見出し画像

海との一体化

土曜の夜は決まって海に来る。
冷たい風。潮の香り。果てしなく続く海そのもの。
私はこの光景を何度も見に来ていた。
けれど、それも今日で終わり。寂しいなぁ。
私は海の一部となることで、自分にとって最高の終わりを迎える。



さようなら





「危ない危ない!」

誰!?やめて!離して!死なせて!

「バカバカ!本当に死ぬって!溺れたら終わりだよ!」

死ぬために来てるんだから当然でしょ!離して!

「応援呼ぶから!」

いらないよ!こんな深夜に騒ぎにしたくないの!

「「「「「「「「「「きました」」」」」」」」」」

え?何この人数。

「入水自殺で死んだ者たちです」

えぇ……

「今午前2時ちょっとですよ。」

丑三つ時やん。

「入水自殺あるあるを皆で語ってたんだよね。」

世界一参加したくない。

「そうしたらさ、君が死のうとするからさ。ダメだよ自分から死んじゃ。」

説得力がなさすぎる。しかも、多すぎる。10人位いません?

「皆どっかの海に浮いてたり、自然の一部になったりしてるよ。」

いいなぁ……。ロマンチックだなぁ。

「いいわけ無いだろ!!!!!!死んでるんだぞ!」

すいません……。

「チョコレート食べたくない?」

なんですか急に。

「たべたくないですか?って聞いてるの。どう?食べたくない?」

まぁ、あるなら……

「ないで~~~す!」

は?なんで聞いたの……

「そのちょっとした欲求。小さな欲望を持ったまま自分から死んだらさ、すごく後悔するよ。これ自殺あるあるだから。」

あぁ……なるほど……

「しかも、多分君死ねないよ。」

なんでですか。本当に人生辛いんですよ。

「目的持ってしっかりと死のうとしているけれど、ちょっと切ないなぁと思ってるでしょ。」

まぁ……

「それも欲望だからさ、死ねないよ。途中で引き返す。けれど、肺とかに水が入ったら後遺症とかで一生苦しむよ。」

あぁ……

「だからさ」

はい


「楽に死ねてよかったね。」


え?

「あそこ見てみなよ。」

なにか海に浮いてる……

「あれ、君だから。」

え……

「やっぱり僕たちは話し相手がほしいという欲望があるわけよ。だから、最初は助けようと思ったけど海に引き込んじゃった。」

私はいま砂浜に立っていますが……

「もうすでに死んでしまって地縛霊みたいになってるからね。」

あぁ……

「後悔あるでしょ?」

うん……

「きれいじゃないんだから。入水自殺は。迷惑かけるよ~」



あるあるはやくいいたい
あるあるはやくいいたい
あるあるはやくいいたい

死んでも、きがつかないがち

気持ちとしてのお金は時に人の気持ちをより良くします