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推しに世界を貢ぐ話

久しぶりにnoteを書こうとすると書き方覚えてないんですけど、この書き出しを考えるのに30分くらいかかってたりするんですけど、私がVRChatというVRSNSで電車と駅のワールドを作った経緯を書いてみようと思ったので書きます。

一番のきっかけになったのが私の推し、のらきゃっとさんがこのVRChat配信で山手線のワールドを訪れ、連結面に視聴者を押し込んだ19:15~21:10の間で発した「もう少し、狭い感じのする方が、私は好きだったりするんだけどな」という一言

推しが至近距離でむっちゃいい香りを漂わせながら要望を伝えてきた場合のオタクってその願いをかなえるために何でもするって感じになるんですよね。
というわけで、私はこの一言でこの「電車の連結面」を作り始めます。
連結面を作るには周りの風景も欠かせないので電車の車両全体も作りましょうか。とすると車両全体のデザインから考えなくてはいけません。この時点で重要なのは「連結面」です。電車の連結面ってあまり使わないし、立ち止まるような場所でもありません。なんなら事故が起きた時に真っ先につぶれるのが連結面なので、立ち止まらないのがベストです。ですが、それをつくりました。

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というわけで久しぶりに引っ張り出したクロッキー帳に描きなぐった連結面の案がこんな感じです。
小さくて密着感ある連結面(普通の中間連結面)
個室感ある連結面(運転台撤去や簡易運転台車両)
薄暗い通路感ある連結面(中間に連結された先頭車)
の3パターンを描いてみて、ふと思いだしたのがアニメ「響け!ユーフォニアム」の黄前久美子と高坂麗奈が連結面の窓越しに顔を合わせて笑う描写、これも追加しようということで以下のデザインができます

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これらのデザインを元に車両を作っていきます。
ここで、外装や内装の細かい設定も考えるのですが、ここで重要と思ったのはVRChatでよく見る他の鉄道車両と要素がかぶらないことでした。VRChatでよく見る鉄道車両とは、
先ほど紹介した配信にも出たYamanoteLineE235(山手線E235系)

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とてつもない臨場感のMyojinLine(明神線)(架空だが関西本線キハ120っぽい)

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車内の作りこみがすごい黄昏特急(名鉄空港線1700系がモチーフらしい)
(写真はない)
最新型の新幹線

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あとはUnityのAsset Storeで見かける海外の鉄道車両

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少しレトロで古い蒸気機関車や貨車・客車・路面電車

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というものが多いです。
特に「現代日本」で鉄道のある日常を映したものとなれば、山手線、明神線、黄昏特急とNEETさんによるVR Central Station・Japan Street系というところで、ワールドの数は限られていたりします。モデルとなる車両が存在する関係でBoothでの販売・配布もできず、MMD等から許可を取らずに持ってきたモデルがあるのもまた事実。
ならば権利的にクリアで販売できて、明確にどこの路線とはわからないけど日本で走ってそうな電車を作ろう、というところができます。
で、参考にした電車の一覧がこれ

阪急電鉄1000・1300・7300系(基本設計・中間運転台)
阪神電鉄5500・5700系(2両+2両の分割、ドアボタン)
南海電鉄2000・2300系(都市部から山間部まで走行できる鉄道車両)
京阪電鉄13000系(響け!ユーフォニアムに登場した車両)
近畿日本鉄道9820系(6両編成を作る場合の編成内容)
東武鉄道6050系(前面デザイン)
西武鉄道新101系・4000系(走行線区設定・前面デザイン)
東急電鉄1000系(日本全国どこでも走っているステンレス製の私鉄車両)
京浜急行電鉄600形(3ドアクロスシート車の設計参考)
日本国有鉄道117系(内装色)
JR西日本223系0番台(ライトケース)
JR西日本223系2000番台(ライトケース・転落防止幌)

私がもともと関西在住だった関係もあり、イメージが関西私鉄を走っている3ドアロングシート車に絞られてきます。クロスシート車のバリエーション展開もしやすいですし…ということで作って、2/5にできたのがこれです。

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車内の作りこみなどはだいぶ甘いですが、外装はだいたいできてますね。

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2/9の時点でこうなります。運転席や扉、ポスターとか電車のモデルのほぼすべてができてます。

この電車自体はのらきゃっとさんの発言一つからできてますが、この電車はVRChatのいろんなワールドを走っていてほしい、ならばプロトタイプではなく量産型のコンセプトであるべきだ、という発想から車両の色はアバター「量産型のらきゃっと」の水色と黒色になります。つまり赤色と黒色のプロトタイプが存在しますが、それはまた未来の話。

パンタグラフはシングルアームパンタグラフ1つですが、これはダブルパンタにするとパンタグラフ同士を引き通す線の設計が必要なのでめんどくさいな~となった結果です。改造前は下枠交差型パンタグラフだったという設定があったりなかったりします。こうやって解像度の高い電車を作ると、それを展示するワールドも作りたくなってきます。

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2/10には電車といえば車庫かなぁと思ってたくさん並べてみたり。これはこれでかっこいい。

