アラサー女子休日の華麗なる遊び~リエット作ろう編(1)
たくさんいる働き蟻のうち、真面目に働いている蟻はたったの2割で、残りの8割の蟻は基本怠けている、というのは有名な話だ。
そしてこのニッパチの法則は、「大学サークルの女子部員」にも適用される。
年に数回行われる合宿。突然催される花見等の外遊びイベント。お金がないときの定番家打ち上げ。
「女子は台所仕事ね~」
という呼び掛けに、はーいと返事はしてみるものの、こういうときにテキパキ動ける女は二、三人がいいところだ。
二割の蟻である彼女たちが、軽やかに包丁を動かしたり火加減を調整している間、残りの八割の蟻たちは皿をもってうろうろ、箸を持ってうろうろ、酷いときは男子に混じってこそっとビールのプルトップを空けてみたりもする。
時が流れ、二割の蟻たちは現在、磨ききった技術を存分に発揮し、二度見三度見するレベルのおもてなし料理を作っては、某顔本を無数のイイネ!で盛り上げている。
楽して人生を終えるはずだった八割の蟻たちは、冬を迎えたイソップ童話のキリギリスさながら、わずかな女子力(生活力ともいう)で自らを暖めつつ「話が違う!!」と叫びながら、涙でかすむ顔本の画面に強がりのイイネ!を押すのだ。
「肉をメインにしようと思ってたけど、活きのいい金目鯛を見つけたから……」
「マルシェで春野菜がたくさん売ってたから、グリルにしてみたよ」
「ストレス解消のパン作りが趣味になってきた」
そこに並ぶ文字の羅列を見るたびに思うのだ。
「貴女方はもう、私の手の届かない場所に居る……」
***
社会人ともなると、「ホームパーティーへの出席」が単なるリア充の饗宴ではなく、お給料の出ないお仕事になりうるケースがあることが、うすぼんやりと理解できてくる。
喧嘩を売らんばかりの書き方で恐縮だが、子供の誕生パーティーすら家族だけで済ませる家庭に生まれた身空なのでお許しいただきたい。
ちなみに職業柄ざっくばらんなホームパーティーに呼ばれることが多かったので、今はどちらかというと好きである。(ジャニーズホリック兼料理上手な仕事相手のご自宅で開かれた、おいしいものを食べながらジャニDVDを見るパーティーは最高だった。余談)。
こういうとき、本当に頭を悩ませるのが手土産だ。
「ま、ケーキだよね」
と思ってケーキを買ったら、その場に集まったほとんど全員が甘いものを持ち寄ってしまっていたことに気づいたときの絶望感は半端ない。
ものすごく料理上手な人のホームパーティーの場合、主催側がケーキを焼いて準備している、という危険性も否めない。どうやって生きてきたらそんなに高度なスキルを身につけられるんですか?と襟ぐりつかんで詰め寄りたいがゲストの身でそんなことできるはずもない。
そして、何度か失敗を経験した上で私がたどり着いた結論はこれだ。
「前菜の前菜くらいになりそうな、腹にたまらない酒の肴」
料理上手のホームパーティーで出てくるメニューは基本コース料理だ。
料理やデザートは基本足りているのである。
だから狙い目は、アペリティフが配られ始めたものの、まだ主催はメインの大物料理に取りかかっている……。前菜に手をつけるのは憚られる……。
このタイミングだ。
これまで数度使わせていただいたのは、近所の雑誌に載っちゃった経験もある無添加ハム屋さんの、薄切りハム&ソーセージのパック。そこそこ有名なパン屋が売り出していたガーリックバターとペースト、それをつけるためのバケットのセット。
ピクルス瓶詰め、なんてこともあった。
「料理が多かったらご自宅で召し上がっちゃってください~」
なんて一言添えるのが効果的。賞味期限の確認もお忘れなく。
これで10年近く、私はホームパーティーをしのいできたのだ。
***
しかし近頃、私を戦々恐々とさせているものがある。
実在しているのかどうかは知らないが、女性誌などで「ある」と紹介されている。そして紹介されることにより「どこかにある」から「流行っている」へ昇格しかねない、はた迷惑な行為。
「手作り持ちよりパーティー」
である。
ホントに? ホントにこんなんみんなやってる?
「メニューコード★赤ワインに合うレシピ」
とかそんなん友達同士でやる!?
家のみで買うお酒って未だに第三のビールじゃ寂しいからビールだよね!くらいのテンションなのだが、世の素敵女子たちは友達との家のみにわざわざ手料理を持ち寄らせるほどのいいワインを用意するんだろうか。
あと、やはりたびたび女性誌に登場しては私を困惑させる「ドレスコード★ボーダーの女子会」なんてものも存在を怪しむものの筆頭である。
全員お揃い着て何が楽しいの!
……あるかないかはともかくとして、少しでも可能性があり、事前に手を打てるのであるならば、対処しない理由はない。備えあれば憂いもなくなるってもんである。
***
そうして、満を持してリエットの登場である。
今までの話は何だったのか?
それはもう、メインの前の前菜とアペリティフに決まっている。
だがしかし、メインにともされる酒よりも、アペリティフのほうが得てしてシャンパン等の高い酒を選びがちというのもまた真実であり、この話も徐々にしりすぼみぎみになっていくということを事前にお断りしておく。
サポートをご検討いただきありがとうございます! 主に息子のミルク代になります……笑。