閉鎖病棟に入る(14)(終)

閉鎖病棟で診察を受け始めた頃、主治医が言った言葉は今も印象に残っている。

「あなたのような、いわゆる大学院卒で『先生』と仰がれる立場の人が、こうして治療ベースにまで上がってくることは、じつは非常に稀なんですよ。わたしも発達障害で「先生」と呼ばれる立場の人を治療するのは、あなたが初めてなんです。だから今回の治療には、わたしは非常に強い医学的関心を持って取り組んでいます」

そういえばこんなことがあった。わたしの友人に非常に頭のきれる人がいた。彼もひょっとしたら発達障害かもしれないと、わたしはつねづね思っていた。なので「今、こんな治療を受けているんだけど。きみもどうだ」と勧めたことがあった。すると彼はこう言ったのだ。

「精神科医が言いそうなことくらい、病院に行かなくてもすべて分かるし、それに対するぼくからの反論も今だいたい想定できる。だから行っても仕方がないよ」

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