)して血管内に吸収出来るようにする働きをしています。
もし、胃酸の分泌量が少なかったり、胆汁酸の分泌量が少ない場合は、タンパク質が上手く消化できなかったり、脂質や脂溶性のビタミンが上手く吸収出来なくなってしまいます。
このような場合は、予めタンパク質が低分子化されているプロテインを選んだり、胆汁酸の分泌量が少なくても吸収出来るようにミセル(自己乳化型)加工されているものを選ぶことも重要です。
それから、サプリメントによっては栄養素よりも人工甘味料を始めとした添加物のほうが多いものや、栄養素が既に酸化・劣化して効力を失っている物、自然界に存在しない化学構造に加工された物、日本では承認されていない医薬品成分が混入しているものなどもあります。
特に海外サプリメントの中には、日本で承認されていない医薬品成分が混入している事件が相次ぎ、厚生労働省も注意を呼びかけています。このような混入成分は、パッケージの成分表示には記載されていないことから、成分表示だけを見て混入しているかどうかを判断することは困難です。
例えば、2017年には「ANAVITE」という海外製サプリメントに、ドーピングで禁止薬物であるタンパク質同化ステロイドが検出された事件が発生しています。
この他にも、愛知県衛生研究所が平成18年4月1日から平成19年3月31日までの一年間で、国内で販売された健康食品の成分を調べた結果、66のサプリメントから医薬品成分が検出されたとの結果が出ました。
この情報からも分かるように、国内外問わずサプリメントに薬品成分が混入している事例が相次いでいます。基本的にサプリメントには成分をすべて表示する義務がないため、パッケージの栄養成分表示を見ても薬品成分が混入しているかどうかは分かりません。
サプリメントは薬のような見た目をしているので「どれも一緒だ」と思われる方が多いのですが、サプリメントの善し悪しは見た目や味、値段やパッケージの表示成分を見ただけでは判断することが出来ないのです。
また、海外サプリメントの中には自然界に存在しない化学構造のサプリメントも販売されています。特に流行っているものとしては、メガビタミン健康法でよく使われている「アミノ酸キレート鉄」です。
アミノ酸キレート鉄とは、鉄分の吸収を高めるために、鉄分子をグリシンと呼ばれるアミノ酸と結合(キレート加工)された天然界には存在しない成分の事です。
アミノ酸キレート鉄は、その吸収力の高さから一部の人達から絶大な人気を誇っています。しかし、吸収力は高いものの、その利用効率は悪く、場合によってはフェリチン値が異常値まで上昇する、体調が悪くなるなどして病院に駆け込む事例も散見されています。
フェリチン値は炎症でも上昇することから、炎症によってフェリチン値が上昇しているものと考えられます。もし、このような状態のままサプリメントを摂取し続けた場合、むしろ肝臓へのダメージや、生体内の分子の乱れを引き起こしてしまう可能性が高いです。
ですので、分子栄養学を実践するときは必ず血液検査を受け、市販サプリや海外サプリで代用せず、必ず分子栄養学実践専用に設計・製造されたサプリメントでアプローチするようにしましょう。
※この記事は、下記記事から一部を抜粋・改編したものです。記事全文は下記記事をご覧下さい。元記事はこちら↓
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