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Thunkableの特徴と将来性。できること・できないことの全て

ノーコードでスマホのネイティブアプリを開発したい人!

Thunkable(サンカブル)というノーコードツールをご存知でしょうか。

Thunkableは、日本ではまだ知名度が低いですが、ネイティブアプリのノーコードツールとして、海外では大きなシェアを持ち、184カ国に300万人のユーザーを抱え、800万件のアプリが作成されています。

このノーコードツールの特徴を一言で言えば、

ドラッグ&ドロップによるUIデザインと、パズルのようにブロックを組み合わせる自由度の高いビジュアルプログラミングで、ネイティブアプリをノーコードで開発・公開できるツールです。

今回は、このThunkableについて、実際にAndroid、iOSアプリをリリースしたノーコード開発者として、特徴などを紹介したいと思います。


Thunkableの人気度は?

様々なノーコードツールの中でも、スマホで動くネイティブアプリを開発したい場合に、主な選択肢は以下になるでしょう。

・Adalo
・FlutterFlow
・Draftbit
・AppMaster
・Thunkable

これらのノーコードツールの人気度をGoogleトレンドで見てみましょう。

まずは、日本での過去5年間の人気度です。

日本では、Adalo(青色)がダントツで人気です。

逆にAdalo以外のノーコードツールはほぼ圏外と言っても良いレベルで、利用者が少ない様子です。

Adaloはシンプルで使いやすく、誰でも簡単にネイティブアプリを構築できるので、最初に触るノーコードツールとしては納得です。

(私もノーコードデビューはAdaloでした✨)

次に、全世界での過去5年間の人気度です。

2018年、まだ他のノーコードツールが存在しなかった時代から、Thunkable(黄色)が最も大きなシェアを占めていることがわかります。

最近になって、FlutterFlowが急激に人気を博していますが、FlutterFlowは厳密にはローコードツールであり、単純な比較対象にはなりません。

FlutterFlowを除けば、Thunkableは実質トップであり、ネイティブアプリのノーコードツールとしては不動の地位を築いています。

ユーザー数も、Adaloは22万ユーザー、FlutterFlowは55万ユーザーに対し、Thunkableは300万ユーザーを抱えています。

また、Thunakbleは、2022年におよそ30億円の資金調達も行い、今後さらにユーザーの拡大が見込まれるでしょう。

ノーコードツールの選定の上で、そのツールを提供する会社の将来性も重要な観点ですが、その点に関しては全く問題なさそうです。

Thunkableの特徴




Thunkableの特徴は、ホームページに記載の以下の文言に集約されています。

Your Ideas Aren’t Templated
Your App Shouldn’t Be Either

https://thunkable.com/#/why-thunkable

訳:あなたのアイデアはテンプレート化されていません。
あなたのアプリもテンプレート化されるべきではありません。

昨今の、華やかで豊富なテンプレートを餌に、新規ユーザーの獲得を目論むノーコードツールに対するアンチテーゼのようなものを感じます。

実際のところ、どんなに美しいデザインであっても、テンプレート化されるような単純なアプリは市場に溢れており、あえて自分で作る必要はありません。

Thunkableが目指すのは、もう一歩進んだ、自分の独自のアイデアを実現するためのアプリ開発です。

この言葉の通り、Thunkableでは、テンプレートと呼ばれる雛形からアプリを作るようにはできていません。

それよりも、本来アプリの持つ機能を全て開放し、自在に組み合わせ、自分の思い通りの開発ができる点が特徴であるといえます。

それらを実際の機能として、どのように落とし込んでいるかについては、以下の4点が挙げられます。

1.ネイティブアプリならではの豊富なギミック

Thunkableでは、ネイティブアプリならではの機能をほぼ網羅しており、これらをノーコードで活用できます。

・カメラ
・マイク
・ウェブビューア
・ジャイロセンサー
・タイマー
・位置情報
・Bluetooth
・オフライン機能
・テキストの音声読み上げ
・プッシュ通知
・GoogleMap
・Open AI
・アプリ内課金
・Canvas
など

