#1 低血糖症は食事を変えれば良くなる? 低血糖症の原因やオススメの食事について、分子栄養学的アプローチを解説
低血糖症は、血糖値が通常よりも大きく下がってしまう状態のことのことです。低血糖症と言えば「糖尿病の人がなる病気」というイメージでしたが、最近では糖尿病になっていない人でも低血糖症を抱えている方が増えてきました。
低血糖になると、イライラしたりやる気が起きなかったり、急激な眠気に襲われたりと、様々な不調が引き起こされます。低血糖症が引き起こされる原因としては、糖質や炭水化物の摂り過ぎなどによる「血糖値の乱高下」や「血糖値スパイク」が関係しているとも言われています。
このような低血糖症に対して、食事から改善していくことは可能なのでしょうか? また、根本解決をするためにはどうすれば良いのでしょうか?
今回は、低血糖症の原因と食事について、分子栄養学的アプローチを解説します。
低血糖は食事を変えるだけで良くなるのか? 低血糖症の症状とその原因について
低血糖症とは、血糖値が正常範囲以下にまで下がってしまった状態の事です。通常血糖値は80〜100mg/dl前後に保たれていますが、何らかの原因で血糖値が80〜70mg/dl以下を下回っている状態が続いていると、低血糖症と判断することが出来ます。
低血糖状態になると、冷や汗や動機、意識障害や痙攣、手足の震えなどの症状が現れることもあり、最悪の場合は死に至る恐れもあります。他にも、「食べた後や夕方になると猛烈な眠気が襲ってくる」というのも低血糖の典型的な症状の1つです。それ以外にも耐えられないほど甘い物の欲求が強くなったり、気分が落ち込んだり不安感に襲われるなど、その症状は多岐にわたります。
低血糖症の主な症状
全身の倦怠感、疲れやすい
集中力が無い
眠気が強く、朝起きられない
寒がり、低体温
動悸がする
めまいがする
冷や汗をかく
不眠
イライラする
頭痛
神経過敏
不安、恐怖感が強くなる
太りやすくなった
特に最近では、何か食べ物を食べたときに血糖値が乱高下して低血糖に陥ってしまう「血糖値スパイク」や「機能性低血糖症」という低血糖症を引き起こしてしまう方が増えてきました。
血糖値スパイクや機能性低血糖症とは、ジュースやお菓子などの甘いものや、お米や麺類などの炭水化物を食べたときに、急激に血糖値が上昇し、その後急激に血糖値が下がって低血糖に陥ってしまう状態の事です。
この血糖値の乱高下が引き起こされると、人によってはイライラしたり攻撃的になったり、恐怖感や不安感が強くなったりと精神的な不調が表れてしまうことがあります。このような血糖値の乱高下によって精神症状が現れる低血糖症の事を「機能性低血糖症」と言います。
例えば、お菓子やジュースなどを甘いものやラーメン、パスタなどの炭水化物を摂ると血糖値が急激に上昇します。すると、身体は上がりすぎた血糖値を下げるために、すい臓からインスリンというホルモンを大量にを分泌します。
このインスリンが大量に分泌されることによって血糖値が急激に下がり始め、今度はインスリンが効き過ぎることによって血糖値が下がりすぎて低血糖になってしまうというわけです。
この時、低血糖の状態では脳のエネルギー源となる「ブドウ糖」が足りなくなることから、耐えられないほどの眠気が急激に襲ってきたり、甘い物の欲求が異常に強くなったりすることがあります。その他、ダルくなったりやる気が起きなくなったり、最悪の場合には意識を失ったり、命を落としてしまう事もあります。
そのため、身体は命を守るために全力で血糖値を上げようとします。このときに分泌されるのが副腎皮質から分泌される「アドレナリン」や「ノルアドレナリン」「コルチゾール」などです。これらホルモンは筋肉などに含まれるタンパク質を分解し、タンパク質からブドウ糖を合成するよう働きかけます。(タンパク質から得られたアミノ酸からブドウ糖を合成することを糖新生と言います)
そして下がりすぎた血糖値を上昇させるのですが、これらホルモンには同時に交感神経を刺激し、攻撃性を高める作用もあります。このことから、イライラしたり落ち着かなくなったり、人によってはキレやすくなったり攻撃的になったりと、様々な精神的不調や身体的不調が引き起こされてしまうことがあるのです。
このように、甘いものや炭水化物などを食べる事によって血糖値が乱高下し、低血糖症に陥ってしまう事を、「血糖値スパイク」もしくは「機能性低血糖症」といいます。この血糖値スパイクや血糖値の乱高下を引き起こしている方の中には、空腹時の血糖値は正常の方も多いことから、別名「かくれ低血糖症」とも言われている病気です。
では、そんな低血糖症は、食事で対策したり改善したりすることはできるのでしょうか?
