総額10万円キャンペーン!ナースライフバランス大賞発表!!

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SNSを活用し、全国のナースの皆さんに患者さんとのエピソードを通して、「ナースの私が思う『いい看取られ方』」をテーマに200文字〜1000文字程度で自由に(写真や動画も可)表現して頂きました。

特別審査員を設け、厳選なる選考によりナースライフバランス大賞1点、入選作品を3点、ツイッター賞1点を決定しました。

ナースライフバランス大賞

ペンネーム:たまちゃんさん

友人のお父様の看取りの話です。
たった3日間と言うかもしれないが、自宅で過ごせた3日間は、本人にも、家族にとっても貴重な時間。命のバトンを渡すことが出来た、大切な時間になりました。
癌だと分かった時に、積極的な治療は望まれませんでした。一ヶ月ほどして、痛みが出て来たため、入院されました。
ドンドン食欲が減り、動かないから、動けなくなりフラつきも出てきたので、1人でトイレに行くことが禁止となりました。
ベッドの上で過ごす毎日。麻薬の量も増える一方。
いよいよ、最期の日が近いと主治医から説明を受けたころ、お父さんは、家に帰りたいと
おっしゃいました。主治医は、今帰ると、途中で亡くなられる可能性も十分あるから、無理だと。しかし、友人は、そうなってもいいから、父の願いを叶えたいと悲願し、退院が決まりました。
念願の自宅に戻られた、お父さんに翌日会いに行きました。
ベッドに横になられていました。「死んだらこの法被着せてもらうように、準備してあるんや。みんな小さい頃、御神輿担いだりしたなぁ。おっちゃんが着てた法被や!」
と笑顔で指さされました。
死ぬ時の準備の話を笑顔で出来る。
病院では、ありえないません。
また、ほんの数メールのトイレまでの距離を何分もかけフラフラしながらですが、自分の足で歩いて行かれていました。お葬式の後、聞いた話では、この姿が最後に歩けた姿だったとか。翌日の夜に、旅立たれました。
「お父さん、多分、たまちゃんな来てくれてたから、歩ける姿、見せたかったんやろな。ええカッコしいのお父さんらしいわ。」と友人の言葉。
自宅で過ごされたことで、生き切るお父さんの姿をしっかり見ることができた彼女は、
後悔もないし、最後まで父としてのプライドを見せてもらったし、今、尊敬しかない。
と話してくれました。
来てくれた日に、この先起きることを先に聞いていたから、不安になることなく一緒にいれた。と感謝してくれました。
3日間の姿を見てきたら自分達は、父に恥じないように生きようと思う。とも。
まさに、命のバトンの受け渡し。
死から生を生かす。私にとっての、死生観に大きな影響を受けた、友人のお父さん看取りの体験となりました。


