連続物忘れ恋愛小説「シュークリームとエクレア」


全5話を一本にまとめました。1話毎にラインを引いています。
一日に2話以上書いてはいけません。それはズルです。
連続物忘れ小説では、前回の小説部分だけを見ながら続きを書いていきます。
そのため記憶の欠如により辻褄が合わない場合があります。

知ったこっちゃないです。

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僕がシュークリームを食べる時、彼女は決まってエクレアを食べる。
その甘いひとときが幸せだと感じている。そう思っていた。

ある日、僕がいつものようにシュークリームとエクレアを一つずつ買って彼女の家に向かうと彼女からLINEでメッセージが来た。

「今は来ないで」

僕は不審に思いそのまま彼女の家に向かい続けた。
ドタバタと物音がする彼女の家。なぜか焦りを感じる。不穏な空気に脂汗が出る。僕は彼女の家のドアを開けた。

知らない男だ。仲良くドンキーコンガをやっていた。二人は僕の方を見るとハッとした表情になった。
ふと、彼女の家のテーブルを見るとエクレアがあった。
その隣にもう一つスイーツが。モンブランだ。

彼女に問いただすと泣きながら謝ってきた。許す許せないの話ではない。理解ができないだけなのだ。男の方は静かに目線をそらし続けている。
急に腹が立ってきた。彼女の口元を見るとクリームが付いていた。

モンブランのクリームが。

そうか、君は別にエクレアじゃなくても良かったのか。僕は僕だけが君と特別な関係だと思っていたのだな。


ドンキーコンガの音楽と、その譜面だけが流れ続けていた。

さくらんぼ

さくらんぼを演奏するな。僕の。シュークリームは箱の中でぐちゃぐちゃに潰れていた。

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笑顔咲く
君と
つながってたい

そうか。君は笑顔が咲けば、一緒にスイーツを食べれるのならば。誰でも良かったのだな。

テーブルの上にあったエクレアを手に取り、私は衝動的にドンキーコンガを遊んでいた男の頬を殴った。
エクレアは脆いのでブッツリと半分に折れ、相手には精神的ダメージのみを与えた。

あぁ、エクレアよ。君は何のために生まれてきたんだい?

エクレア「食べられるためです。」

Exactly.
私は食べ物を使って人をぶってしまった。床にはクリームが散乱している。

キエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ

私は奇声をあげながらぐちゃぐちゃになった私が食べる予定であったシュークリームを鷲掴みにした。クリームまみれの右手で私はDJをはじめた。

トゥクトゥクwキュキュッwトゥクトゥクw

「てめぇ……!DJを舐めてるのか……?」

クリームはなめまちゅ!ぺろぺろりんちょw

「確かに。クリームはなめまちゅよね」

そうなんでちゅ。

「こいつ、男いること言ってなかったでチュ」

そうなんでちゅか。派遣会社に勝手に登録しておきましょうね~。

こうして二人の男達には怒りがわき始め、その矛先は女へと向かった。

女は派遣会社「菊池ファイルコミュニケーションズ(KFC)」へと登録された。

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「菊池ファイルコミュニケーションズ(KFC)」へ登録された女は「盆踊りをする人を育成する会社」へ派遣された。

「罪を償うために来たのかね?」

盆踊りをする人を育成する会社のエライ人が女へ問う。

「私はただ、寂しくて……。その……。」

女が言うとエライ人はすぐにこう叫んだ。

「盆踊り!TIME!」

盆踊り!TIME!に突入です!
盆踊り!TIME!は、1ダンスに付き純報酬6.5$のパチスロでいうATモードです!ボーナスタイムだと思ってください!

「私そんな……盆踊りなんて初めてだし……」

女が言うとすかさずエライ人が率先して踊りだした。

ア~ヨイショ

ヨヨイノ

ヨイ

ドンドンドン

ドドンド

ドン

ハァ~~ヨイショ

ヨイショ

ヨヨイノ

ヨイ

「これで6.5$です。」

「マジ!?踊る踊る~w」

女も乗り気になった。

ア~ヨイショ
ア~ヨイショ

ヨヨイノ
ヨヨイノ

ヨイ
ヨイ

ドンドンドン

ドドンド

ドン

ハァ~~ヨイショ
ハァ~~ヨイショ

ヨイショ
ヨイショ

ヨヨイノ
ヨヨイノ

ヨイ
ヨイ

「6.5$あげます。」

「まじ!?派遣ってすげー!」

こうして彼女は安定した生活ができるようになった。

ちょっと高めのスイーツを誰かにおごってもらわなくても良くなったのだ。

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女はもうひとりで生きていけるのだ。
酷く辛い償いをしたが、そこから学びを得て自立したのだ。

もう俺の出る幕はない。
そう想いながら女のツイッターアカウントを38回見ている。
本アカではブロックしているのでわざわざサブアカウントで監視している。

幸せそうなところを見ると嬉しさと腹立たしさが湧いてくる。

キエーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!

俺も職場行ってやろ!

キエーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!

俺は女の派遣先へ向かい、盆踊りを一緒に踊ることにした。
はじめは女も焦った顔をしていたが、仕事なので盆踊るしかなかったのだ。

ハァ~~ヨイショ
ハァ~~ヨイショ

ヨイショ
ヨイショ

ヨヨイノ
ヨヨイノ

ヨイ
ヨイ

もう一回

笑顔咲く
君とつながってたい
もしあの向こうに
見えるものがあるなら

小一時間盆踊りを女と行い200$支払った。

盆踊りをこの女とする日が来るとは思っていなかった。

何も言ってこなかった。彼女はもうすでにプロになっていたのだ。

俺が盆踊りの素晴らしさ、魅力に気がついた時には。
もうあの女は遠いところへと行ってしまっていたのだった。

期待していた。盆踊りは体力勝負だ。しかもあの女は可愛い感じのファッションを好む。盆踊り用の服は嫌がるだろう。だから期待していた。

「私、もうやめたい」

この一言を。そこにつけ込もうとしていた俺がいた。

現実はそうではなかった。ただニコニコとしているあの女をもう一度別の形で見ているだけだった。

俺が何をしたっていうんだ?俺の何がいけなかったんだ?
あいつは俺を差し置いてあの女とドンキーコンガまでしていたんだ。
俺は未ドンキーコンガなんだぞ。

あいつまでも憎い。この女も憎い。世界が憎い。俺自身が憎い。
モヤモヤを増加させたまま、泣きながら一人でドンキーコンガをプレイすることにした。ゲーム中の拍手は力がこもらず判定ミスになっていた。

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幸せだった日々を羨むようになった。
もう、あのときの君ではなくなった。

そうか。君が変わったなら自分も変わらなくては。

仕事に夢中になり趣味にも全力になってみた。

自分磨きをしたつもりはないが最近イイ感じな気がする。気力も湧いてくる。

そんなある時電話が来た。

「私、もうやめたい」

あの女からだった。羨ましかったあの日々。苦しい思い出となったあの日。

今日、告げることとなる。

「俺、もうやめたから」

「それってどういう

プツッ ツーツー

やめたのだ。すべてを。考えることをやめたのでは決してない。
ただ、やめたのだ。

自分自身が進むために。足かせがあると思い込まないように。

ドンキーコンガは普通に面白いゲームなので続けています。
最近さくらんぼをフルコンボでクリアできるようになりました。

それもコレも今の彼女のおかげです。

「ケーキ買っていくけど何がいい?」

俺が電話の向こうの彼女に話すと彼女はこういった。

「シュークリームを……2つ。一緒がいいから。」


気持ちとしてのお金は時に人の気持ちをより良くします