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ビールの飲める本屋が、ゼロからはじめること

2020年4月1日、「本屋B&B」は下北沢の「BONUS TRACK」に移転しました。

「B&B」は「BOOK&BEER」の略で、ビールの飲める新刊書店です。2012年7月にオープンしたのが「第2マツヤビル」。2017年12月に移転した先が「BIG BEN」。そこからさらに移転したのが、いまの場所です。下北沢をぐるっと回って、8年目になります。

そもそも、2012年のオープンのひとつのきっかけは、2011年の震災でした。そして2020年、新型コロナウイルスがやってきました。

移転初日の4月1日(水)から短縮営業を、そしてこの土日は休業をすることにしました。

苦渋の決断

悩みました。新しい店舗は風通しもよく、天井際の窓からは光が差し込み、ゆったりと広く気持ちのよい、公園のような本屋になりました。

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この場所が、家にいることで息が詰まってしまった誰かの、文化的な深呼吸のための、つかのまの散歩の場所になる姿も、想像しました。

けれど、この4月4日(土)5日(日)の週末はまず、臨時休業しようと決めました。6日(月)から先のことはまだ決めていません。

「BONUS TRACK」で近隣に並ぶお店の中には、開ける判断をしたところも多いです。開ける店も、閉める店も、悩んだことは同じです。自粛という曖昧なこの状況下で、それぞれの判断はすべて苦渋の決断で、そのすべて、ひとつひとつが尊いというのが、いまこの瞬間の、ぼくの正直な気持ちです。

データを売る

長期化するかもしれないこの状況に、本屋として、どのように対応すべきか。

結論からいうと、オンラインストアを開設することにしました。そして、当面の間は、デジタルデータを主な商品にしようとしています。

もちろん、この7年半売ってきた本は、紙の本です。しばらくお店が開けられなくなるかもしれない未来に備えて、オンラインストアをオープンしよう。そう考えたとき、最初は当然、これまで扱ってきて愛着のある、なによりいま目の前に大量にある、紙の本の販売を主にすることを考えました。

そう考えたあとに、注文を受けて、在庫を確保して、梱包して、発送するという諸々の作業、およびその先にいる運送会社の方々のお仕事を、具体的に想像しました。

紙の本でしか得られないものが、当然あります。状況が長期化するほど、それを欲する人も、きっと増えるでしょう。また同時に、手元にも、移転して最初のフェアの商品など、いまここで売りたいと思えるものがたくさんあります。

なので、このサイトでも追って、紙の本もあわせて扱いたいと考えています。やはり、主な取り扱い商品として、これまでやってきたからです。

けれど、その前にまず、これまで本屋として培ってきたものを生かしながら、インターネットだけを経由して届けられるものを、届けられる方法があるのだとしたら。少なくともこの状況に対して、そちらのほうが理にかなっている、と考えました。

そう考えて、文章を中心としたデジタルデータを販売することに、まずチャレンジしてみることにしました。

デジタルのリトルプレス

もちろんAmazonのサイトを見れば、電子書籍と呼ばれるものが、たくさん売られています。

また、いま一般的な出版社から出される本の出版契約書には、電子化の権利についても結ばれていることが多いため、もし電子化されていないとしても、その権利が出版社の管理下にある場合が多いはずです。

なのでまず、まだAmazonなどでは売っていないものを、できるだけラフな形で販売できないか、と考えました。

ちょうど、これまでも多く取り扱わせていただいているような、リトルプレスやzineと呼ばれるようなものに近いイメージです。

出版流通に乗っておらず、限られた場所で売っている、より個人的なもの。その電子版。編集も校正もデザインもごく最低限の、手弁当でできる範囲のもの。フォーマットは、ただのpdfデータ。そういうもの。

それらを「デジタルリトルプレス」と呼ぶことにしました。

もちろんそうしたものもまた、すでに世に存在しています。BOOTHのような同人誌の販売サイトもあるし、まさしくこの文章を公開しているnoteをつかって販売することもできます。

