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日記:姫の話

『竜とそばかすの姫』を見ました!以下、作品の内容に触れる感想を書いています。ネタバレ注意!


自分が見たことのある細田守監督作品は『劇場版デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』『時をかける少女』『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』。直近の2作品はタイミングが合わなくて見れていなかった。どうせならその2作品を見てからにしようかなと思っているうちに、見に行くのを先延ばしにしてしまっていたのだけれど、先日知人から薦められたこともあって、劇場に行ってきた。


事前のイメージとしては、どうやらインターネット上の仮想世界での話ということらしいので、『サマーウォーズ』と同じようなモチーフを今の時代に描くとどのような形になるのかなというところが気になっていた。あとは、知人の話によると、歌が良いらしい。


冒頭、仮想世界のチュートリアルから入るところは『サマーウォーズ』っぽいなと思った。セルフオマージュ的。違う点を挙げると、『竜とそばかすの姫』の仮想世界<U>では、生体情報から隠された能力を引っ張ったり、身体の感覚ごと世界に入っていったりと、仮想世界の在り方が身体的であるような気がする。あくまで画面の中の仮想世界であった『サマーウォーズ』の<OZ>とはこの部分に違いがある。

主人公のすずが<U>において歌姫のベルとして存在が有名になっていってからは、友人のヒロちゃんをはじめとした学校の同級生や、すずを見守る合唱隊の面々、そして<U>の中における竜の存在、正義を標榜し竜を追う集団……というように、たくさんの人物が次々に登場してくる展開が心地よい。

そして、この付近からは、かなり様々な読み取り方をすることができるとも思った。メインのストーリーラインとしては、<U>というもう一つの世界において、アバターであるAsの仮面を被ることで瞬く間に有名になっていくというシンデレラストーリーである。

だが、周囲の関係性に目を向けてみると様々な要素を拾い上げることができる。ヒロちゃんというプロデューサー的な立ち位置の友人と共にインターネットという巨大な世界に挑戦していく友情を見つめても良いし、学校という閉じた環境の中で恋愛感情というものが一触即発の状況をもたらすという思春期の社会性を見ても良いし、それを晒し合ったことで生まれるルカちゃんとの新たな友情の誕生を喜んでも良いし、しのぶくんとの大きくなってしまった幼馴染への距離感の難しさに心を悩ませても良いし、合唱団の面々と取り交わす会話に人生の先達としての含蓄に触れたり、それでも幸せの定義はわからないことについて考えてみても良いし、<U>の中の自警団的な存在が我々の現実のインターネットにおいて何のメタファーとなっているのだろうかについて思いを巡らせても良いし……。

各要素の描写は決して長いわけではないのだけれど、それらについて考えてみてもよいと思えるほどに、それぞれの切り取り方がとても綺麗だったなと思える。シーンは多く思えるのだけれど、それでもテンポよく進んでいくので、見ていてストレスがなかった。


物語の終盤において、すずはベルのアバターを脱ぎ捨て、そのままの姿で歌を歌う。ベルの姿でなければ歌えなかったはずの歌を歌う。それは、「竜」を助けたいと思う一心だろうか。

すずは現実世界でも「竜」のもとへと駆けつける。そして彼を守るために毅然と立ち向かっていく。それは、きっとそれまでの彼女にはなかった強さである。母を亡くし、歌うことができなくなっていた彼女が、自分の力で立ち上がるための強さを、一連の経験を経て手に入れるに至った。きっとこの物語は、そんな強さを手に入れる過程を描いた成長譚なのだと感じた。



ストーリーの視点を整理しつつ見ていたら音楽に集中するのを忘れてしまった……。サブスクに楽曲があるっぽいので聞いていこうと思います……。

『劇場版 少女 歌劇 レヴュースタァライト』のパンフレットの中で言及されていて気付いたのだけれど、映像作品の音楽というのはその世界を持ち運ぶための手段にもなりえて、音楽を聞くことで作品世界が一気に思い出されるというのが素晴らしい点だと思う。映画一本をもう一度見るというのは時間もかかるが、音楽を聞くのはそれよりもかなり手軽にできる行為だ。そうやって、より近くにあの映画の世界を感じることができるのである。

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