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2/11には内側通過線の対面式ホームの駅になったり、とりあえずそんな風に展示方法を模索していきます。

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まぁ地上駅だと周りの風景を作らないといけなくてめんどくさいなと思って2/16にできた地下駅、この時点でこれはありだなと思ったので以降はこの駅を元に発展させていく形になりました。
ところで2/12の地上駅から2/16まで日数が開いてますけど、これは主にこの電車の走る路線の設定とか駅とか全部を考えていたからです。
ロマンを求めるなら始発駅はずらーっと並ぶ櫛形ホームがいい、けど地上はめんどくさいので地下駅がいい、というわけでBrenda_Stationの設計を進めていきます。
参考にしたのは以下の駅たち

阪神電鉄本線梅田駅:基本設計
阪神電鉄神戸三宮駅:カテナリー吊架式の架線を採用する地下駅
近畿日本鉄道奈良線奈良駅:カテナリー吊架式の架線を採用する地下終端駅
JR西日本関西本線(大和路線)JR難波駅:地下終点駅(延伸計画のある場合)
京王電鉄本線新宿駅・新線新宿駅:関東の地下終点駅

とかです。
まぁほぼほぼ阪神梅田駅だけどパンタグラフが1両に1基の車両だから剛体架線を採用できなくて架線方式だけ他の駅に倣って、西改札の設計を適当にしたりしました。ホームの幅はデータが出てこなかったので適当にしたらエレベーターの設置もできないような狭さになったのでもう少し幅はあったほうがいいな…って思ったりしました。

さて、駅や電車を作る中で必要なのが路線図や鉄道の走ってる地域の地理情報です。元の阪神電鉄梅田駅、地名の「梅田」の由来は淀川の河口で沼地だった梅田周辺一帯を「埋め」、「田」に変えたことから始まるそうです。まぁなんかそれっぽい名前をこの駅にもつけたかったので、「田」は元の駅から拝借、VRCに関連する単語で「た・だ」で終わる単語といえば3DモデリングソフトBlenderでした。「ぶ」と「れん」に充てる文字は梅田同様植物から、「蕪(かぶ)」「蓮(はす)」となりました。元が沼地であるのでハスの群生地だったとしてもおかしくはないでしょう、こうして創作の駅「蕪蓮田」の駅名が決まります。
そこからVRChatに関連する単語をずらっと思い浮かべては路線図を追加していきます。

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蕪蓮田(ぶれんだ)、創作の駅、由来:Blender

膜箱(まくはこ)
BlenderからExportする「FBX」は「Film BoX」の略、漢字に訳すと膜箱となる

由丹堤(ゆにてい)、FBXをimportする先、Unity

理想談(りそうだん)、UnityでアバターをUploadする先、VR→理想、Chat→談

理想前(りそうまえ)
VR→理想、M→えむ→EMU→MUE→MAE→前、由来はVRM

武色猪戸(ぶいろいど)
VRMアバターはVRoid Hubに登録しよう!、由来はVRoid、武色は旧国名、猪戸は地名。武蔵小杉みたいな駅名(武蔵→武色、小杉→猪戸)

種接網(?????)
読み方が不確定の駅、VRMアバターはThe Seed ONLINEに登録するとVirtualCastに持っていけるよ!

理想演者(りそうえんじゃ)
Virtual(理想)Cast(演者)、The Seed ONLINEからアバターをアップロードできる。

現実(げんじつ)
由来はスマホ配信アプリREALITY、現実を終点にするとVRの民は死ぬので終点にはしなかった。ちなみに特急は通過する。

朱円(あかまる)

The BinaryはVRライブも現実のライブもやってたがVSingerとは言いにくく、MVはアニメーションだったり3Dだったりなので例えるのが難しい立ち位置のシンガーユニット。身勝手な夜空たちのMVは「現実」と「理想」の間にある「身勝手な夜空たち」駅、理想方面のホームで歌は「あかまる」さん。由来はボーカルの「あかまる」さん
理想行の電車がメインなのでこちらは新線で本線、本数も多い。

三戸(みど)

これも同じThe Binaryの曲、こちらは理想から現実方面のホーム、ボーカルは「mido」さん。現実方面の列車は少なくていいので旧線の単線区間の行き違い駅という設定があります。旧線は長崎本線の旧線のイメージがあるので三戸駅は海沿いです。駅や駅付近は伊予鉄道高浜線高浜駅辺りの雰囲気です。

理想(りそう)
「現実」行きにしたくはないが、「仮想」行きもありきたりなので、THE BINARYのMVからとって「理想」行きとなった経緯があります。

真野(まや)
Mayaからアバターを作る人も多いとか…
現実的な駅名にしたかったのでメタセコイア駅にはならなかった

新巣(にいす)
新→Neoと考えればわかりやすい、NeosVRが由来。
FBXファイルをそのままゲーム内にドラッグアンドドロップしたりできるので膜箱駅の次の駅になっている。

新市場(しんいちば)
新→Neo、市場→Market、というわけで期間限定だったけどpixiv・Boothが作ったVRSNSのNEOKETが由来。新巣と並べたのは何か「新」のつながりを持たせたかったため。

