分かりあえない女


「あなたは人が、自分の思い通りにならなきゃいやなんでしょう」


そう、姑に言われてわたしは限界を迎えた。


ちょっとした理由でわたしと旦那は1年間だけ彼女と住んでいた。わたしには耐えられず、狂いかけてしまった。

彼女もとい姑は旦那曰く「変わった人」で、結婚前に会ったことが実はなかった。今思えば、それがあまりよくなかったように思うけど、それを嘆いても仕方ない。

ガサツなのだけれど、世間体は気にしていて、悪い人ではないのだけれど話が通じなく、自分は正しく、いい人であると信じている。おそらく。

義実家に引っ越した当初、ものがあふれかえっていたのを無理やり掃除して、彼女が捨てたくないものも捨ててといったし、旦那も一緒にそれを捨てたり、片づけた。

わたしは自分の居場所をその家にはやく作りたくて必死で、怖くて、不安だった。

一緒に暮らしたのは1年間なのだけれど、わたしは廃人のようで、あまり記憶も楽しかったこともなく、円形ハゲができ、旦那からみたらひどかったんだろうとおもう。もちろん、姑だけが悪いとかじゃなく、相性っていうものだと思う。

わたしが未熟だった、とも思う。今でもそれは思う。だって彼女にそう言われて、わたしは自分の思い通りに他人を動かしたくて仕方ない、悪魔のような女なんだと自覚したから。

子供のころからわがままで、でもある程度大人はわたしの欲しいものを与えてくれたし、それが普通だった。

キャバクラで働いていても、男たちはわたしの機嫌をとりたくて言うことをきいて、わたしが思う通りのことをしてくれる、って思っていた。そんな考えが嫌になってキャバクラを辞めたのに、姑にそれを求めてしまっていたのは、わたしの未熟さのせい。

他人は自分の思い通りにならない、それは当然そう。そしてわたし自身も、他人の思い通りに動かなくてもいい。

同居を解消してからは、それをすこしずつ、学んで、コントロールしている。

わたしの中の闇は複雑に絡み合っていて、ゆがんだ考えや発想もぐちゃぐちゃしている。それが、人間らしくて愛おしいときも、嫌で嫌でたまらないときもある。

でも、人間って、生きていくっていうのはそういうことなんだろう、とも思う。

どんなに頑張っても、分かり合えない人間もいるし、矛盾した複雑な価値観もある。

でも、できれば、誰のことも「嫌い」になんかなりたくないんだ、わたしは弱いから。


おわり







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