見出し画像

するめなことば・その3

噛めば噛むほどおいしい味がする、愛すべきことばたち。
またまた前回に引き続いて、いくつか並べて愛でてみることにする。

なんかほんと、介護施設みたいに色々やってもらってごめんね。

職場の同僚のことば。わたしの隣の席に座っている彼女はかなりのベテランで、業務に関する知識と経験はすばらしいものの、電子機器類の操作が苦手だった。
とりわけパソコンに関する知識や操作が振るわないため、操作の仕方を教えたり作業を手伝ったりして差し上げていたのだ。
そこで彼女は言ったのだ。「なんかほんと、介護施設みたいに色々やってもらってごめんね」と。
いつもお世話になってごめんね、とかではなくて、なんともパンチの効いたワードが飛び出してきたので面食らってしまった。
強く否定するのもなにかと角が立つ気がしてしまって、「いえいえいえいえ……」とやんわり、もにょもにょと口にしながら、いただいた飴ちゃんを頬張り、カタカタとキーボードを打ち、「いえいえいえ……」と無限にくりかえしながら、なんとか事なきを得たのだった。

お米炊いてるんですか!えらいですね!

これも職場で出会ったことばだ。夜おそくまで職場に残っていたところ、シャコ…シャコ…となにやら不思議な音が給湯室の方から聞こえてきたため、わたしは同僚と共にそちらへ向かった。

するとそこには米を研いでいる先輩の姿があった。職場にはシャワーもあり、寝泊まりをする強者がいるというのを耳にしたことがあったのだが、まさかの炊飯をする姿を見てわたしは若干引いてしまった。
しかしわたしと同行していた同僚はそこで言ったのだ。「お米炊いてるんですか!えらいですね!」と。そして「いつも面倒で、家でもパックのご飯レンチンしたり、コンビニで買ったりしちゃいますもん。すごいな〜!」と続けた。
そう言われると先輩は「いやあ。米さえ炊けば、人生なんとかなるかなって俺おもうんだよね」と笑い、自前のお茶碗を爪の先でカツカツ、と得意げに叩いてみせたのだった。
いや、そこは米とか炊かねぇでさっさと仕事終わらせて家帰れよ、とは口が曲がっても言い出せなかったのだった。

だってわたし、赤のほうが好きだからさ。

これは友人が発したことば。通販か何かの話をしていたときに、送料について話題が及び、レターパックの話になった。そこでたしか、わたしが「レターパックって値段によって厚みと重さの制限がちがうんだよね」というようなことを言ったのだ。
すると「えっ!?ぜんぶおなじじゃないの!?」と友人は驚いた。どうやら青いレターパックライトと、赤いレターパックプラスというものが、デザイン違いの全く同じものだと思い込んでいたらしいのだ。

しかし友人から赤い高価な方のレターパックを使って郵便を送ったもらったことがあったので、わたしは疑問をぶつけた。
「じゃあさ、今まで送る時、どうやって選んでたの?」
「え?いや、全部赤い方にしてたよ」
「郵便局の人に大きい方を薦められたってこと?」
「いや。だってわたし、赤のほうが好きだからさ

……なるほど、と妙に納得してしまった。それと同時に今まで自分が厚みや重さを測って、たかだか150円そこらの違いのために、なんとかして安価なレターパックを使って送れぬものかと画策していたのが、とても恥ずかしいことのように思えてしまった。

えっ、今日弁当こないの!?

職場の同僚のことば。以前雪が降った際に、「オオモリ」という苗字の者が、雪のために来られないという旨の連絡を受け、上司に伝達した。
「すいません、オオモリが、雪のために来られないそうで……」
そこまでわたしが口にしたところ、近くにすわっていた同僚が目をみひらいて「えっ、今日弁当こないの!?」と大声で叫んだのだ。

職場で弁当の注文ができるのだが、以前雪の日に食料の調達が難しく、業者が米を炊くことができずに配送ができなくなったことがあった。しかしその時もなんとかおかずだけは作ってもってきてくれたのだった。だが大盛りを頼んだ分も一律で並盛りにされてしまい、米はパックのレンチンのものが代わりとして充てられていたのだ。まああるだけありがたいよねと話しながら弁当を食べたのだった。

そこで今日の連絡である。まるでコントのようなやりとりだった。
わたしの発言を受けて、例の炊飯器事件の先輩が意気揚々と席から立ったのが見えた。
「ちがいます!来られないのはオオモリさんです。弁当はきっと来ます!」と訂正すると、炊飯器先輩は少し悲しげな顔をして自席に腰をおろしていた。ちょっと気分がよかった。


内科の病院で受診をおすすめいたします

先日通販でフットレストを購入した。パソコン作業を続けると足がむくんでしまうため、足置きとして購入したのだが、これがけっこう良い。
以前までは足をつい組みたくなってもぞもぞと落ち着かず、足を組んでみたり組み直してみたりして、結果的にむくみがすごくて辛かった。
だがフットレストに置くことによって足を組まなくても作業を続けられるようになり、姿勢も崩れずに作業に没頭できるようになったのだ。
商品については文句を言うところがひとつもない。
ところが同梱されていた「こんなお悩みのときは?」という紙面が非常におもしろかった。

同梱されていた紙面がこちら

さまざまなトラブルに対して解決方法が示されているのだが、結果的にどの悩みも「弊社説明不足」という要因に集約され、処置方法もすべて同じであるところがまずおもしろいのだが、注目すべきは一番上の項目である。

「疲れがとれない」という悩みの要因は「病気の可能性」であると示され、それに対する処置方法として書かれていたことばが「内科の病院で受診をおすすめいたします」という先述したものであった。
元も子もないこのバッサリとしたことばの切り口の鋭さに、たいへん笑わせていただいた。そうだね。疲れがとれなかったら病院にいこうね。

いいの?こんなおっきい音出すとふたりともおきちゃうよ?ほんとにいいの?

これはわたしが先日寝ぼけたときに胸の内で抱いていたことばだ。目覚ましのアラームの音があまりにもうるさく感じて、ねぼけ半分にブチ切れながら「いいの?こんなおっきい音出すとふたりともおきちゃうよ?ほんとにいいの?」と、アラーム音に対して湧き上がった怒りがとまらなかった。
もちろん我が家に住まうのはわたしひとりである。ああこわい。そんなひとにはこれこそ本当に、内科での受診をおすすめいたします。


するめなことば。
つづきはまた、あらたなことばに出会ったときに!