入賞作品

ペンネーム:スミレ@療養病棟ナース

「穏やかな最期」

理想的な看取りとしてドラマや映画で描かれるのは、「家族に見守られながら息を引き取る」ではないでしょうか。
世間一般の人の感覚ではそうなのでしょうか、多くの看取りに立ち会っている看護師の皆さんはいかがでしょうか。
私の答えはNOです。
いまかいまかと息が止まることを監視されていたら、落ち着けません。
私の理想は、お互いに穏やかな気持ちで同じ空間にはいるけれど、じっと監視していることはせず、気づいたら息が止まっていたという状況です。ある男性の患者さんは、心不全と老衰で、眠っている時間が増え、ご飯も食べられなくなっていきました。心不全で身体は浮腫んでいたし、点滴は血管にはさせなそうだし、ただでさえ呼吸が苦しそうなのに点滴をしたら痰が増えてますます呼吸が苦しくなるのは目に見えていたし、なにより本人が延命を希望していませんでした。
なので、病院では珍しく、何もせずに見守ったのです。
浮腫んでいた身体は徐々にしぼんで、呼吸も表情も穏やかになっていきました。
飲まず食わず、点滴をすることもなく、その方は10日間生きました。
水が取れなくなったら長くて10日という先生もいるので、その方はめいいっぱい頑張ったのです。
最後は病室に、奥さんと娘さんとお孫さん、女3人がキャッキャと患者さんであるおじいちゃんの話をしている中、奥さんが気づいた時には息が止まっていたのです。
「全然苦しまなかったね」と家族もびっくりした様子でしたが、苦しむところを見たくなかったのでよかったとも言われました。
いまかいまかとみんなが見つめて、張り詰めた空気の中ではなく、みんながお穏やかな気持ちで一緒にいる中でスーッと眠るように亡くなったのです。
全員に見事だったと敬意を表したいです。
眠りと死は似ています。
違いは次に目覚めるか目覚めないかだけです。
眠るとき、たとえ大好きな人だったとしても、隣で一緒に寝るのは嬉しいけど、顔をジーっといつ眠るのかと見つめられていたら落ち着いて眠れません。
私だったらそっぽを向いてしまうでしょう。
私の理想は、お互いに穏やかな気持ちで同じ空間にはいるけれど、じっと監視していることはせず、気づいたら息が止まっていたという状況です。
最期を穏やかに過ごし、そのまま静かに息が止まることを願っています。

ペンネーム:natsu

4月から訪問看護に転職。入職して2カ月、初めての在宅看取りにかかわった。
90歳代男性。奥さんと、娘さんご夫婦と2世帯で暮らしている。お孫さん、ひ孫さんも多く日頃から多くの人が出入りするお家だった。
胃がんからの下血で、自宅でお看取りの方向になった。
やっと仕事に慣れたころ、初めての在宅看取りにかなり緊張していた私。
病院勤務時代、病院での看取りに「これで良かったんだろうか・・」と思うことが多く、看取りに苦手意識もあった。どのように関わるのが良いのか・・しかし、そんな心配をよそに、お家に伺うとベッドで穏やかな顔でおじいちゃんが眠っている。周りにはやっぱりお孫さんや、たくさんのご家族。

傾眠がちだけど、意識はあってケアの最後には必ず「ありがとう」と言ってくれる。
安楽に過ごすことができること、身なりのきちんとされた方だったから、清潔を保つことを目標にかかわる。ベッド上で髪を洗う、手浴をする、ただそれだけで家族もみんな喜んでくれて、「おじいちゃん良かったねー」と声を掛けてくれる。
別の日は、生まれたばかりのひ孫さんが来ている。おじいちゃんのベッドに
ちょこんと座る赤ちゃん。すると、今まで目を閉じていたのに、しっかり目を開けて赤ちゃんを見てにっこりと笑うおじいちゃん。始まる写真撮影会。後ろで見ていてこちらまで笑顔になる。
ケアの合間に、ご家族から聞くおじいちゃんのエピソード。昔はとても厳しい人で、お孫さんは学校に行く前に必ず、おじいちゃんに挨拶をしてから行くのがルールだったとか、近所の子供たちにもよく声をかけてみんなのおじいちゃんだった。

夜間のせん妄はあったけれど、小康状態を保ち数週間たったころ。
夕方、奥様が見守るなか「〇〇(娘さんの名前)はいるか?」と尋ね、2階にいた娘さんを呼び、文字通り「ありがとう」を伝えた後、おじいちゃんは、すっと息を引き取った。

なんてかっこいい最期。

後で聞いた話、おじいちゃんは「サザエさんの一家」を目標にしていたとのこと。厳しくも暖かい。まさしくそんな家族を築き、みなに見守られて旅たって行ったおじいちゃん。
しばらくして落ち着いたのちに伺って聞いた話。「高校生の孫が、看護師さんになりたいって、今から進路を変えるんですって」と。娘さんからのお話。
おじいちゃん、あなたの存在がお孫さんの進路を変えちゃったよ、と思うと同時に、私たちの関わりで少しでもそう思ってくれたのならこれ以上ないほどに嬉しくて、涙が出そうで言葉が出なかった。

