柘榴の木の下には(改訂前のもの。自分に酔ってる感が出てて恥ずかしくなっちゃいました。)

手は届かない
手は届かない
この柘榴の手は
もう届かない

手は追いつかない
手は追いつかない
この黒ばんだ手は
もう追いつかない

塀の向こうにも
あなたにも届かない
蒸発していく血と
すかすかの柘榴は

手は届かない
手は届かない
それに
手は感じないもう何も

天使だ赤子だと
言われたこともあった
無邪気な言葉より
欲しいものがあった

手は届かない
手は届かない
胸を這う虫にすら
もう届かない

手は追いつかない
手は追いつかない
この柘榴の実は
落ちて、失った

天使は赤子は
ここで遊ぶだろうか
この百年の庭の
百年分の日陰で

そして
一本の柘榴の木は
墓標にもなれずに
あなたを、知れずに

(柘榴の木の下には屍体が埋まつてゐる!

放られて
放られて
放られて
放られて
ひょっこり実を結ぶだけ
むっと死を思わせるだけ

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