詩:元日、南中

元日の南中は低い位置から
30度ぐらいの鋭い角度で
骨の多い傘のよう
光る骨の傘をかぶったドームのよう
光るドームのような公園を歩いた

すみれの花壇の隅に
霜柱の縁取り
影が昨日の夜からそこを陣取り
年の明ける前から影が
その霜が生える温度が
その縁があった

初詣には行かなかった
少し歩いた場所の大きな公園に行った
ペダルの無い小さな自転車が
得意そうに横切っていった
かろうじて木々に残っていた葉が
視線の先に数枚舞っていて
流れるように葉がきらきらと舞っていて
風の通る道を
無風めいた元日の公園に
風の通路が、トンネルのようにかすかにあった

梅がいい香りだという、
そんな声が聞こえて私も梅林に行ってみる
咲いている木は少なかった
枝に札がかかっている
「古城」「水心鏡」「芳流閣」「ぶんご」
マスクを取っても少し鼻に残る口臭と
梅の飴に似た甘酸っぱいような匂いがした
「ぶんご」だけ読めた

梅の花に顔を近づけるなんて
詩を書く前はしたことがなかった
花鳥風月をやっきになって漁るような
そんなパントマイムを思った
初詣に行かなかった
それすらパントマイムのような気がした

身動きが取れなくなる前に
切られることにした
南中の鋭い角度から放射状の光
光の速さで向かってくる元日に
りんごのように切られることにした

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