「1億円の低カロリー」 #ショートショートnote杯
「いかにカロリーをかけずに1億円作れるか。これで勝負しようぜ。各々好きな方法でいい。得意分野も違うしな。どうだ?」
六本木で酒を飲みながら、友人の一人が言い出した。
『面白そうじゃないか。』
素直が取り柄の私も、その時、このゲームに乗った。
起業家としての手腕が試される。
集まっていた友人たちは皆、負けず嫌いであることはわかっていた。
ちょっとしたゲームの提案だったが、その場にいた全員の目の色が変わっていた。
『さて、私はどうしようか。』
「...そんな時代もあった。楽しかったよ。」
血気盛んに、ビジネスに燃えていた当時のことを思い出して、目を細くする。
「でもな、みんな、無理がたたって身体を壊した。結果的に、あの言葉を馬鹿正直に受け取って、低カロリーの食事にしたおかげでこうして元気に生きてる。ゲームには負けたけど、あの時の決断は、1億円以上の価値があったと思ってるよ。」
孫にこんな話をするくらいには、私も年老いた。
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