下着のブランド問題

今や、ありとあらゆる下着メーカーがこぞってTVCMを流していることから、男性であっても女性用下着メーカーやブランド名をいくつか挙げられる、という人は少なくないと思う。
AKB48とコラボした下着が某ブランドから発売された時は、下着屋にファンが殺到し本来の客たちを大困惑させた、というニュースはなかなか衝撃的だった。

しかし、下着のCMやポスター、ホームページなどには、たいてい国籍不明のスタイルのいいモデルが起用されている。
日本人の場合は、年齢不詳の、なぜか厚化粧のモデルが多い印象だ。

ここである問題が発生する。
「下着、どこで買えばいいの問題」である。

***

よほどオシャレにこだわりのあるお母さんでない限り、娘に与える初ブラは、近所の量販店で入手するのではないかと思う。
その後、ファッション誌を血眼で読み込んだり、本来隠すものである下着を見せる人ができてしまったりして、女子は「自ら下着を購入しに行く」というイベントを経験することになる(この「これからは自分で買うからいいよ」と母に告げる行為が、なかなかに勇気のいる行為であるのだが、割愛)。

女子が最初に足を踏み入れる下着屋はどこなのだろう。ピーチジョ○、アモススタイ○あたりが手堅く手頃だろうか。セールを狙えばイチキュッパどころか、野口英世でお釣りがもらえるレベルの買いやすさである。

私はワ○ール内の某ブランドだった。
近所に直営店があったので、足を運びやすかったのだ。余談だが、後にワコー○は仲間内で「店員さんにきちんとフィットチェックをしてもらうと、カップサイズが2カップ上がる」と絶大な人気を誇るようになったのだが、未だに理由がわからない。上に横にとはみ出す脂肪をぎゅうぎゅうやられた記憶があるから、それが原因か。

しかしそのワコー○ブランドはなかなかに優秀で、肌に優しい素材やら、痛くならないワイヤーやら、さまざまな提案を女子にリリースしてきた。
アモ○やピー○に比べるとお高いが、安っぽく見えない、というのも重要なステイタスなので、多少の出費は気にしなかった。安い服一枚買えるくらいの値段だし。

数回、そこで下着を買った。
数回というと、そんなに買ってないじゃないかと思われそうなので事前にいっておくが、「一回買った下着を、だましだまし数年使用した後の二回目の来店」というカウントの仕方なので、合計するとかれこれ十年以上お世話になっていることになる。

下着はもっと頻繁に変えろよというご指摘ごもっともだが、こちらも下着を見せる相手が5年以上変わっていないわけで、今さら下着を一新してマンネリ解消とかいう年齢でもなくてですねゴニョゴニョ。
しかもフィットチェックの際には、店員さんに上半身のほとんどをさらけ出さねばならないわけで、「腕をあげてくださーい」と言われた日にワキ毛処理が甘い、くらいならいいがまったくの未処理ボーボー状態だったら目も当てられないというかなんというか。

しかし最近、ストラップの頻繁なずれ、レース部分のほつれ、いかんともしがたいくたびれ加減などにとうとう自ら嫌気が差し、数年ぶりに件の店内に足を踏み入れることとなった。

ここのところの忙しさのせいで体重とともにカップサイズが減っていたことには衝撃を受けたものの、フィットチェックまで無事に終了し、試着室を出て、ブラとセットのショーツを漁り始めた、そのときに問題は起こった。

あれ、店内にいるの、みんな10代後半から20代前半じゃない……?

アラサー女子、私と店員さんだけじゃない……?

キャッキャしながら、小物にワッペンをつけてもらっている女子二人組。おそるおそる、といった具合で店内を見渡す、まだ化粧も覚えていない女子。
「一掃買い換えキャンペーンしようと思ってあははー」と、一気に四セットも下着を購入している女はいない。ここにはいない。

極めつけは店員さんのこれである。

「今、サニタリーも安いんですよー、いかがですかー?」

サニタリーとは知りたくもないかもしれないが月経中に身につける下着のことで、これが普通の下着より商品展開が少なく困ったもんである。しかもこの下着も、実は昼用夜用と別れており、夜用はおしり部分まで漏れてもOK!のすぐれものであり、私はこちらを愛用している。

その旨伝えると、店員さんは合点承知とばかりに私を店内の別の一角へと案内した。

「こちらが夜用ですねー。どうでしょう、羊柄と、イチゴ柄と、蛍光ボーダー」

羊柄とイチゴ柄と蛍光ボーダー。
大事なことなのでもう一度言います。
ヒツジガラトイチゴガラトケイコウボーダー。

ふと、店員さんがこちらを見た。

「ちょっとデザイン若いですかね……」

ちょっとどころじゃねぇんだよ。

***

帰ってすぐ、「アラサー 下着」でGoogle先生のお力を借りることとなった。

残念ながら、外から見える洋服とは異なり、下着は友人に「どこのつけてる?」と、気軽に聞ける年齢を通り越した。そもそも、既婚、未婚、子持ちと進路が異なる友人たちにその質問を投げたところで、「授乳が楽なやつ」とか答えられても何のヒントも得られない。後学には役立つけれど。

十年以上お世話になってきたブランドの新品の下着を身に付け、今日も私は出勤する。

そろそろこれではいけない、という自覚とともに、「でもつけ心地はいいんだよなぁ……」という未練が激しく残る。

アラサー 下着

の検索結果は、今日もあまり芳しくない。

サポートをご検討いただきありがとうございます! 主に息子のミルク代になります……笑。