The Beatles 全曲解説 Vol.2 〜I Saw Her Standing There
今回からいよいよ、ビートルズ現役時代の楽曲解説に移ります!
基本的には、アルバムの発売順、収録曲順に進めていきたいと思います。
後半になるにつれ難しくなっていく未来が見えますが、意外と初期の方が、シンプルな音が続く分難しいかも…?
そこら辺も含めて、楽しんで書いていきたいと思います。
『Please Please Me』(1963)
1963年に発表された、ビートルズのファーストアルバム。
収録曲の多くが、メンバーが下積み時代から温めていたオリジナル曲と、彼らが演奏し慣れたカバー曲で構成されています。
元々はビートルズの地元リヴァプールにあるライブハウス「キャヴァーン・クラブ」でのライブ録音をそのままアルバムにする予定だったのですが、音質の問題から断念。
そのかわりとして、ライブ感を出すため一発録りを基本とした演奏を集めたアルバムを出すことになったそうです。
(ちなみにキャヴァーン・クラブは店舗を改装し、現在も営業中ですが、コロナ禍によって存続の危機に立っているとのこと…)
そういった方針もあり、曲づくりから演奏、ミキシングの仕上げまで合計時間で24時間前後で作ってしまったという伝説もあります。
そんな熱々の真空パックでお届けされたこのアルバム。
熱気がそのままリスナーに伝わったのか、全英30週連続ナンバー1というとんでもない記録を樹立します。
そのナンバー1をついに奪ったのが、ビートルズ自身による『With The Beatles』だったというのですから、もう笑うしかありません。
唯一無二のプロデューサー、Sir George Martin (1926-2016)
ここであげておきたい人物がいます。
本アルバム以降、『Let It Be』を除く全てのアルバムをプロデュースすることになる、サー・ジョージ・マーティンという男です。
元々はクラシックや映画音楽の分野で活躍していた人物なのですが、
ビートルズを見出して以降、4人のロック小僧達と、その膨大な音楽知識を活かし、多くのマジックを起こしていくこととなります。
息子のジャイルズ・マーティンも、近年のビートルズ作品のリミックス等で活躍する優秀な音楽家となっています。
ちなみに、ビートルズと初対面の日。
マーティンは4人をリラックスさせなきゃと、声をかけます。
「気に入らないことがあったら何でも言ってきてね。」
すると口を開いたジョージ。
「ええ、あなたのそのネクタイが気に入りません。」
ビートルズとマーティンが、出会うべくして出会ったということ思わせるエピソードです。
伝説の始まりを告げるカウント “I Saw Her Standing There”
その『Please Please Me』のトップを飾るのがこの曲。
始まりのポールによるカウントは、これから世界に魔法をかける8年間の疾走を彷彿とさせます。
ポールがデビュー前から構想していた作品で、リードボーカルもポールです。
先述したキャヴァーン・クラブでもレパートリーになっており、解散後50年を経た現在でも、ポールは本曲を当時と同じキーで歌っています。
歌詞はクラブで見かけた17歳の少女に一目惚れした男が「もう他の娘とは踊れない」と悶絶する、かなりおませな内容です。
詞の多くをジョンが手伝ったと言われています。
ジョンとポールは1957年に出会った頃から、音楽の趣味と、若くして母親を亡くしたという共通の体験からすぐに意気投合します。
そんな2人は、「どちらか一方が作った曲でも、作者は『レノン=マッカートニー』(共作扱い)とする」という約束を交わします。
実際に、初期の作品はどちらが作ったものでも、お互いがお互いを手伝った作品が非常に多いです。
聴きどころは、ジョンとポールのサビ・大サビのハーモニーはもちろんのこと、ジョージの間奏での独壇場、リンゴの正確で強力な8ビートと、4人全員の強みがこれでもかと凝縮されているところ。
ファーストアルバムのトップに相応しい演奏です。
また、初期によく見られるハンドクラップも、曲にコミカルな表情をつけ、親しみの感じられる仕上がりになっています。
ちなみにジョンもこの作品はお気に入りだったのか、解散後の1974年、ニューヨークのマディソンスクウェアガーデンで、エルトン・ジョンとこの曲で共演しています。
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