閉鎖病棟に入る(2)

洗面器や歯ブラシ、うがいコップとタオル、石鹸、それにわずかな着替えを持って、病室へ。病棟のドアはつねに施錠され、看護師しか開けることは許されないが、病室のドアは患者が勝手に閉めることを許されておらず、いつも看護師に見えるよう開けっぱなしておかねばならなかった。部屋のベッドは四つだが、わたし以外には二人の患者しかいなかった。一人は80がらみの老人。静かにこちらを睨んでいる。わたしが挨拶すると、ベッドに腰かけたまま、やはり静かに頭を下げた。もう一人は10代の少年。あとで年齢を尋ねると、16歳であった。わたしはこの、一見人懐こく見える少年とすぐに打ち解けた。ちなみに入院して数日で石鹸は消えた。「ああ、ここでは人に見えるところに石鹸を置いちゃだめですよ」。少年が教えてくれた。

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