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『流星 お市の方』

織田信長は誰でも知ってる武将だが、その妹のお市もまた有名である。
女性に関する記録が少ないならまだいい方で、全くないこともザラなこの時代において、残った記録にはだいたい「お市という人は美女」と書かれるくらい美女である。
そんなお市の運命を描いた作品。

上巻は幼少期から浅井家に嫁ぎ、そして姉川の戦いが始まるまで。
下巻は姉川の戦いから信長の死、そしてお市の最期までが書かれている。

群雄割拠のこの戦国の世において、嫁ぎにいくということはどういうことなのか。
お市ならびに政略結婚で嫁いだ方たちを「外交官」の役割を果たしていたという。
『確かに私はここへ嫁ぎにきました。ですが、私はあくまで両家の潤滑油のような存在です。良好な関係を保つよう努力しますが、万一仲違いが起きた場合、こちらの味方であるとは限りません。』
なにも合戦で槍だ刀だを持って戦うことだけが戦ではない。

あの人と仲良くしたいから貢物をあげよう。
あいつはこんなことをしてるらしいから牽制しよう。
この人を擁立したいから、挨拶へ行こう。
今後の未来のためにあちらに根回ししておこう。

各自の思惑の渦の中に、お市もまた全く慣れない環境で否応なしに巻き込まれていく。

そしてお市に関して、一つ大きな疑問がある。
それはなぜお市は柴田勝家とともに自害したのか。

この時代、城へ攻めるときも明確なルールがあったそうだ。
例えば妻や女子供は先立って城外へ連れ出されるというもの。
ただし、あくまで女だけであって、いくら子供といっても敵の長男などは出ることはできないという。

このルールに則れば、お市は城攻め前に城外へでて、また違う人生を歩むこともできたはずである。
実際、浅井家が滅びた際は、お市とその子供の三姉妹は城外へ避難している。
にも関わらず、北ノ城の戦いにおいて柴田勝家とともに自害している。
その理由を織田家の人間として、また一人の母としての決断だということを著者は書き綴っている。

その数十年後、娘であるお茶々もまた似たような運命を辿ることになるかと思うと、また複雑な気持ちである。

それでは、また次回。


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