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#8 分子栄養学とは? 分子栄養学の基本をわかりやすく解説!

分子栄養学基礎⑥-2 身体本来の機能を取り戻すには、運動・栄養・休養の3つのバランスを取ることが必要。そして、その目的のために必要な栄養を摂るという考え方が重要です

分子栄養学では、運動・栄養・休養の3つの目的のために必要な栄養を摂るという考え方が重要です

では、どのようにすれば、サルコペニア肥満やメタボリックシンドローム、ロコモティブシンドロームなどの生活習慣病を予防、改善できるのでしょうか?

このような生活習慣病を予防、改善するためには、やはり運動して筋肉量を増やしていくことが必要になります。年齢を重ねると筋肉は付きづらくはなっていきますが、いくつになっても筋肉を増やす事は可能です。

ただ、運動するときは、同時に筋肉の材料となるタンパク質を十分に摂取する事が重要です。もし、十分な栄養を補給しないまま運動してしまうと、むしろ筋肉量を減らしてしまう可能性があります。

例えば、75歳以上の女性39名に軽い運動とアミノ酸(タンパク質が分解されて消化吸収しやすくなったもの)の栄養補給を行ってもらったところ、脚部筋量が有意に増加する結果となりました。また、運動せずアミノ酸だけを摂取した38名のグループでも、筋肉量が若干増加する結果になっています。

しかし、アミノ酸の偽薬を用いたプラセボ群では、むしろ筋肉量が減少するという結果になりました。このことから、筋肉量を増やすためには第一に栄養補給が重要です。この栄養補給と運動を組み合わせることが、筋肉量を増やす上で最も効果的です。

ちなみに、運動せずに栄養補給だけを行った場合でも筋肉量は僅かに増加しますが、それはあくまで日常生活で必要とされる程度の筋肉量か、もしくは筋肉量をなるべく落とさないようにする程度です。栄養補給を行っているだけで、筋肉ムキムキになっていくことはありません。

特に現代社会の生活様式では全体的に活動量が低下しているため、日常生活における活動だけで、病気の予防や代謝を整えるほどの筋肉量を維持、増加させる事はほぼ不可能です。やはり十分な筋肉量を増やす、維持するためにも、運動する習慣は必ず取り入れるようにしましょう。

それから、運動した後に筋肉を修復したり増やしたりするためには、質の良い睡眠を取ることも必要です。身体の修復は、夜寝ている間に行われています。この睡眠の質が悪かったり、睡眠不足の状態では、身体の修復が十分に行われません。このような場合は、むしろ筋肉量が低下していく原因になります。(体タンパク異化亢進)

このため、質の良い睡眠がとれるようにも心がけていきましょう。よい睡眠を取るためには、体内時計を司っているセロトニンやメラトニンを整えたり、副交感神経や交感神経など自律神経を整える事が重要です。これらも栄養から必要な物質が作られていることから、栄養も必要です。

例えば、貧血の状態は不眠や睡眠の質が悪化するなど様々な不定愁訴を引き起こす原因になります。この記事の途中でも解説したように、鉄分はセロトニンなど脳の神経伝達物質の合成に必要なほか、自律神経の調節にも関係しています。貧血を改善する事は、よい睡眠を取るための第一歩です。

つまり、病気を予防したり、健康を維持するためには、運動・栄養・休養の3つのバランスを取ることが必要であり、その目的のために必要な栄養素を摂取するという考えが重要になります。

分子栄養学における栄養アプローチは、この3つの目的のために栄養素を摂取する事であって、決して栄養素だけで病気を治すといった療法ではありません。この部分の認識は、分子栄養学で特に間違われやすい事の1つです。

例えば、「糖尿病に効果がある栄養素を摂取する」のではなく、「糖代謝を改善させるために必要な筋肉をつける、運動するために必要な栄養素を摂る」事が正解です。

他にも、「ガンに効く栄養素を摂取する」のではなく、「ガンの発症原因となる生活習慣や、肥満を改善させるための運動に必要な栄養素を摂る」といった感じです。

先ほども解説したように、病気の殆どは生活習慣が大きく関係しています。生活習慣の改善無しに、生活習慣病の改善はあり得ません。分子栄養学は、これら3つの目的をサポートするためのものです。何か特定の栄養素を摂取しただけで病態改善が得られるわけではない点には十分理解しておきましょう。