その他、スマホをバイブレーションさせたり、スマホが時間の経過でスリープ状態になるのを防ぐwakelock機能など、「痒い所に手が届く」機能が詰まっています。

他のノーコードツールも機能はそれなりに充実していますが、ここまで多彩なアクションに対応しているのはThunkableだけです。

大抵のアプリケーションは構築できますし、本格的なゲーム制作はできないものの、Canvasを使ってインタラクティブなミニゲームも作れます。

2.ドラッグアンドドロップによる直感的なデザイン



Thunkableでは、最近のノーコードツールのスタンダードである、ドラッグ&ドロップ形式のUIデザインを採用しています。

ボタンや画像などの部品を画面にドラッグ&ドロップして、直感的に組み立てていくことができます。

このドラッグ&ドロップエディターは便利なのですが、欠点もあり、複数の要素を綺麗に整列させるのが面倒という点があります。

しかし、最近になって、便利なレイアウト機能も用意され、要素を簡単に整列できる方法も提供してくれています。

また、ドラッグ&ドロップによる配置の他に、デザインツールのFigmaを利用している方であれば、Figmaのファイルをインポートすることで、Thunkableにそのままデザインを反映できる便利な機能も搭載しています。

3.ブロックを使った楽しいロジック構築



Thunkableの最も特徴的な点は、ブロックと呼ばれるパズルを組み合わせる方法で、裏側のロジックを構築する点です。

この方法は、Scratch(スクラッチ)などの教育用のビジュアルプログラミングを知っている方であれば馴染みがあるでしょう。

この斬新な構築方法におそらく日本人は戸惑いますが、チュートリアルを見れば、非常にシンプルであることがわかります。

慣れてくると、このブロックによる操作が非常に楽しく、同時にプログラミングの考え方の基礎を学ぶ上でも非常に良い教材となります。

Thunkable創業者の二人(Arun Saigal氏とWeiHua Li氏)は、もともとMIT(マサチューセッツ工科大学)のApp Inventorという、ブロックの組み合わせでAndroidアプリが開発できるツールを開発していました。

その後、GoogleがApp Inventorに似たBlocklyというビジュアルプログラミング言語を作り、ThunkableはこのBlocklyを組み込んで、ブロック形式のエディターを構築したようです。

4.データベースとの簡単な連携


アプリ開発において、ユーザーの情報やデータを貯蔵するデータベースは必須です。

他のノーコードツールは、ノーコードツール内に独自のデータベースを持っている場合が多いですが、Thunkableは、基本的に外部のデータベースにデータを保持します。

Thunkableに接続できるデータベースは、以下のようなものがあります。

・Airtable
・Firebase
・Googleスプレッドシート
・Webflow(ビジネスプランのみ)

上記はあらかじめThunkableに組み込まれているため、手順通りにクリックをするだけで、簡単に統合が可能です。

それ以外にも、XanoBackendlessなどのバックエンド側のノーコードツールにも、APIで接続可能です。

APIを利用したデータベース連携は一つ上のレベルになりますが、こちらもチュートリアルの手順通りに行えばクリアできます。

データベースの操作(レコードの作成、読み出し、更新、削除)はアプリ開発において不可欠なことですが、うまく動作させるために、最初は試行錯誤が必要になります。

しかし、その手探りのプロセスの中で、かえってプログラミングにおいても重要な概念を学ぶことができるのも大きなメリットです。

Thankableのデータ統合
https://thunkable.com/#/integrations

その他のThunkableの嬉しい点

1.編集画面での変更がスマホに即時反映されるLiveTest機能

Thunkableの優れた点として、画面上で変更した内容が、ほぼリアルタイムで自分のスマホ上に反映され、動作確認ができる点です。

Adaloなどのネイティブアプリのノーコードツールは、ウェブ上で動作をプレビューすることができますが、いざ実際のiPhoneやAndroid端末でアプリを動作させてみると、思うように動かないことがあります。

FlutterFlowに関しては、ウェブ上でプレビューをするために、ビルド完了を何分か待たなければならず、かなりストレスが溜まります。

その点、ThunkableのLiveTestアプリを実機にインストールすることで、実際の使用環境と同じ環境で、iPhone、Andoroidの動作テストができます。

さらに、プロジェクト上の変更がほぼリアルタイムに反映されるため、動作を逐一確認したい初心者ユーザーにとっては、非常にありがたい仕様になっています。

2.iOS・Androidのファイルダウンロード

ノーコードツールでアプリを開発した際に、万が一そのノーコードツールを提供する会社が倒産した場合、自分が構築したアプリもサービスを終了せざるを得なくなります。

例えば、Adaloは、そうしたプラットフォームに依存したサービスの一つで、経営に万が一のことがあれば、構築したアプリが無駄になることもありえます。

そのため、iOSやAndroidのファイルがダウンロードでき、サービスを継続できる仕組みを提供しているかどうかも、ノーコードツールを選ぶ上で、重要な観点です。

Thunkableでは、ProプランではAndroidのファイルがダウンロードでき、Businessプランでは、iOSのファイルもダウンロードができるため、その心配は不要です。

