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日記:歌声は遥か

昨日は酒を飲んでしまったために日記を書かずに寝てしまいました……。



気になっていた『アイの歌声を聴かせて』を見てきました。最近、映画をいろいろ見に行くことができて楽しいですね…………。

とてもよかった…………。

感想を書きますね…………。




物語としてはとてもまっすぐな王道で、そのシンプルとも言える「AIと人間の交流」というテーマを、コミカルさも交えながら巧みに表現しているなと感じた。王道の物語というのは、シンプルであるが故にともすると「見たことある」の集積になってしまいかねないという恐れがあると思っているのですが、この作品はそういった鼻につくような部分が殆どなく、テンポよく進んでいくのでとても心地よかった。特に、序盤にキャラクターを登場させたりその背景にスポットライトを当てていったりする順番がかなり見やすく配置されていたように思う。「ここは紹介のシーンだな」と構造が見えてしまうような瞬間がなくて、続く展開に対する興味の持たせ方がちょうどよく、ずっとスクリーンにのめり込んでいくようになっていたような気がする。

そして作品の主題が自分のめちゃくちゃ好きなやつなんですよね……。自分は、動物だったり機械だったり、そういう存在が抱く感情を描いた物語が大好きで、それを力強くシンプルに押し出しているこの作品は、もうそれだけで満足度が高かったように思う。「動物や機械が人間に対して健気でいたいけで真っすぐな感情を抱く」という描写を好ましく感じてしまうのは、それこそ人間のエゴであるような気もするのだけれど、しかしその両者の間に横たわる断絶と、それすら超越する想いの力があり、それによって物語を駆動していく展開は見ていて非常に清々しく、同時に目頭も熱くなってしまう。


『初音ミクの消失』という楽曲がある。

この曲は「初音ミク」という電子の歌姫を思考する人工知能ととらえ、その視点から存在の消失に対する感情を歌っている。そこにはどうしようもなく「人間」と「AI」との断絶が存在する。AIが人間の都合によって生み出され使われるという構造があり、そしてAIに感情が存在する場合、どうしても悲劇を内包せざるをえない(これをもう少し敷衍すると、立場が異なる存在同士の間に横たわる断絶となり、それはどのような存在に対しても当てはまる問題につながる)。


『アイの歌声を聴かせて』におけるAI・シオンも、人間の都合によってその存在を左右され続ける。しかしそれでも、シオンは純粋な目で人間のことを、サトミのことを見つめ続ける。それが存在に与えられた理由だったからである。人間の誕生に理由はないが、AIの誕生に理由はある。そこに作り手である人間の意思が存在するからである。シオンは偶発的に生まれたAIではあるが、それでも「サトミを幸せにする」という理由を与えられて存在している。人間とAIの存在の非対称性、そこから見出してしまう悲劇性とそれを超越する機械知性の純粋な感情、それらがAIとの交流にまつわる物語に多く見られる主題であり、この作品はそれを見事に表現してみせたのだと感じる。


最後に、『アイの歌声を聴かせて』の重要なポイントをひとつ…………。

土屋太鳳さん歌うますぎ!!!!

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