看護師が使う、他人を変えたい時のとっておきの魔法
知り合いの看護学生から、こんな質問が来ました。
Q.糖尿病の患者さんを受け持っているのですが、隠れて飴を食べたり、コーラを飲んでみたりで数値が改善していきません。どう関わればいいのか悩んでいます。ヒントがあれば教えてください。
A.そのままのご本人の状況を認めよう。それを徹底してやってみて何もわからなかったらまた相談してね。
上記の返答をして2週間後、質問の主からお礼のメッセージが届きました。担当していた患者さんは、問題とされていた行動が嘘のようになくなったそうです。それだけでなく、しっかり食生活を気にするようになったとのこと。まるで魔法のようだった…と。
この患者さんの中で、何が起こったのでしょうか?
患者さんの気持ちを100%理解することは難しいですが、すこし相手の気持ちになって考えてみましょう。
「糖尿病になってしまった。なぜ自分だけ?みんなおいしいものを食べて生きているのに、私はだめなのか。今まで食べていた甘いものが恋しい。ダメなことはわかっている。でも少しだけなら!」
こんな風に考えていたかもしれません。
私はいつも思うことがあります。病気になった方々は、何か悪いことをしていたのでしょうか。なにかの罰なのでしょうか。
特に悪いことなんてしていないけれど、病気に苦しめられている。そんな状態なのではないでしょうか。
病気に苦しんでいる上に、看護師がガミガミと小言を言うことで本当に患者さんは救われるのか?と思います。
じゃあどうすればいいのか?
私が導いた答えは、「今のその方の状況を認める」です。
この患者さんの場合だと、隠れて甘いものをとってしまう。隠れるということは悪いと思っているからですよね。それって進歩です。糖尿病と付き合っていく生活パターンのを身につけるための、道筋の中にいるということですから。何かを身につけるとき、はじめからできた人なんていません。みんな試行錯誤を繰り返します。その先で新しい習慣が身につくのです。
「他人を変えることは不可能」とよく言いますよね。私も無理だと思います。変えてくれるのは本人だけです。ならば、本人が自分を変えたくなるようにすればいい。自分を変えたくなる時というのは、これではダメだと本心で気づいた時だけです。現状を受け入れて改善の必要性に気づかなければいけません。
ならば、できることはただ一つ。一緒にご本人の現状を認めることしかありません。認めるというのは、「コーラ飲んじゃったけど、まあいいか」という意味ではありません。どちらかと言えば「コーラを飲んだんですね。」と、共に認識するという感覚に近いです。
相談をくれた看護学生さんは、私の言った意味を一生懸命学んで理解し、上手に実践できた結果、患者さんが変化を見せてくれたのでしょう。
日本政府は入院期間を短くしようとしていますから、看護師側も入院期間中にすぐに変化を期待しがちです。しかし人間がすぐ変わることができたとしたらそれは習慣になったとは言えません。ぴったりな言葉が見当たりませんが、強いて言えば演技だと言えます。それぐらい、習慣を変えることは時間がかかるという覚悟が必要なのです。そしてその習慣が身についた時、その変化は魔法がかけられたかのようにうつるのです。
おしまい♡
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