見出し画像

食べたいもの

手のひらからはみ出る程の、大きい餃子を作った。もちろん本来ならば、こんなに大きい餃子は作らない。だけれども、通常の大きさの餃子を作る時間がなかった。餃子の皮の生地はホームベーカリーを使って簡単に作れる。その後の作業、出来上がった餃子の生地を小さく切って丸めて伸ばていく、これが大変で面倒なのである。この作業を遂行するには、誰にも邪魔される事のない、一定の纏まったひとり時間を要する。餃子の皮を一片に切って丸くして伸ばすという作業自体は全然嫌いではないのだが、“一定の纏まった時間“、“ひとりで“という条件になると、これは日中であれば不可能に近い。なにせ家には、5歳児と乳児がいるのだから。じゃあ市販の餃子の皮を使えば良いじゃないかというと、そういう訳にもいかない。アジア系の食料品を扱う専門店に行くと中国製の冷凍餃子の皮が手に入るのだが、それが餃子を包むだけの丸い皮といった感じで、あまりおいしくない。その上、それを解凍して餡を包んだ後は、少し時間が経っただけで皮がゆるくなってしまい、みんなくっついてしまうのだ。くっついては、破れてしまう。
餃子が食べたい。でも、市販の餃子の皮は買わない。ましてや手作りの餃子の皮を使って餃子を作る時間は無い。そして思い切って作ったものが、普通サイズの餃子と比べると何倍も大きい、でか餃子なのだった。大きめの一口で頬張って迸る肉汁を楽しむというような事は出来ないが、私がでか餃子を作る様を側で見ていたパートナーは、喜んでいた。「バカか?」と言われた。

私は苺の生クリームケーキが大好きなのだけれども、ここスウェーデンにはそのようなケーキは売っていない。ふわふわのスポンジケーキに生クリームがたっぷりと挟まっているケーキだ。似たようなケーキくらい、あるだろうと思うかもしれない。しかし、それがないのである。そもそも、スポンジケーキを土台としたケーキが少ない。あるとすれば、外側の部分を緑色のマジパンですっぽりと包んだプリンセストルタとか。あるいは、まん丸パンにアーモンドペーストと生クリームをたっぷり挟んだ、ワンピースのビッグマムが好きなセムラ。どちらもおいしそうに見えるけれど、マジパンもアーモンドペーストも食べない私は、苦手なのである。残念ながら、市販のケーキで食べたいと思えるものは、殆どないのだ。
ふわふわ生クリームのケーキが食べたい。最近は一週間か二週間に一度の頻度で、自分でこのふわふわ生クリームケーキを作るようになった。時間を見つけてスポンジケーキさえ焼いてしまえば、それを冷蔵庫に入れておいて次の日にケーキを仕上げればいいし、割と苦労は少なめで作れてしまう。作っている途中で5歳児が叫ぼうが赤ちゃんが泣き始めようが、なんとかなる。四角い型で焼き上げたスポンジケーキを半分に切って二段にして、さくらんぼ酒のシロップをしっかりと塗る。間には、緩まないようにホイップした生クリームと苺をたっぷりと挟み込む。冷蔵庫の一段をほぼ占めてしまう、でか四角ケーキだ。これを二、三日かけて味わう。一日目のフレッシュな味、二日目以降のスポンジがしっとりとした味、どこを取ってもおいしい。パートナーも好きなようだ。

画像1

画像2


サポートをする。