散合渡(ちるあうと)
その名の通りChilloutVRが名前の由来、Unityを用いてアバター・ワールドをアップロードするので由丹堤駅から一駅だけの路線を伸ばしました。イメージはJR西日本阪和線羽衣支線。

倉スタ前(くらすたまえ)
VRoid HubからアバターをアップロードできるVRSNS、Clusterが駅名の由来。正式名称は倉野川スタジアム前。倉野川の地名にピンと来た人はちくわパフェを知っている。駅のイメージはJR西日本桜島線安治川口駅。

繋九十
VRoidからアバターをアップロードできるVRSNSってたくさんあるけど、Connect Chatもその一つ。今はワールドも一つしかないし色々な制限があるけど未開拓の場所。駅のイメージは京阪電鉄片野線私市駅。

という風に駅の設定をしています。
始発の蕪蓮田駅はBlenderの駅、創作の駅、ということで基本的にワールドポスター、楽曲のジャケット、Booth販売物・自作物のポスターに限定し、イベントポスターを使わないようにしました。QuestイベントのCafeQのポスターがあるのは拙作「レトロな路面電車」を置いていただいているということで例外です。あとなんかポスターほしいな~って言ってたらしろまる。さんから色々投げられたので使わせていただきました。

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個人的にはこの3枚がお気に入りです。
2枚目の文言は自分で考えました。

レールの先は現実か未来か
一番列車で見に行こう
私たちがいる世界にも終わりが来る
それは明日かもしれないし、100年後かもしれない
だけど、どうせ終わるならハッピーエンドがいい
皆が物を創造しすぎたとか、現実が理想に追いついたとか、そんな理由の終焉がいい。
まだ10年も経っていない世界だ、一番列車にもまだ間に合う
私たちの見てるレールの終点を見に行こう
いつも突然にやってくる「終わり」をこちらから驚かせてやろう
ぽかんと口を開けた間抜けな終焉を笑い飛ばしてやろう
そんな理想の終わりを創造しよう

「レールの先は現実か未来か」というのは仮面ライダー電王
「いつも突然に~終焉を笑い飛ばしてやろう」はカゲロウプロジェクトの影響を受けてたりします。
開業記念ポスターに必要な開業日ですが、これは日本の鉄道の路線開業が基本的に3月の第一週に行われることから3/1になりました。

どうしてもここまではワールドに作っておきたい!というのはここまでです。
最初の完成予想図はここまででした。

というのも、VRCUnity勉強会というDiscordサーバーで作業通話したり配信したりワールドテストもしながら作業を進めていたのですが、そんな中作業の様子を見ていたエスニヤ先生から発車ベルのボタンの3Dモデルが送られてきます。発車ベルを鳴らすボタンがあるのに発車ベルが無いのはおかしいので、発車ベルを実装…いつも通りニコニコモンズでそれっぽい音源を探すのですが、なかなかいい具合の音源が見つかりません。
現実世界の音を持ってきたら創作の駅じゃないな、と感じ始めたのでならばいっそのこととVRCのフレンドの作曲勢に依頼することを考えます。私はよくVRC音楽界隈にいるので誰に依頼しようかと悩むのですが、このワールドの発端となったのはのらきゃっとさんの一言、ということで頼めるのは一人だけでした。
のらきゃっとさんの配信BGMやファンソング等を担当されているAtreeさんです。Atreeさんはのらきゃっとさん関連ではのら!ちゃん!べりべりきゅーと!という合同誌の編集をされていますが、NINTENDO SWITCH収録のPHRASE FIGHTというゲームでサウンドディレクター・作曲をされているなど、ちゃんとすごい人です。というわけでVRChatのブラウザでAtreeさんがログインしているのを確認してJoin。なんとはなしに「駅の発車メロディ用にのらちゃんの配信BGMをアレンジしてもらうとしたら依頼料はどれくらいですか?」と聞いてみます。「干し芋のグミ送ってもらったらいいですよ~」とのことだったので、Amazonで支払い手続きをしているうちにAtreeさんのVoiceから聞きなれたメロディーが流れてきます。軽く「こうした方がいいかな?」とか喋りながら30分くらいで「野良猫は不思議の国の夢を見るか」駅メロ風アレンジができました。できた音源をDiscordで送ってもらってUnityに追加して発車ベルのギミックは実装完了です。

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このワールドは自分のクソデカ感情が絡んでたので基本的に自作、のらちゃんの配信で使ってもらいたいという薄い願望もあるのでできる限り見慣れた風景に(→海外の駅のAssetをできるだけ使わない)、自分に作れないところはフレンドに依頼、という風にしてできました。

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そんな「創作」の駅、蕪蓮田駅という世界ができました。
推しの一言で世界を作った。そんな感じです。

協力していただいたしろまる。さん、エスニヤさん、Atreeさん、VRC音楽勢の方々、VRCUnity勉強会の皆さん、ありがとうございました。


ちなみに、駅というからにはもちろん隣駅や路線全体、街までの構想もありますがまずはここまで。構想のnoteもいずれ書きたいですね。

ワールド:Burenda_Station
Boothで販売中の現代の電車

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