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詩ぬら

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記事一覧

えんぴつを咀嚼し候。

私は筆圧が低いので、手帳には濃い鉛筆を使う 久々に持った鉛筆は軽く、木の匂い 書きあぐねていると、いつの間にか 唇で鉛筆を挟んでいた 懐かしい感覚が思い出された 鉛筆をかんでた幼いころのこと 記憶は曖昧だが口元の感覚だけが 明瞭に思い出される めしめしと木をへこませる歯の触覚 ただただそれがよかった 今は噛めそうにない 今は鉛筆でしか書けない言葉を感じて 確りと咀嚼し候

おーい おーい の中

道を訊かれても疎まない 私には常に答えのアテがあるのだ そもそも、この箱の中で 迷いようもないはずなのに 緩く笑っている様が 不思議である 迷うのも良い 問うのも良い 恥ずかしがらず大声出して おーい おーい と 自分の声が どのように響くのか どんな風に聴こえるのか 試してみるのも良い そうやっておーいの広さを 知らなきゃならない

波間に遊びし

ゆったり大きな波に振り落とされ 打ちあがって、屈辱と安堵を抱けば また波に呑まれて、もがくほかなくて 溺れてはならぬと身体に命ぜられ ただひたすら、息継ぎ。息継ぎ。 また打ち捨てられて、私は遊びに 砂を撫でて詩を記す

aの気持ち

やったことを省みることはあっても 思ったことを顧みることはあまりない 形が曖昧で目まぐるしいからなんだろう 惰性で言葉を記していたけど、 読み返してみれば、 少しばかり成形した心に触れられる 再び融け合うことはなく、 親しげに笑いかけて、 別れを告げたり、告げなかったりするのだ

鼻と背の高い、良いやつ

終電の雰囲気というのは 私にとっては気色悪く、興味深い 座っている人の殆どが スマホを見ている 終電じゃなくても、 そうであるが 終電の場合は、 スマホにあやされているかのように 無防備に、安心している 外の景色はおろか 車内に転がるゴミさえも 意識の外へ追いやっている 途中で乗ってきた鼻と背の高いやつは 連れの話を聞きながら、 相槌を打ち、 ゴミを足で止めた 連れが無視したゴミを  止めたのだ 止めた 良いやつだ 思わず、にやける

焼きそばパンの焼きそば

焼きそばパンの焼きそばが 本当に焼きそばなのか、 私は疑った この焼きそばは パンから独立しても 堂々と焼きそばを自称するだろうか 自分の心元なさに気がついて パンの間に流れ込もうとはしないのか パンの間以外の居場所で 彼らを証明するものは ない気がした

チメイとムメイ

ここらでは チメイというのは 断崖で舞うのと同じ ここらでは ムメイというのは 海面に漂うのと同じ どちらも不安でならない 一つは落ちる危うさに 一つは融ける危うさに まとわりつかれて ままならない

くもつくも

 無為の意識があるとして、流れる雲の形を表して留めようと思いたち何も持たずそれを見上げたが、案外雲はなく乾いて冷たい金属のような快晴であり私の思いも応えるように、さびた銅板のような様相を呈し始める。  良しも悪しも、雲も九十九も無いような日常の部品へと成形されてしまいもはや意識すらないようだった。

こすい

わずかに澄んでいる わずかに澄んでいた 濁りは溜まり 明澄なところはない 濁りに呑まれ やがてそのものになり わりあい澄んだ上澄みを かつての濁りを 惜しむこの先だろうか

むなしさも良し

ひらめきのままにメモを開いて 書き留めた言葉を見たところで 骨だけ残った稚魚であって どのように大きくなるのか なぜ育てたいと飼っていたのかも もはや忘れてしまったが こぼしたときの虚しさや 保てない私の思いの軽さに 突かれて痛むことはなく それも良しとするようになった

うおえー🤮

ものを吐くなら すべからく準備するべきだ 汚くともマシにみえるものだ 不潔でも穢れてても うおえーよりは マシなのだ

イミタテる

イミタテなければ、 意味がなくて イミタテてる間は、 他人事みたいで イミタテて イミタテて 私は信じきれなくても 何かに沿って やっぱりイミタテる

昔のビックマック

尊敬していた人が 自分の作品をビックマックと言っていて ハッとした 感じたのは恥 自分がビックマックを好きだった ことを恥じて、 それに対しても恥じる 昔のビックマックを 好きな自分を 好いていた

ブランコどうも

久しく ブランコを 見ていない 幼稚園のブランコは 無くなった よう 開いた ドアから 勢いよく 無人のブランコが 見えた 気がしたが 玄関を掃いていた 箒だった 一瞬 懐かしいと思ったが 無難な挨拶しか 出なかった