また、ほろよいを半分こしようね。

「今年のお盆は帰ってこれないよねぇ…」

という言葉を聞いた時、わたしは少しほっとした。世間的に言えば「帰ってこれない」のだろうけど、たぶん、わたしは帰らなかった。

代わりによく電話をするようになった。出来れば週に一度、20分から1時間くらい。「うん、うん、そうなんだ。」8対2くらいの会話量で、最後におやすみスタンプを送る。ラインは既読がつくから安心するのだという。

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お酒をあまり飲まないわたしは、乾杯の記憶がとても少ない。お酒の席の楽しい雰囲気が好きで、飲み会はそこそこ行くけれど。

オンライン飲みが主流になってからは、輪をかけて飲まなくなった。甘いリキュールを買ったこともあったけれど、お酒自体を楽しむタイプではなかったらしく続かなかった。

用意するものは大体マグカップで、お湯を飲むか、お茶を飲むか。それでも話は楽しいし、オンラインはそれ以上でもそれ以下でもない。とても健全で、楽しくて、少し退屈な時間。


大学生の時に家を出て、年に2回実家に帰った。お盆と、年末年始。ゴールデンウィークはだんだん帰らなくなった。母も何も言わなかった。お盆は、休みが合わなくても帰ってきてほしいと言われた。少なくとも、夜は一緒にいられるから。

20歳の誕生日が明けて実家に帰ると、冷蔵庫に「ほろよい」が買ってあった。一緒に買い物に行った時は、「お酒、買う?」と聞かれるようになった。いつも、ほろよいのももか梅酒ソーダを1本選んだ。母が好きなコーラの味は選ばなかった。

母はわたしが脂身の多い肉が苦手になったことも、もう刺身を美味しく食べられることも知らないかもしれない。帰った時のメニューは、焼肉かすき焼きかしゃぶしゃぶかステーキと決まっている。

彼女はお酒を飲むとすぐに顔が赤くなる。見ているこちらが心配になるほど赤くなる。そしてふにゃふにゃとした表情でカーペットに寝そべり、気を抜くと、そのまま寝る。

その様子が、だらしないなぁと思うと同時にどこか愛しかった。いつも愛をくれる母は、酔うとさらに言葉も表情も雄弁に語った。わたしはそれが、少し複雑で、嬉しかった。

わたしたち母子のお酒のちょうど良い量は、ほろよい半分ずつ。コップをひとつ持ってきて、半分注いで、半分は缶に口をつけた。それで十分だった。


小学5年生の頃、担任の先生に「コピーみたいにそっくりですねぇ!」と言われたことがある。喜んでいいのか怒っていいのか分からなかったけれど、帰宅してから母は怒っていた。わたしは少し、嬉しかった。

わたしたちは半人前だから、お酒も半分こがちょうどいい。わたしたちは似ているけど違う人間だから、少し離れていたほうがいい。

それでも離れすぎると寂しいから、来年はまた会えるといい。今年始めたママさんバレーの話を聞きながら、お酒を飲んで、お互い赤い顔で笑えるといい。


まだコーラが好きか確認できたら、今度はコーラサワーで不格好な乾杯を、しよう。



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