沼津のビルの物語
定休日、ご近所にオープンした酵素風呂へ行った。
沼津駅からすぐ近くのビルの3階。
このビルは、2019年まで「一輪(いちりん)」という和食屋さんで、1階から3階までのそれぞれの階で趣が違って、目的によって楽しめるとても粋な場所でした。
2階には、一枚板のカウンターに、板前さんと、色っぽくもあり、ちゃきちゃきとした小気味良い素敵なママが居て、いつも賑わっていました。
当時、30代のわたしは、離婚して、鳥取から沼津に10年ぶりに戻ってきて、沼津の夜の飲食店を何も知らなかったのだけど、高校の大先輩女性が、よくこのお店に連れてきてくれた。
その先輩女性は、草笛光子さんに似ていた、ベリーショートにパリッとしたスーツの社長さん。
一輪のママは、太地喜和子さんに似ていて、お二人とも沼津の素敵な憧れの女性でした。
当時、私は、アーユルヴェーダ(インドの予防医学)の考え方に基づいたエステサロンに勤めていたのですが、一輪のママが定期的にケアに来られていたこともあって、飲食店の華やかな表舞台を、細やかな気配り、心配りで支えるママの日常のメンテナンスのお手伝いができることが、誇りでもありました。
飲食店から酵素風呂になったビルの3階の階段を登りながら、華やかで楽しかった夜の時間の思い出が、ぐるぐると万華鏡のように、蘇りながら、酵素風呂の扉を開く。
初めての酵素風呂に緊張していたけれど、テキパキと、にこやかなお姉さんの対応に安心しながら、カウンセリングシートに記入して、少し話をしていたら、何のキーワードが発端だったか忘れてしまいましたが、あのママの娘さんということが判明。
ママもお元気だそうで、良かった。
娘さんが、2階の飲食をリニューアルオープンされるそうで、それも楽しみ。
酵素風呂、かき混ぜる作業で、汗だくになられてました。
この穴に、横たわること、20分。
70度くらいになるそうで、全身がじわじわと温まる。
ビルの歴史の重みも感じながら、汗が、たくさん出て、身体の中のいらない物が流し出されて、すっきり爽快。
飲食店から形は変わっても、ママから娘さんに受け継がれた、しなやかさと逞しさ、同じ沼津の街中でお店という場を持つ同志のような気持ちにもなって、心も身体も満たされた時間でした。
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