死や、看取りは、辛く悲しいことだけではないと私に教えてくれたエピソードです。



ペンネーム:ひろちゃん

男性のがん患者さんAさん。長年、毎日日記を書いていたとのことで、その手帳を、看護師の私に見せてくださった。最近は、なかなかしんどくて書けなくなっていると、苦笑い。

数日後に、またそのAさんの担当になった。Aさんから、小さなお手紙を頂いた。どうやら、当時30歳手前で、結婚に焦っていた私は、Aさんにその話をしてたみたい。

手紙には、○○さんのような素敵な人には、きっといい人が現れます。私の娘も30過ぎまでうちにいて、どうなることかと、思ったけど、今は、いい人に巡り会って幸せそうです。頑張ってくださいと。

ご自身の体調も思わしくない中、私への気遣いに溢れていて、優しさに温かい気持ちになりつつも、少し恥ずかしかったのを覚えている。

2、3日のお休みを挟んで出勤した際、私は、Aさんへの返事の手紙を用意していた。朝、詰所へ行くやいなや、先輩から、今すぐ、Aさんの部屋へ行って!と。

お部屋に伺うと…、大勢の家族に囲まれたAさん。初対面のご家族に○○ですと、挨拶すると、○○さん!お世話になりました!父が、○○さんに世話になったと言っていました、と娘さん。

Aさんは、まさに、いまからセデーションを開始するところでした。
すでに、ほとんど意識は落ちているようで、声をかけてもお返事はありません。私は、ご家族にAさんから手紙を頂いたことをお伝えし、返事の手紙を読ませて頂いた。そして、Aさんのパジャマの胸ポケットに、手紙を入れさせて頂いて、ご家族と一緒にAさんにサヨナラの言葉をお伝えし、退室した。

数日後、Aさんはご家族に見守られながら、旅立たれた。

Aさんの優しさと、まるでAさんが見計らったかのようなタイミング。忘れられない患者さんです。

以上3作品となりました。


ツイッター賞

ツイッター賞は、
ハッシュタグ
#最期の自分に一言
を募集させていただきました。

講評

今回、特別審査員をしていただきました、早期緩和ケア大津秀一クリニック 院長 大津 秀一先生より、選評を頂きました。

いずれも良く、甲乙つけがたい。
大賞のたまちゃんさんの作品は「父のかっこよさ」がしびれます。作者の来訪で「みんな小さい頃、御神輿担いだりしたなぁ」と昔を思い出し、きっと歩まれた人生を振り返られたのだと感じました。
その中で”身近な人に「ありがとう」と伝えて逝く”という誰もが良いと思われる看取りと少し異なる話を選びました。
ひろちゃんさんの作品は、「○○さんのような素敵な人には、きっといい人が現れます。私の娘も30過ぎまでうちにいて、どうなることかと、思ったけど、今は、いい人に巡り会って幸せそうです。頑張ってください」という手紙が良い。毎日日記を書くなど筆まめな患者が、衰弱し書けなくなっていたのが、奮起して力を振り絞って看護師に感謝を込めて書いたことがよく伝わってくる。
スミレ@療養病棟ナースの作品は、時折患者さんの一部にもいらっしゃる「一人で逝きたい」「傍に誰かがいるのを望まない」という希望と少し近い部分もあり、このような考え方の人もいるだろう。画一的な「良い看取り」が全てではない、ということを示唆する内容で良いと考えた。natsuさんの作品は初めての在宅看取りに臨んだ作者の瑞々しさが現れているのがとても良い。最初のケースは本当に印象的なものですよね。

入賞された皆さん、おめでとうございます!



ナースライフバランスでは、 SNSを活用したオンラインサロン、各種イベント、情報など通して 看護師としてのいろんな働き方やプライベートを充実させるための情報や活動を通して1人でも多くの看護師が「自分らしさを」大切に、 自由で面白いナースライフを過ごせる世の中を目指します。