結論としては、食事の改善も重要ですが、食事だけで低血糖症が根本から解決させることはかなり難しいと言えます。理由としては、血糖値スパイクや血糖値の乱高下が引き起こされる背景には、感染症や慢性炎症などの疾病が関係している事があり、これらの治療や改善も同時進行で行っていく必要があるためです。
低血糖症との関連が考えられる疾病
糖尿病(治療薬による低血糖は除く)
貧血
副腎疲労・慢性疲労症候群
副腎不全
脂肪肝など肝機能障害
甲状腺機能障害
ピロリ菌感染、胃腸障害
SIBO
リーキーガット症候群
腸カンジダ症
口腔内環境の悪化
更年期障害、自律神経失調症
肥満、痩せすぎ
また、人によっては貧血を始めとした栄養欠損や、痩せ過ぎなどによる筋肉量低下、肥満による太り過ぎなども関係している事があります。このような原因に対し、必要に応じて生活習慣の改善や運動、適切な栄養補給など様々なアプローチを組み合わせることが必要です。
例えば、低血糖症を引き起こす1つの原因として挙げられるものに「貧血」があります。貧血にはさまざまな種類がありますが、その中でも特に注意したいのが「鉄欠乏性貧血」です。
鉄欠乏性貧血とは、その名の通り鉄の摂取量が少ない場合や不足している場合に起こる貧血のことで、全体の貧血原因の約7割を占めていると言われています。
この鉄欠乏性貧血は特に女性と子供に多く、理由としては女性の場合は毎月の月経によって定期的に出血し、血液と共に鉄分が失われてしまうためです。加えて、妊娠出産によって鉄の需要と消費が多くなるのも女性に貧血が多い理由です。他にも、子宮筋腫、過多月経など何かしらの疾病や病気、怪我によって出血量が多くなった場合も鉄欠乏性貧血となります。
また、ダイエットや健康志向などによる鉄分の摂取不足に加え、現代の食生活で摂取量が多くなったコーヒーや紅茶、レトルトやインスタント食品の摂りすぎも関係しています。 これらは「タンニン」や「リン酸」などが多く含まれており、これらの成分は鉄分の吸収を阻害してしまいます。そのため、余計に鉄欠乏性貧血に陥りやすくなってしまっているのです。
鉄欠乏性貧血に陥る原因(婦人科疾患など疾病を除く)
肉類の摂取量低下、菜食主義
コーヒーや紅茶の摂りすぎ(タンニンの影響)
レトルトやインスタント食品の摂りすぎ(リン酸の影響)
タンパク質不足
胃の消化能力低下
ビタミンCやビタミンB群、亜鉛など造血に必要な栄養素の不足
では、このような貧血と低血糖症には、具体的にどのような関係があるのでしょうか? 1つ言えることとして、貧血があると低血糖症になりやすくなるという傾向があります。その理由は、貧血の状態だと身体が作り出せるエネルギー生成量が低下してしまうためです。
貧血は単に血が足りないだけと思われがちですが、それだけではありません。血液や鉄分は体内の細胞に酸素や栄養を届けたり、脳の神経伝達物質を合成する材料としても使われています。そのため、血液の量が少ないとその分だけ全身に酸素や栄養を運ぶ能力が低下し、糖をエネルギーとして利用する能力が低下してしまいます。
また、貧血では脳の神経伝達物質の合成量が低下することから、貧血の状態では自律神経の乱れやホルモンバランスの乱れも引き起こす原因です。この自律神経の乱れが引き起こされると、身体は強いストレスを受けて血糖値が乱れやすくなり、正常な血糖値を維持することが難しくなります。
このことから、貧血を抱えていると低血糖症を引き起こしやすくなります。このような場合、低血糖症を改善させるためには鉄欠乏性貧血を含めた疾病を改善させることが第一です。特に栄養鉄欠乏性貧血は単に鉄分の摂取量が少ないこと以外にも、タンパク質不足などの消化吸収能の低下や、消化管などからによる出血や、婦人科疾患による出血量の増加などの疾病が関係している場合があります。
これら疾病があった場合は適切に治療を行い、鉄分を始めとした栄養不足や栄養欠損を改善することが出来れば、低血糖症も同時に改善出来る可能性があります。
人体には「生体恒常性」と言って、本来は血糖値を正常範囲に保つ能力が備わっています。その機能が備わっているにも関わらず、うまく血糖値を正常範囲にコントロールできないことが最大の問題です。
特に、正常な血糖値を維持するためには、肝臓やすい臓、副腎やインスリンなど様々な働きが関わっています。それら働きが何らかの原因によって機能が低下してしまうことが、血糖値の乱高下や血糖値スパイクを引き起こしてしまう原因の1つです。
血糖値の乱高下や血糖値スパイクを始めとした低血糖症を改善させるためには、これら臓器が正常に働けるようにしたり、生活習慣の改善や運動、ストレス対策など様々な対策を行う事が重要になります。食事の改善や工夫も大切ですが、糖代謝が悪化している原因に対しても、適切な分子栄養学的アプローチを行っていくことが必要です。
この記事は、下記記事から一部を抜粋・改編したものです。記事全文は下記記事をご覧下さい。元記事はこちら↓
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