詩:やさしみ

やさしみをおぼえて
かえる
無数のきんいろ無数のあなぼこが
ああ、こんなところにあったのか
アスファルトを割るぶっとい根っこは
景観や電線のさまたげになる
こんな木は切ってしまいましょう
薬でもかけておきましょう
道がでこぼこしていけない誰かけがでもしたらいけない
町のせいにされては町のたつせがない
大丈夫
大丈夫これらは資源ゴミになります
なんならあなたの家になります
あなたのかえる家
柱、机、椅子、食器棚
あなたの将来の杖だって
このくずを固めてボンドで固めて
だから大丈夫
大丈夫
かなしみをおぼえて
始終おぼれていた
かえりみちはいつもぐちゃぐちゃに粉砕されて
歩くのはだから平易で
平易だから頭まで沼につかってても平気で
やさしみをふっとおぼえて
これはたぶん母乳よりも先に知っていて
子宮よりも先に知っていて
生まれる前から生まれることを
そんな光があることを知っていた
あなぼこは
そんなふうな穴だ
穴の底からどうしようもなく漏れてくる光だ
すりつぶしたものから漏れてくる
ひっ迫してたまらない光だ
無数のやさしみに
取り立てられるようだ

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