けれど本屋B&Bは、インターネットサービス事業者ではなく、いち本屋です。

プラットフォームになるのではなく、あくまで店として、これまでイベントなどを通じてお世話になった著者の方や、取り扱わせていただいたリトルプレスやzineの発行者の方のつくるものを中心に、この店らしいものを並べたい。そして、仕入れたばかりの本を平台に並べるように、この手で、少しずつ売り場に増やしていきたい。そう考えました。

いまのところ、あり得るものは、大きく分けて2種類あるのではないかと考えています。それぞれ「タイプA」「タイプB」とします。

タイプAは、書き手の方が、過去に雑誌やウェブメディアなどで発表されていて、単行本には収録されていない、短編やエッセイなどです。もしこれをテキストデータでお預かりことができたら、それをスマートフォンで最低限読みやすいデータに、こちらで作らせていただくことくらいは、自分たちにもできそうだと考えました。

タイプBは、出版流通に乗らない形で流通したリトルプレスやzineや同人誌です。いままでうちで紙で取り扱わせてもらったもの、その最終入稿データのpdfそのままでも、もしお預かりすることができたら、それをそのまま売ってみるという試みに、やってみたいと賛同してくれる人もいるのではないか、と考えました。

未熟でも、まずは自前で

とはいえ、まだ見切り発車もいいところです。手前勝手なお願いすぎて、どのようにお願いすれば失礼にならないかと、ずっと考えていました。

そこで、いきなり誰かに頼るのではなく、まずは自分たちから、サンプルを出そうと考えました。未熟かつ、ささやかすぎるものではあるのですが、まず自前で、2つのデジタルリトルプレスを用意して、販売をはじめることにしました。

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https://bookandbeer.theshop.jp/

タイプAのサンプルとして、ぼくが過去に雑誌で発表した文章をまとめたもの。そしてタイプBのサンプルとして、スタッフのt島が個人的に作成してB&Bでも販売してきたzineです。

買ってください、売らせてください

これを読んでくださっている、本好きのみなさんにはぜひ、このインターネット上でぼくたちがゼロからはじめようとしている、小さくてインディペンデントな読書文化を、さわやかな気持ちで楽しんでいただければと願っています。

そして、これを読んでいる方の中に、このような形での販売に興味を持ってくださる作家の方、リトルプレスやzineの発行者の方が、もしいらっしゃいましたら、ぜひコンタクトのページより、ご連絡いただけますとうれしいです。

ちょうど、出版社から出ている本とリトルプレスとを比べたときに似て、いわゆる電子書籍とこのデジタルリトルプレスとを、とくにその分量で比べてしまえば、割高感があると思います。ましてやいまは自前のものだけですから、余計にそうだろうと思います。

けれどきっと、自宅でビールでも飲みながら、気軽に読んでもらうのにぴったりだとも思います。いま、みなさんが家にいながらにして、B&Bらしい何かを楽しんでもらうことができれば、望外の喜びです。

最後に

本屋B&Bでは、このほかにも、この状況下で自分たちにやれることを、スタッフ一同、議論しながら、すこしずつ準備中です。動画の配信も、またはじめたいと思っています。

すべてはじめてのことばかりで、至らないこと、予定通りにはいかないことも、きっと多いと思います。けれどぼくは、移転したばかりの店を守りたいです。また自信をもってみなさんに「どうぞいらしてください」と言える日まで、なんとか生き延びたいという考えのもとで、動いています。どうか温かい目で、受け止めてくださいますとうれしいです。

※4月6日(月)追記:もうひとつ、下記、あたらしい取り組みをはじめました。


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ブック・コーディネーター、クリエイティブ・ディレクター。新刊書店「本屋B&B」と出版社「NUMABOOKS」を経営しつつ、「八戸ブックセンター」「BIBLIOPHILIC」などの仕事をしています。「BONUS TRACK」を運営する散歩社取締役、バリューブックス社外取締役も。

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自分のメモ/学生・編集部とのシェアとして保存した記事です。

コメント (1)
とても素敵な取り組みですね。何か出版したいと考えつつも,プロトタイプもなく一歩がふみだせていない私です.. これ編集のお手伝いとかもしていただけるのでしょうか?
取り組み応援しております!
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