記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

日記:籠球

昨晩は少しお酒を飲み過ぎてしまって、寝て起きたら15時ほどだった。お酒は悪くないです。俺が悪い。



昨日観た『THE FIRST SLAM DUNK』があまりにもよかった。以下ネタバレありの感想……

来場者特典の安西先生タプタプステッカー

何人かから「観たほうがいいよ」と薦められていて、原作を読んだ人からは「原作読んでから観たほうがいい」と、原作未読の人からは「読まなくてもいい」とそれぞれ言われていたのでどうしようか悩んだ。結局読んだ。絵が上手いしテンポもいいし見開きの演出が決まってるしルールを知らなくてもなんとなくわかるし、名作として語り継がれている作品の力強さを思い知った。今なお存分に楽しめる。

原作を読み終わって満足したあと、気になったのは「映画でどの部分をやるのだろう?」という点だった。原作で最も盛り上がるのは山王戦であるのだろうが、そこだけ切り取っても映画として成立するのだろうか。映画のタイトルが『THE FIRST SLAM DUNK』となっているのも気になる。「FIRST」と冠するのであれば、なにかのはじまりを描くのだろうか? それをどのように表現しているのかがわからなかった。

映画がはじまって描かれるのは、湘北高校バスケ部の宮城リョータの過去だった。その時点では「メンバーそれぞれの過去を掘り下げていくのかな?」と思っていたがどうにも違うらしい。つまりは「宮城リョータを主人公に据えて、山王戦を再構成する」というのがこの映画のテーマであるみたいだ。すげえ……

山王戦の演出がとても素晴らしかった。逆転を仕掛けるタイミングで鳴り出す音楽が高揚を駆り立ててくれるし、重大なプレーの場面では何度も息を呑んだ。絶対王者を前に諦めず立ち向かっていく姿にひたすら震えさせられる。不可能を可能にする人間の力が鮮やかに魅せられていく。圧倒的な力を前に打ちのめされそうになっても、積み重ねた練習が、受け取った応援が、監督の言葉と戦略が、そして胸の中にあるはじまりが、再び闘志に火を灯す。その光景にただただ感動する。気づいたら何度も泣いていたように思う。

そして宮城リョータの過去も心に重く響いてくる。別れが色濃く残った思い出とどのように向き合うべきなのか。思い出すことが辛いなら切り捨ててしまうべきだったのだろうか。過去があり、それの続きのいまを生きている。決別も忘却もどうにも違うような気がする。そのことを覚えているままで、思い出をそっと抱きしめて、いまを前に一歩踏み出していく。山王戦が終わったあとのシーンで、葛藤が緩やかに解決されて未来へと向かっていく流れが描かれていたような気がして、そのことが心に暖かいものを灯してくれたように思う。

印象的だったのが、宮城家が誕生日のケーキを食べるシーン。妹のアンナがケーキを切り分けているのだが、何を言わずとも亡き長男であるソータのぶんを取ってある。そしてアンナは母に、ソータの写真を飾ることをさりげなく提案する。それを言うことのできるアンナの優しさと気の回し方が素晴らしいと思うし、それだけの時間が流れて、そして子供たちが前を向いていることが、母の気持ちを暖めたところもあるのかもしれない。

とにかくすごい映画だった……最後のプレーの静寂のあいだ、映画を見ているひとたちがまったく音を出さずに見守っていたのが、映画の力を物語っているようにも思う。静寂がスクリーンを超えて観客席を巻き込んでくる。そんな凄まじさがある。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?