25年前のこと(前編)
私は実家の二階で激しく揺さぶられながら、生まれて初めて本気で命乞いをした。浪人生活に疲れ、「死にたい」と毎日のように思っていた。それなのに、このときばかりは違った。「生きたい」しかなかった。ふだん本能など意識したことはない。しかしこれが生存本能というものだったのかもしれない。轟音と共に部屋のあらゆるものが崩れ落ちてくるなかで、わたしは布団に丸まって祈った。
「神さま、助けてくださぃ!」
夜が明けて、家のなかを見たとき、わたしは片付けるのを諦めた。ふだんは優しい母でさえ、「こん