料理のやる気は買い物まで

　外におつかいに出かけるとテンションが上がって、あれこれ具材を買い込むけれど、家に帰ってそれらを冷蔵庫に入れた瞬間、すべてのやる気を失って横になる現象に名前をつけたい。
　お店のショーウィンドウで輝いていた服をごちゃついたクローゼットにしまった瞬間、色褪せて見えてしまい、結局タンスの肥やしとなるケースによく似ている。

　特に夏は駄目だ。
　我が家は共働きかつ、５秒とじっとしていられない子どもたちに５分毎にママコールされるので、土日に買い物に行き、ある程度下ごしらえや作り置きをする方法をとっている。
　しかし、土曜に買い物に行っても、土曜のうちに調理に入れない。
　自転車をこいで２軒３軒と買い回りをした体からは、汗がダラダラと流れ、疲労感に包まれ、鉛を背負ったか？と勘違いするような重みがとれず、かろうじて買ってきたものを冷蔵庫に逃がすことだけしたら、クーラーの効いた部屋でぶっ倒れてしばらく使い物にならなくなる。
　包丁なんて翌日じゃないと持てないよ。

　買い物は嫌いじゃない。ネットスーパーを使わないのは、値段や送料のことを考えているだけでなく、あのバラエティ豊かな食料品を眺めたときの高揚感を味わいたいからでもある。
　少し前まで一箇所のスーパーで全ての買い物を済ませてきたけれど、最近は安い八百屋と安い肉屋をハシゴして、最後にスーパーで魚や乳製品、大豆食品なんかを買う。
　たまに、ズッキーニ68えん、ダイコンは39えん！？　みたいな値付けをする八百屋は買い物メモを作らず行ったほうが楽しいし、「牛丼用」「角煮用」「ローストビーフに！」なんてシールが貼られた肉屋では、来週はこれを作ろう、なんて調理意欲が掻き立てられる。帰るまでは。

　なーんで帰ってくるとすべてのやる気がチンアナゴみたいに引っ込んでしまってるんだろー？

　発色美しいパプリカ、みずみずしいなす、珍しく安かった国産アスパラ、大パックでお得な鶏もも肉に、息子が好きなつくねを作ろうと思っている豚ひき肉。

　大丈夫、今日は土曜日だから。明日がある、明日がある、明日があるさ。
　翌日の日曜、土曜の疲れが取り切れず、子どもの相手をするのが精一杯で、家事のやる気が起きない現象があるのだが、これはまた別の話。