分子栄養学を実践する上で重要な考え方

  • 痩せる栄養素は何ですか?
    基礎代謝を上げるために運動して筋肉を付ける。そのために必要な栄養を摂る◎

  • 糖尿病に効く栄養素はなんですか?
    糖代謝改善に運動と筋肉量アップが必要。そのために必要な栄養素を摂る◎

  • ガンに効く栄養素は何ですか?
    ガンの予防、改善にも運動と筋肉量アップが必要。そのために必要な栄養素を摂る◎

  • 眠れるようになる栄養素を教えてください
    質の良い睡眠には、自律神経のバランスを整える、運動することが必要。そのために必要な栄養素を摂る◎


分子栄養学では、栄養素を対処療法のように用いるのではなく、病気を予防したり、健康を維持するために必要な運動・栄養・休養の3つのバランスを整えるために必要な栄養素を摂取するという考え方が重要です。

もし、このような考え方をしっかりと理解していない場合、分子栄養学による栄養アプローチは明らかに間違った方向に進んでしまいます。


特に多いのが、分子栄養学を応用したガン治療として行われている、高濃度ビタミンC点滴の間違った認識です。

高濃度ビタミンC点滴とは、高濃度のビタミンCを点滴することで、血中ビタミンC濃度を飛躍的に高める方法です。高濃度のビタミンCには、正常な細胞に影響を与えず、がん細胞のみ特異的に攻撃するという抗がん効果があると言われています。

この仕組みとしては、高濃度のビタミンCを点滴することによって血液中に大量の過酸化水素が発生します。通常の細胞は過酸化水素を中和する「カタラーゼ」という酵素を出して守ることが出来ますが、がん細胞はこの「カタラーゼ」がないため、過酸化水素を中和出来ずに死んでしまいます。

このことから、高濃度ビタミンC点滴でガンが治るという認識がひろまり、高濃度ビタミンC点滴を受ける方が増えてきました。

しかし、ガン治療において高濃度ビタミンC点滴だけを行ってもほとんど効果は期待出来ません。なぜなら、ガンの発病には生活習慣も関係しています。この元を絶たない限り、ガン細胞はずっと増え続けて「モグラ叩き」の状態になってしまうからです。

そもそも、高濃度ビタミンC点滴(IVC)の分子栄養学の位置づけでは、「病態改善のために更に的を絞って追加するべき栄養素」の1つです。この手前には、基本的な栄養素となるタンパク質やビタミン、ミネラルなどがあり、まずはこれらの栄養欠損の改善と、生活習慣の見直しが重要です。

例えば、閉経後の肥満女性は、特に乳がんのリスクが高いと言われています。これは、肥大した脂肪組織が女性ホルモンであるエストロゲンの供給源になる事が影響していると考えられているためです。この肥満の原因は様々ありますが、多くはこの記事でも解説したように、生活習慣を原因としたサルコペニア肥満やメタボリックシンドロームなども関係していると考えられます。

そして、乳がんの予防や、肥満、メタボリックシンドロームを改善させるためには、運動や栄養補給が欠かせません。筋肉を付けたり代謝を上げるためには、材料となるタンパク質やビタミン、ミネラルが必要です。

また、高濃度ビタミンC点滴を行う場合は、同時に口腔からも十分な量のビタミンCをこまめに補給して血中濃度を維持する必要があります。ビタミンCは水溶性ビタミンであることから、代謝されたビタミンCは数時間で尿から排泄されてしまいます。この排泄分を補うためにも、追加でビタミンCを口腔摂取していく事が重要です。

しかし、多くの方はこのような基本となる運動や栄養補給、生活習慣の改善を行わないまま、単に高濃度ビタミンC点滴だけを行ってしまいます。これではすぐにビタミンCの血中濃度が低下してしまうことに加え、ガンの発生源となる肥満や生活習慣の改善など「元」を絶っていないことから、最終的にはがん細胞が増殖する結果となってしまうのです。

つまり、ガン治療で高濃度ビタミンC点滴を用いるにしても、生活習慣の改善やその目的を行うために必要な栄養素を摂取するなど、分子栄養学の基礎的な部分も同時に行う事が必要です。いくら高濃度ビタミンC点滴に抗がん効果があるとしても、ただ単に高濃度のビタミンCを点滴で投与しているだけでは、身体本来の機能を取り戻すことは出来ません。

分子栄養学は、栄養素における体内での働きを理解し、至適量の栄養素を補給することで身体本来の機能を取り戻す療法です。何か特定の栄養素を摂取しただけで病態改善が得られるような療法ではありませんのでご注意下さい。



※この記事は、下記記事から一部を抜粋・改編したものです。記事全文は下記記事をご覧下さい。元記事はこちら↓


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