3.ユーザーコミュニティが活発

Thunkableのコミュニティは非常に活発です。

疑問に思っていることのほとんどはコミュニティで誰かが回答してくれていたり、実際のプロジェクトファイルを公開してくれており、自分のアプリに流用することも可能です。

当然、日本語ではないので、Google翻訳を駆使する必要がありますが、ナレッジの蓄積が多いことは大きな強みの一つでしょう。

また、有料プランにアップグレードをすれば、メールによるサポートも受けることができます。

Thunkableのアプリ開発事例

Thunkableで作られたアプリの開発事例をいくつか紹介します。

・アメリカの9歳の少女が、他の楽器演奏者と交流・オーディオを共有できる音楽アプリを開発
https://katv.com/news/local/9-year-old-little-rock-girl-creates-global-music-app-may-receive-google-play-deal

・工科大学でウイルス症状スクリーニングアプリを構築
https://www.providencejournal.com/story/news/coronavirus/2020/08/27/ri-tech-high-school-builds-virus-symptom-screening-app/42436469/

・イギリスの14歳の少年が、ヴィーガン向けアプリを開発、25,000ダウンロードを達成
https://www.huffingtonpost.co.uk/entry/looking-for-vegan-and-veggie-food-swaps-this-teenager-designed-an-app-to-help_uk_5c8a28c1e4b0fbd766210304

・イエメンで、ジャイロセンサーで適切な太陽光パネル設置を支援するアプリが、6万ダウンロードを達成
https://www.fastcompany.com/40417060/how-a-man-with-no-coding-experience-built-an-app-thats-bringing-solar-power-to-yemen

その他にも、本格的なビジネスアプリとして、企業で活用している事例もあります。

印象的なのは、一市民がアプリを開発して、目の前の社会問題を解決しているという点です。

これまでは、アプリ開発はエンジニアしかできず、外注するのにも時間とお金(日本だと最低でも50万〜)が必要でした。

そのため、問題を解決するアイデアがあっても、「何もしない」という選択肢を取らざるを得ませんでした。

しかし、Thunkableのようなノーコードツールの登場によって、市民が問題解決のために、自分でアプリを開発することが可能になりました。

日本でも、ノーコードの登場で、市民が積極的に社会問題をアプリで解決していく動きが広がるといいと思います。

Thunkableのよくない点


どのノーコードツールも、使い込んでみて初めて分かる不便さがあります。

私がThunkableで実際にアプリを開発・リリースして感じたよくない点は、以下です。

1.デザインがあまり洗練されていない

Adaloは、デザイン性を重要視しており、編集画面も美しく、ユーザーも簡単に綺麗なUIを作成できます。

また、Adaloは、トランジション(画面遷移)のアニメーションエフェクトも豊富で、ヌルヌル動いて楽しいです。

一方のThunkableはどちらかというとロジックの自由度を重要視しており、デザイン面での整備がやや遅れている印象があります。

Thunkableは世界中にユーザーがいますが、失礼な言い方をすれば、機能を果たしさえすれば、美しさにこだわらない層が多いのかもしれません。

エディターの画面もやや淡白な印象ですし、デザイン・スタイリングに関するコンポーネント・機能が不足しがち、トランジションのパターンも少ないです。

また、iPhoneやAndroid端末の様々な画面サイズによって、表示のされ方が若干違っており、一貫性のあるデザインを表示するのも工夫が必要です。

今後のアップデートで改善される可能性はありますが、現時点では、Thunkableで繊細で美しいデザインのアプリを作るのには、少々骨が折れるかもしれません。

2.学習曲線は少しだけ急

Thunkableは自由度の高い開発が可能ですが、自由度が高い分、使いこなすまでの学習曲線は少しだけ急といえます。

しかし、それでも同じことをコードで開発したり、FlutterFlowで開発をするよりも、はるかに楽です。

また、Thunkableは、ツールの扱い方が難しいというよりは、プログラミングの概念の理解をするために時間がかかるというイメージです。

実際に、Thunkableは、世界中の一万を超える教育機関と提携をして、コンピュータサイエンスの教育に活用されているとのこと。

そのため、学習に時間がかかったとしても、Thunkableで実際に手を動かして学んだプログラミングの基礎は、他のノーコードツールを使う時や、新たにプログラミングを始めるときにも必ず活きてくることでしょう。

