出崎統に対して、僕の気持ちは山本寛、新房、富野3監督の中では誰か?
出崎統監督が亡くなったあとに出版された、出崎統監督についての総論の本を読んだ。特に、3人のアニメ監督の出崎統評についてのインタビューが印象的だった。
そして、3人の(いろんな意味で)大人気アニメ監督の出崎統評にも違いがあると思った。
特に評価が分かれるのは、21世紀、晩年になってからの出崎統について。
俺はブラックジャックはまだ手塚治虫の作品として見ていたから、劇場版AIRでリアルタイムに出崎統のファンになったニワカファンだ。今、白鯨伝説やエースをねらえ!とかをDVDや再放送で見直してる途中なので、21世紀の出崎統はかなりリアルタイムに評価してる。
ここで、山本寛監督、新房昭之監督、富野由悠季監督の3人のアニメ監督による、出崎統監督についてのインタビューを紹介する。
出崎統について、山本寛
TV版『AIR』は、可能な限り原作を尊重した作りでした。私も当時は若気の至りで自分のテクニックを作品内で披露することに快感を得ている時期でしたが、この作品はそうは行かない、と身を引き締め技工に走ることを封印して作品と真摯に向き合い、誠意を込めて表現する、それを学んだ基調な経験でした。
ただ他方で、多少の違和感があろうと『AIR』を自分色に染め上げた出崎さんを、私は批判する気にはなれません。
アニメとは、周りに合わせる事の出来る器用な職人を、意外なほど冷遇する世界だからです。
「同じ起用ならばコントロールの利く若手を」との意識が強く、ベテランにチャンスを与えられなくなります。よほど「この人の演出スタイルがまた観たい!」とならない限り、ベテラン監督には急激に仕事が回ってこなくなるのです。
その中で出崎さんも奮闘したのだろうと、今は想像できます。決して老害の頑固さとは思えない、多少あったのかも知れませんがそれだけではない。
あれだけの実績を残しながら、現役であり続けようとした演出家、表現者としての、防衛本能だったのだと。私はやはりTV版の方に作り手としての誇りを持っていますし、故に出崎版を手放しに認めるつもりはありません。しかしそのフィルムの向こうに、ひとりの天才演出家の生き様を見るようで、切なくなるのです。
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