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3つの丸でも心が動く、「現代4コマ」への招待

電撃走る問題作


こんにちは。なむさんです。

衝撃とはふと、思いがけずに訪れるものです。
ある日のツイッター(現X)に、衝撃の作品が投稿されました。

んぷとら作 現代4コマ (無題)

「#現代4コマ」とだけ書かれたこちらのツイート。

これを見てどう思いますか?
「現代4コマ」ってなんだよって疑問はいったん置いておいて、
「丸が三つあるだけだが…」と思う人が大半だと思います。実際そういう作品です。
しかも4コマと言い張っている割に、4コマ要素が一切見当たりません。

しかしこれ、自分にはものすごいパワー鋭さを持って映りました。
もちろん「4コマ」、「現代4コマ」として。

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今回はこの作品で感動したポイントを伝えるべく、新参ながら作品投稿もしている私が、

  1. 「現代4コマとは何か」

  2. 「自分がどういう視点で作品を鑑賞しているのか」

  3. 「んぷとら作現代4コマ(無題)がどう優れているのか」

の章立てで、3つの丸だけで感動できる私の視野を共有します。
かかってこい!!

※注意
私個人の感想です。作者んぷとら氏の制作意図とは恐らく一致しません。


現代4コマとは

まず現代4コマってなにかと言うと、

「型にはまらない4コマ表現作品群」

と言うのが近いと思います。代表作はこのあたり。

元々いとととは「自分を4コマ漫画だと思い込んでる4コマ」というシリーズで、4コマ漫画とは言い難い4コマ作品を制作していた。その中で「現代アートの4コマ」というネタを思いついたが、いとととはこれを「1つのネタで消費してしまうのは勿体ない」と考えるに至った。そこで「現代4コマ」というハッシュタグをつけ、アート的な4コマをTwitterに公開するようになった。

  「現代4コマ - 現代4コマwiki」 https://w.atwiki.jp/gendai4koma/pages/18.html

現代アートって難しかったり、よくわかんなかったり、あまりに抽象的なのが多いっていう印象がちょっとはあると思います。偏見だけど。
で、逆に道端とかで突飛なものを見たとき、「現代アートっぽい」って感じることあるじゃないですか。あれの4コマ版です。

今では創始者のいととと氏をはじめ、ツイッターを中心に数多くの方が「突飛な4コマ」、「ぽくない4コマ」を投稿しています。これが「現代4コマ」です。

鑑賞の視点

現代アートのようとは言いましたが、現代4コマ作品はそれとは少し傾向が異なります。#現代4コマ でツイッターを見てみましょう。いっぱい作品が並んでいて、よくわかんないのもたくさんあると思いますが、とりあえず3つの鑑賞の視点を紹介します。

笑えるナンセンスさ

4コマ漫画を基本とする作品群ゆえ、笑える作品はそれだけで魅力があります。

いととと「運命を思いついた瞬間」

現代4コマを定義づけた作品の一つ、上でも出した「運命を思いついた瞬間」です。これはなぜか頭にあの音楽が流れてきてしまうのがとても良く、笑えてしまいます。これでいいんだ。人ってこれだけで音楽引っ張りだせるんだ。

こういうのだよこういうの。

これは4コマじゃねーだろ!!
そういうツッコミもウェルカムです。ツッコんで笑って楽しみましょう。

現代4コマ独自の新しい表現

ただの4コマ漫画にはない、独自の表現にも要注目です。

2コマ目以外は一色だけ、しかもその2コマ目も小さな火が見えるだけですが、それだけでお誕生日会のワンシーンを表現。

こちらはコマと人物を等間隔にずらして、独自の表現で移動する様を導き出している作品。4コマ漫画からずいぶん遠いところに来ました。

風景に4コマをうまく当てはめた作品もあります。「これ4コマにできるかも?」という発想がいいですね。

4コマ認識の際への挑戦

これは4コマと言えるだろうか?そういった4コマ認識の際に挑む、実験的な作品も多くあり、議論の題となることもあります。

一見4つの枠がありますが、全てどこかで途切れており、枠は一つもありません。でも4コマに見える。

8コマあるけど、4コマだった姿を想像できるので4コマとも思えます。

鑑賞まとめ

以上の3視点、「笑えるナンセンスさ」、「現代4コマ独自の新しい表現」、「4コマ認識の際への挑戦」の何か、あるいは複数をどれくらい満たしているかを考えて鑑賞することが多いです。作る時も似たようなことを考えています。
これはあくまで自分の場合で、他の視点もたくさんあると思いますが、こういう見方がわかると結構面白く見られるんじゃないでしょうか。

「・・・」がどう優れているのか

表題のんぷとら氏の「無題」に戻りましょう。「無題」だとピンとこないので、便宜上「・・・」と呼びます。

以下「・・・」と呼びます

この作品ですが、まず、3つの鑑賞視点からするとどれが突出してそうでしょうか?
そうです。「4コマ認識の際への挑戦」ですね。ぱっと見4コマじゃないからね。

とは言え、4コマに見えなければ、「4コマ認識の際への挑戦」は失敗と言わざるを得ません。黒い丸のみ、しかもそれが3つだけの作品、本当に4コマなのでしょうか?

枠だけの4コマと見比べてみましょう。

並べてみる

…まだわかりにくいので、枠だけの4コマを少し変形します。

変形すると…?

もうおわかりですね。色分け図解するとこうなります。

くわしい図解

つまり、4コマを「外枠」、「仕切り」の二つに分けて表現しているのが「・・・」という作品です。4コマを四角を4つ置いたものと捉えなかった、文字通りの新たな枠組み、再解釈です。

しかも、その再解釈だけでは終わらず、大胆な省略と、極端な抽象化を進めています。
ただ「外枠」と「仕切り」にわけただけなら、このような作品となるでしょう。

「外枠」と「仕切り」にわけただけの4コマ

4コマということは伝わりますが、「4コマ認識の際」に挑めているかは疑問です。もっと踏み込みたい。

そこで、外枠は画像の縁そのものに任せて大胆に省略し、仕切りの棒は更なる極端な抽象化を進め、黒丸として表現してしまった。

「外枠」の大胆な省略と、「仕切り」の極端な抽象化

この2重の跳躍を経て、「・・・」は「4コマ認識の際への挑戦」を成功させたのです。

※注意
私個人の見解です。作者んぷとら氏の制作過程とは恐らく一致しません。

いい作品はいつ見てもいい

以上、現代4コマ鑑賞の視点から解説する、んぷとら作の現代4コマ(無題)のご紹介でした。改めて元ツイートはこちら。

皆さんも現代4コマを作ったり、見たりして遊んでくださいね。黒丸三つで感動できる世界はそうそうないぞ!

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