【まどマギ】「つぎはぎの空」が描いた少女の欲望とその先 『[新編] 叛逆の物語』
下の画像は映画序盤、不満を募らせた志筑仁美(しづきひとみ)が作り出したナイトメア(悪夢が具現化したもの)の情景だ。
仁美がこのナイトメアを作ってしまった原因は、彼女の恋仲である上条恭介(かみじょうきょうすけ)を電話口でデートに誘った際にヴァイオリンのレッスンを理由に断られたこと。通話を切った直後、仁美は独り言を語り出す。
こうして闇落ちするわけだが、仁美が作り出すナイトメアの空がなぜ「つぎはぎの空」なのか。この背景には明確にメタファーが込められている。
そのメタファーとは「強欲がもたらす破綻」である。
仁美は独り言の中でヴァイオリンに励む恭介が大好きだと認めながらも、ヴァイオリンよりも自分を優先しないことに憤りを感じている。
「ヴァイオリンを奏でる凛々しい彼氏が見たい」
「彼氏ともっと一緒の時間を過ごしたい」
この2つの欲望は相容れないものだ。
それでもその欲望を満たそうとすればどうなるか。
「あの生地も可愛いわ!あの柄もキレイ!よーし、ぜーんぶ使って服を作っちゃえ♪」
ウッキウキで完成した服を友達に見せれば
「貧乏くさいね」
と言われてしまってがっかりするのは目に見えている。
全てを手に入れようとしたがためにすべてを失ってしまう。
仁美の「こうなったら私… 私…」というセリフは、この破綻を解決するためには「自分がいなくなればいいんだ」といった具合のことを思考して口から出てきたものであろう。
結局仁美は自分の相容れない欲望が叶わないと分かるとある種の駄々で死を匂わせる。
「つぎはぎ」の布と布を繋ぐ糸は「強欲さ(貧乏くささ)」と「死」を同時に連想させ、強欲の行きつく先を背景画で暗示するという物凄いことを『まどマギ』はやってのけている。
<余談>
よく女性が服を選ぶときに友人や恋人を待ちくたびれさせるほどに悩んでしまうのは、女性がファッションにおいて「全てを手に入れようとしたがためにすべてを失ってしまう」という強欲の行き着く先を多かれ少なかれ経験したことがあるからなのではないかと感じた。
欲張ると破綻してしまうので、破綻しないバランス、折り合い地点を探すことに時間が掛かってしまっているのかもしれないと思った。しかもファッションって数が多いし、シャツとパンツと靴だけでも最低3つのバランスを考えなきゃだし…。
女の子、怖い…。ファッション怖い…。
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