25年前のこと(前編)
私は実家の二階で激しく揺さぶられながら、生まれて初めて本気で命乞いをした。浪人生活に疲れ、「死にたい」と毎日のように思っていた。それなのに、このときばかりは違った。「生きたい」しかなかった。ふだん本能など意識したことはない。しかしこれが生存本能というものだったのかもしれない。轟音と共に部屋のあらゆるものが崩れ落ちてくるなかで、わたしは布団に丸まって祈った。
「神さま、助けてくださぃ!」
夜が明けて、家のなかを見たとき、わたしは片付けるのを諦めた。ふだんは優しい母でさえ、「こんなときに弱音ばっかり!」とわたしへの怒りを露わにした。
地震のあったその日の夕方、私は家族と離れ、教会へ避難した。家族はスポーツセンターへ行った。だがわたしは
「ぼくはクリスチャンだから」
と、この時とばかりに意気込んで独り教会へと向った。
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