詩/ミディアムポエム/エッセイ付き:水道管

水道管が凍っている
声を出せない人がそこにいる

戸惑いが頬の手前で凍り
血潮が渦のかたちで凍り
抜け殻と
鏡を
分からない蛇が
氷の時間のかたちで凍り

水道管が凍り
夜の弁が開かない
まっ青になった幽霊は
ICカードを持て余している

気象台で、白夜が観測されたようだ


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今日、河上類さん主催のミディアムポエム合評会に参加してきました。
そこで提出した詩です。
合評会を"ごうひょうかい"だと思っていて、少し恥をかきました。7人でDiscordで行われましたが、私はというとオンラインでのチャットなどはしたことがなく、Discordとは何ぞや、というところから始まり、殆ど使ってなかったヘッドホンを引っ張りだし、ipadに刺し、しかし、私の声は相手に聞こえるのだろうか、と不安をおぼえ、ipadの音声録音アプリに向かって「アヤヤヤヤ」とか「もちもちもちもち」とかひとり寂しく録音し、さあ録音できた、とそれを再生して愕然。
私はこんなに〈もっさり〉した声だったのか、もっさり具合が、なんというかもっさりと泥を塗りつけた「ぬりかべ」のようであり、私が声を発するたびにその「ぬりかべ」がもっさり歩いていくのが見えたぐらいである。後ほど妻にそれを聞かせ、「ぼく、っていつもこんなにもっさりとしたはなしかたなの?」と質問をすると、ヘッドホンをつけた妻は、いかにも笑いを堪えてます、今ひとつ何かあったら吹き出してしまいます、といった体で、鼻はピクピクふくらんで、口元も頑張ってニヤニヤを押し殺している。

声に関してはあきらめて、合評会に臨みました。皆さんの持ち寄った詩に対して一人ずつコメントして。終始なごやかな雰囲気で終われたと思います。読み手によって様々な解釈、視点があり、ふむふむと聞いていました。作品を批判するというよりも、どこどこの表現が面白い、こんな印象を持った、という話がメインで、それでも、推敲の時のアイデアというか、単語の選び方、行を開けた方が良いのか否かなど、複数の視点を得られ、勉強になりました。何より2時間ほどの合評会がっぴょうかいがあっという間に過ぎてしまうほど楽しい時間でした。

私のぬりかべ声は参加した皆さんにどう聞こえたろう。ぬりかべが視界を遮りはしなかったろうか。

さて、私は俗に言うシングルタスクの持ち主であり、何か気がかりなことがあると、他のことが手につかない。今日の合評会が気になりすぎて、3日間を潰したぐらいである。参加者全員の詩が先んじて配られるわけだが、全てノートに書き写し、何行めのこの言葉が良いとか、この単語が面白いとか、ノートいっぱいにコメントを書きこんでいた。その間、他のことは頭にのぼらず、家賃の振り込みを忘れ、お米を炊き忘れ、多分ほかにも色々忘れた。忘れたであろうことも忘れた。妻にも大いに呆れられたろうか。
夢中になるのは楽しいことだが、行き過ぎると生活が破綻する。私はそういうタイプだ、と改めて認識した。ほどほどに、ほどほどに、と今は頭で唱えている。




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