3.他のノーコードツールにある機能がない

例えばAdaloにあるカレンダーや、バックグラウンド再生可能なオーディオプレーヤーといった機能は、Thunkableには現時点ではありません。

これは他のユーザーからもリクエストがあると思われ、順次機能追加される可能性があります。

そうした足りない点を補完する機能として、Thunkableには、WebViewExtensionsという拡張機能があります。

この機能は、アプリ内に埋め込んだWebページと、アプリ間でデータの連携ができる機能です。

例えばHTML・CSS・javascriptで作成したオーディオプレーヤーのWEBページを作り、それをアプリに組み込みます。

アプリから、オーディオのURLをWEBページに連携して、WEBの仕組みを使ってオーディオをバックグラウンド再生することもできます。

これはもはやノーコードの領域ではありませんが、不足している機能をWEBの技術で補うことができるのは、大きなメリットです。

4.iOSアプリの公開手順がやや複雑

Thunkableでは、Androidアプリの公開は非常に簡単です。

一方、iOSアプリの公開については、Adaloに比べると必要な設定が多く、設定の漏れがあるとビルドに失敗するケースがよくあります。

ドキュメントに沿って一つ一つこなせば難しいことはありませんが、時々自分では原因がわからないエラーが起きることもあります。

その場合は、サポートに問い合わせを行うことで、大体のことは解決することができます。

とはいえ、iOSの公開作業は、そもそも非常に複雑なプロセスであり、それをノーコードで実現できるだけでありがたいことではあります。

Thunakbleの料金体系

気になる料金体系についても触れておきたいと思います。

Thunkableは、基本的に無料でアプリの構築を始めることができます。

ただし、Freeプランでは、自分が制作中のプロジェクトは常に全世界に公開されている状態です。

そのため、誰かに制作中のプロジェクトを見られたり、コピーされたりする可能性があります。

ちょっと使用感を確かめたい、あるいはチュートリアルで学習を行う段階であれば、無料のFreeプランで十分でしょう。

その後、本格的に自分のアプリを制作する場合は、スタータープラン(月額$13)にアップグレードすることで、自分の制作中のプロジェクトを非公開に設定できます。

そして、実際にアプリをApp StoreやPlay Storeに公開する場合は、Proプラン(月額$38)へのアップグレードが必要です。

ここで気をつけなければいけないことは、Proプランの状態でアプリを公開すると、アプリを開いたときに最初に表示される画面(スプラッシュスクリーン)に、Thunkableのロゴが表示されます。

これはBusinessプランにアップグレードしないと、変更不可の仕様になっています。

もし個人の趣味でアプリを制作・配布する場合や、社内向けのアプリであれば問題ありませんが、アプリを自社サービスとしてリリースする場合には、これは大きなネックになります。

そのため、スプラッシュスクリーンを自社独自のロゴに設定し、アプリの公開をするには、Businessプラン(月額$200)にアップグレードが必要となります。

一気に費用が高くなりますが、その分、エンタープライズ仕様のサービスを利用可能になります。

・専任の担当者が付き、サポートが手厚くなる
・AndroidやiOSのファイルを無制限ダウンロード
・独自のフォントをインポート
・レスポンシブWebアプリを公開可能

とはいえ月額$200は、他のネイティブアプリのノーコードツールと比較しても、そこまで高価ではありません。

AppMasterやDraftbit、Adaloでも、全ての機能にアクセスでき、複数のアプリを公開できるビジネスプランでは大体同様の価格設定です。

また、Adaloの場合、ユーザー数や複雑さが増すと、さらにアクション数に応じた従量課金が発生します。

趣味でちょっとしたアプリを開発したい個人開発者にとっては、一つのハードルになりそうですが、複数のアプリを開発する人や、会社での利用であれば、十分元が取れるほどの価値はあります。

Thankableの料金ページ
https://thunkable.com/#/pricing

Thunkableは、将来性大のノーコードツール!

アイコンキャラクターも可愛い?

以上、ノーコードツールのThunkableについて、詳しく紹介してきました。

いちユーザーとしての感想は、

「無限の可能性を感じさせる、非常に優れたノーコードツール」

だと思います。

まだプロダクトが様々な面で成熟していないものの、コアとなる機能は、他社の追従を許さない優位性があります。

将来的には、デザイン面・機能面がさらに充実し、多くの人が使用するノーコードツールになるでしょう。

日本においては、あまりにマイナー感があるThunkableですが、実際にアプリを構築してみて、とても優れたツールと感じたため、今回記事を書いてみました。

無料で始められて、YouTubeでのチュートリアルも充実しているので、ぜひ皆さんにも触ってみていただきたいと思います。

ありがとうございました!

Thunkableのホームページはこちら
https://thunkable.com/


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